更新日 2023/06/22 公開日 2020/04/14
高いモチベーションをキープし、MBOを成功させるポイント
従来、日本の人事制度は年功序列型が一般的でした。しかし、これは経済が右肩上がりで成長していたこと、終身雇用が当たり前であったことが前提の制度です。それが崩れた今、企業が持続的な成長を続けていくためには、新たな人事制度の導入が不可欠となっています。年功序列型以外の人事制度として、成果主義型を取り入れる企業は少なくありませんが、トップダウンでノルマを押し付けるマネジメントになりがちで、失敗してしまうケースも見受けられます。そこで、重要となるのがMBO(目標管理制度)の導入です。今回はこのMBOについて、その概要からメリットとデメリット、運用時の注意点までをお伝えします。
社員の主体性を尊重するMBOとは?
MBOはManagement by Objectivesの略で、日本語では「目標管理」や「目標によるマネジメント」と訳されています。マネジメント側が目標やノルマを管理するのではなく、社員が自分自身で目標設定を行い、その進捗や実行に関しても各自で主体的に管理します。そのため、これまでのトップダウンで目標設定を行う年功序列型や成果主義型とは大きく異なる人事制度です。
もちろんMBOは、社員が主体的に目標の設定・実行を進めていくことでマネジメント側の業務を不要にするものではありません。マネジメント側は社員とこれまで以上に密にコミュニケーションを取り、組織が掲げる目標と社員個人の目標の方向性が離れないよう、サポートをする必要があります。
目標設定を行った後の運用方法は次のとおりです。
経過観察 社員が自ら設定した目標を実行していく経過を観察し、必要に応じてサポートしていきます。
行動評価・報酬 定期的にミーティングを行い、進捗状況の確認、目標達成度を見て評価を行います。また、目標を達成した者に対しては、評価を給与や賞与などに反映させます。
組織目標の再設定、修正 社員それぞれの目標達成度を企業が掲げる目標とすり合わせ、次のフェーズに向け新たな目標を設定する、もしくは組織目標の見直しを行い、修正をします。そして、それを基に社員の目標設定を行う。このサイクルを繰り返すことで、成果を上げていきます。
MBOを運用するうえでのメリットとデメリット
MBOは社員が主体性を持って進めていくのが特徴ですが、実際に運用していくうえでは、いくつかのメリットのほかにデメリットも考えられます。
MBOを運用するうえでのメリット
社員のモチベーションアップにつながる トップダウンでノルマを課せられるのではなく、自身が主体的に目標を掲げ実行につなげていくため、高いモチベーションを保ったまま業務を遂行できるようになります。
主体性を持って自分自身で目標設定をするようになるため、社員の育成につながる マネジメント側から目標やノルマを課せられるやり方は、モチベーションアップにはならないまでも、課せられたことをこなしていれば、ある程度の評価を受けることも可能です。しかし、与えられたものをこなしていくだけでは社員はなかなか成長せず、結果として企業の継続的な成長も困難になりかねません。これに対し、MBOでは社員が自ら考え、行動することで目標の設定・実行を行っていくため、成長スピードが速まり、それが企業の成長にも大きな効果を発揮します。
目標管理のための密なコミュニケーションが必須となるため、企業全体のコミュニケーション活性化にもつながる MBOでは、社員の目標設定に関して、マネジメント側と密なコミュニケーションが欠かせません。これは、単純にトップダウンで目標を課すだけのコミュニケーションとは異なり、双方が意見を出し合うことで進めていくコミュニケーションです。そのため、活発な意見交換がなされるようになり、結果として企業全体のコミュニケーション活性化につながります。また、社員も単に個人目標を設定するのではなく、企業の目標を達成させるためにはどうすべきかを真剣に考えるようになり、新たなアイデアが創出される可能性も高まります。
MBOを運用するうえでのデメリット
コミュニケーションコストがかかる これまでの人事制度に比べ、マネジメント側は個々の社員とコミュニケーションを密に取る必要があるため、コミュニケーションコストが増大。自身の時間管理をうまく行わないと業務に影響をきたします。
トップダウンではなくなるため目標設定に時間がかかる トップダウン型のマネジメントは、社員それぞれのモチベーションアップにはつながらないかもしれません。しかし、最も効率的で時間のかからないマネジメントだとも言えるでしょう。これに対しMBOは社員とコミュニケーションを密にしたうえで目標設定をするため、形になるまでに時間を要します。
個人目標と企業目標の調整が難しい マネジメント側は、社員が目標設定を行うことをサポートしながらも、それが企業目標とかけ離れたものにならないように落とし込まなければなりません。しかし、あくまでも社員の主体性を尊重しなくてはならないため、その辺りの調整が非常に困難です。
MBO運用時の課題を解決する施策
社員の主体性を重んじることで早期の成長を促し、企業の成長へとつなげていくMBO。これを実現させるには、前項で挙げた運用時のデメリットを解消する必要があります。そこで、マネジメント側が行うべき、課題解決の施策を紹介します。
社員の状況に応じて柔軟に目標設定を見直す MBOは社員によって目標設定が異なるうえ、それぞれの状況により目標達成の進捗度合に差が生じることも少なくありません。そのような状況下でマネジメント側が無理やり目標達成させようとすると、トップダウンでノルマを課す従来の方式と変わらず、社員の主体性も育成されなくなってしまいます。そこで、都度、話し合いの機会を持ち、進捗の確認や目標設定の見直しを行うなど柔軟に対応することが重要です。
目標への進捗状況を個別に把握し、適切なタイミングで声掛けを行う MBO運用を成功させるには、マネジメント側の適切なタイミングでの声掛けが欠かせません。そのためには、それぞれの社員の目標設定ならびに進捗状況を常に把握しておく必要があります。そこで、進捗が遅れている社員に対し、声掛けしたうえで必要なサポートをすることで、トラブルのリスクが軽減されます。逆説的ではありますが、コミュニケーションコストをかけて適切なコミュニケ-ションを取ることが、結果としてトラブルやミスなく業務をスムーズに進めることにつながります。
定期的にミーティングを行いチームとして目標に向かうモチベーションをアップさせる 自身が主体性を持って仕事を進められることはモチベーションアップにつながりますが、反面、うまくいかないときはモチベーションだけではなく、仕事に対する自信も失ってしまう可能性があります。これを避けるためには、チームや部署での定期的なミーティングを行い、全体で目標に向かいことを意識させ、チームの一員としての存在価値や安心感を持たせることが重要です。
MBO運用には外部の知見を吸収することも重要
MBOは社員の主体性を重視することで、モチベーションをアップさせ、企業としての目標達成につなげられることが大きなメリットです。しかし、当然ながらすべての社員が順当に目標に進んでいけるとは限りません。そこで、重要となるのが、マネジメント側が目標達成だけを重視し、社員のモチベーションをそいでしまわないようにすることです。
常に社員の状況を把握し、適切なアドバイスを行えるよう、コミュニケーションコストをかけることを意識する必要があります。そのためには、内部だけではなく外部の知見を活用することもMBOの成功に大きく影響します。MBO運用の知見や経験を持った外部人材を活用すれば、より迅速な導入、運用も可能です。現在、MBO運用を検討されている際は、外部人材の活用も視野に入れながら進めていくことをおすすめします。