COLUMN
  • TOP
  • コラム
  • コラム一覧
  • テクノロジーの進化は止まらない。デジタルトランスフォーメーション実現に向けた施策
経営課題

テクノロジーの進化は止まらない。デジタルトランスフォーメーション実現に向けた施策

シェアする

日本のビジネス界において、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation, 以下 DX)の実現が喫緊の課題といわれています。どんなにテクノロジーが発達しても、企業組織や人間が変化に対応できなければビジネスの拡大はできません。今回は、ビジネスにおけるDXの重要性について紹介します。 

DXを実現できない場合のデメリット

DXとは、IT技術を浸透させることによって、人々の生活をより良いものへと変えるという概念です。AIやビッグデータなどのテクノロジーを有効活用し、今までになかったサービスや新製品のビジネスモデルを作り出します。DXの実現によりはネットとリアルをシームレスにつなぐことで、新たな価値を創出することができ、競合他社から優位性を確保できる可能性を秘めています。変化し続けるビジネスの世界を生き残るためには、いかにうまくIT技術を取り入れることができるかにかかっているといえるでしょう。

DXの重要性については、多くの経営者が理解しています。しかし、具体的にどうビジネスに応用していくか、明確なビジョンを描けていない企業も少なくありません。「ビッグデータを利用して何かできないか」。経営者が漠然とした指示を出しても、それをいきなりビジネスにするのは難しいでしょう。課題を振られた現場が混乱するだけです。

レガシーシステムに多くの問題がある

さらに、DXの実現には多くの課題があります。ただ単に新しいテクノロジーを導入するだけではなく、レガシーシステムと入れ替える必要があるからです。レガシーシステムには、ドキュメントが整備されていない、システムの老朽化が進んでいるなどの問題を抱えている場合も少なくありません。その結果、システムが肥大化・複雑化し、どこから手をつけていいのかわからないブラックボックスとなっているケースもあります。また大企業で事業部門ごとにシステムを個別に構築しているような場合は、蓄積された大量のデータを横断的に活用することもできません。

このようにレガシーシステムの課題が多いこともあり、経営層がDXを望んでも現場サイドが難色を示し、円滑に実行できない可能性もあります。

DXを実現できなかった場合

もし企業においてDXがうまく実現できなければ、どのようなデメリットがあるでしょうか。まず、爆発的に増加しているデータを有効活用することができません。消費者行動や顧客情報だけではなくその他の多様なデータが手に入る時代が来ます。ですが、どんなに多くのデータを収集できてもDXが実現されていなければ、その膨大なデータを分析してビジネスに反映させることは難しいでしょう。従ってDXの実現に失敗した企業は、デジタル競争に取り残されてしまいます。

かといって、既存のレガシーシステムを使い続けることはできません。システムの老朽化は避けられず、運用できる人材は次第にリタイアしていくからです。そうなると、業務そのものを維持し、ビジネスを次につなげていくこと自体が困難になっていきます。そしてシステムの古さは、そのままセキュリティ問題に直結します。事故や災害などで予想外のトラブルがあった場合、データが消滅・流出するリスクは避けられません。

経済産業省の試算によれば、2025年までに国内でDXを実現できなければ、日本において最大で年間12兆円の経済的な損失の可能性があるといいます。これがいわゆる「2025年の崖」です。ですから、2025年までに集中的にDXを推進させることが政府の方針となっています。

DXを実現した場合のメリット

DXの実現には多くの課題がありますが、その反面、実現できればビジネスや経済の面でさまざまなメリットがあります。例えば、経済的な効果においては、2030年には130兆円を超える額で実質GDPを押し上げるという予測があります。DXは日本経済に大きなインパクトを与えることができるのです。

具体的なテクノロジーとしては、調査会社の米IDCが提唱しているコンセプト「第3のプラットフォーム」が注目されています。これは「クラウド」「ビッグデータ」「モビリティ」「ソーシャル」という4要素によって形成される情報基盤です。これらを利用して新しいサービスや新しいビジネスモデルを作り出していくことが期待されています。

DXを実現した場合の企業にとってのメリットとしては、レガシーシステムを仕分けし、不要なものを廃止して業務の効率化を実現できることが挙げられます。レガシーシステムの維持にかけていたコストや人材は、新しい技術分野にまわすことが可能です。

DXによって取得したデータを有効活用できるようになれば、経営判断をスピーディーに行い、方針転換や事業展開を迅速に行うことができます。AIやディープラーニングなどの最先端技術を駆使して、デジタルを中心とした新たなビジネスやサービスを構築する可能性が広がるでしょう。

DX実現に向けた施策

DXはさまざまなメリットをもたらすことがわかりましたが、では、企業は具体的にどのような施策を実行すればよいのでしょうか。経済産業省は「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」や「DX推進指標」など、企業が円滑にDXを推進できるよう指針を示しています。これらの指針を活用することで、DX実現への方向性が見えてきます。

・デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン Ver.1.0(DX推進ガイドライン) 平成30年12月 経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf

・DX推進指標(サマリー) 令和元年7月 経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003-2.pdf

「DX推進ガイドライン」においては、DX推進のための経営のあり方、仕組みとして、下記の項目が挙げられ、それぞれについてチェックすべきポイントを説明しています。

  • 経営戦略・ビジョンの提示
  • 経営トップのコミットメント
  • DX 推進のための体制整備
  • 投資等の意思決定のあり方
  • DX により実現すべきもの: スピーディーな変化への対応力

また、DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築については、1 体制・仕組みと2 実行プロセスの2つに分け、同ガイドラインのなかで、それぞれ以下の項目についてチェックすべきポイントを説明しています。

1 体制・仕組み

  • 全社的な IT システムの構築のための体制
  • 全社的な IT システムの構築に向けたガバナンス
  • 事業部門のオーナーシップと要件定義能力

2 実行プロセス

  • IT 資産の分析・評価
  • IT 資産の仕分けとプランニング
  • 刷新後の IT システム:変化への追従力

また、「DX推進指標(サマリー)」においては、「DX推進の枠組みに関する定性指標」、「ITシステム構築の枠組みに関する定性指標」、「DX推進、ITシステム構築の取組状況に関する定量指標」を提示し、これらを次の3つに活用することを勧めています。

  • 認識共有・啓発
  • アクションにつなげる
  • 進捗管理

こうしたガイドライン、指針を踏まえてDX推進の手順・ポイントをまとめてみました。

DX推進の手順・ポイント

まず初めに必要なのは、経営層が自社のシステムの現状と課題を把握することです。現状認識の後に、適切なガバナンスが行えるよう指標を「見える化」する必要があります。DXを推進する場合に、技術的にどのような負担があるのか、既存のデータはどの程度活用できるのかなど、現状の情報資産を確認します。レガシーシステムの刷新や実行プロセスの進捗状況を把握するために、診断スキームを作ることが有効です。

社内でのガイドラインを用意しておくことも大切です。システムの刷新や新たな技術の導入を行う際に、ガイドラインによって目的やプロセスを明示しておきます。組織としてどのような方向に向かっているかを、全社的に共有しましょう。ガイドラインがあれば、経営層や株主に対するチェックリストとして活用もできます。そしてこのガイドラインは、目指すべきシステムのゴールイメージになります。システムを刷新する前に、レガシーシステムの不要な部分を破棄することも大切です。

最後に、社内でのスキルを持った人材の育成や確保も重要です。最新のテクノロジーを導入しても、それを使いこなせる人材がいなければ意味がありません。将来への投資と考えて、人材育成に力を入れましょう。社内で使うスキルを標準化し、認定制度を導入するなどの施策が考えられます。

DXはビジネス成功への必須前提条件

2025年までにあまり時間はありませんが、それまでにもテクノロジーはまだまだ進化するでしょう。DXに関連する専門知識を持つ人材が社内にいない場合には、そうした知識のある外部の人材を活用するのもひとつの方法です。必要に応じてそうした方法も検討しながら、DXを積極的に進めて社会の変化に対応し、ビジネスを進化させていきましょう。

参考:

キーワード検索

カテゴリー

人気の記事

キーワードから探す

関連するコラム

CONTACT

各種ご相談・お問い合わせは下記よりお願いいたします。