会社員から一転、お米を生産販売されている農家に嫁がれて十数年が経つという渡部さんは、一昨年、秋田県湯沢市主催の在宅推進事業を経て兼業で在宅ワークをはじめられました。今回は農業とITを両立している渡部さんにインタビューをさせていただきました。
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― 一般事務職から農家のお嫁さんになるのに勇気はいりませんでしたか?
全然大丈夫でした!むしろ、お嫁に来てごはんを食べた時は、あまりの美味しさに「もっと早く来ればよかった」と思ったくらいです。農家に嫁ぐことに、勇気はいりませんでしたね。うちはお米を直販していて、ホームページ制作やSNSの発信、お米の案内書類、帳簿つけなど、デスクワークもあるんです。それまでやってきた事務の仕事が結構役に立ってます。人生、無駄な経験はないって事ですよね。
― 農家をされていて、副業で在宅ワークをやろうと思ったきっかけはなんだったんですか?
農家というのは、農繁期(忙しい時期)と農閑期(暇な時期)があります。農閑期は特に冬場なんですが、お勤めに出ようと思っても、働ける期間や年齢条件だったり、仕事内容だったり、なかなか条件が合うことが難しくて・・・。以前から家に居ながらパソコンで仕事ができたらいいなと思っていました。そこで、ネットで検索してみるのですが、どうも騙されるのではないかと、不安になり、はじめる事ができませんでした。そんな時、湯沢市の広報に「在宅ワーカー募集」のチラシが入ってきたのです。それを見た瞬間「これだ!」と、湯沢市が主体なら間違いがないだろうと迷いもなく、すぐに電話で問い合わせをしました。在宅ワークなら時間も場所も、ましてや年齢も関係ありませんからね(笑)申込みには講座を何回か受講しなくてはならないのが条件だったのですが、それが無料。ちょうど受講時期も1月から3月までの期間で、はじめるのにはいい時期だと思って飛びつきました。
―すぐに電話されたって、行動力がありますね。
背中を押される感じってわかりますか?私、これまではそれほど行動力があると感じたことはないのですが、この時ばかりは、「これだ!」と背中を押される感覚があったんです。
―なるほど。なにか引っかかるというか、自分が必要としていたことが引き寄せてきたという感覚、私もあります。
― 在宅ワークをはじめた時、ご家族から反応はありましたか
夜、家事が一段落してからパソコンに向かって仕事をすることが多いのですが、時々子どもがのぞきに部屋にやって来て、「ママ、お仕事?」と、「うん、そうだよ」「楽しい?」「楽しいよ」と、もちろんパソコンの画面や内容は見せられないのですが会話をしながら、宿題を持ってきて、「ここ教えて」と・・・隣に座って勉強する子供の相手をしながら、パソコン入力を続ける事もあります。
―ほのぼのエピソードですね。子どもを見守りながらお仕事ができる環境っていいですね。
― 在宅ワークをはじめて驚いたことや、面白かった仕事はありますか?
お仕事を頂いて「え~こんな事をクラウドソーシングで頼むんだ」と、その需要の豊富さに驚きました。また、在宅ワーカーさんの多さにも。介護していて家を離れならないとか、まだ子供が小さくてお勤めに出れない事情があったりとか、そんな在住ワーカーさんたちと、在宅ワーカー推進センターで会うと「そうそう、あるある」と共通の話題で盛りあがったり・・・。
在宅ワークという境遇で結ばれているせいか、土地柄のせいか、久しぶりに会っても、意識を持っていくところが似ている事も多くて、雑談を楽しむこともあります。その事で自分が業務をしていく上で役に立つこともありましたね。
面白い仕事と言えば、そうですね・・・新しい漬物や稲庭うどんのレシピ募集などは面白いと感じました。あと、ちょっと前に募集していたスマホで子供の声収集とか。その時は子供の声は年齢限定があったので、うちの娘たちは該当しなくて、残念でした。
― 在宅ワークで気をつけている事はありますか?
データ入力のお仕事をいただく事が多いのですが、データをそっくりそのまま入力するわけですから、間違いがあってはいけませんよね。完璧な入力で納品したいと思っているので、見直しは必ずしています。それでも、間違いがあった時は、あっ、やっちゃったと、なんで、どこがと、もう一度見直してみます。そうすると、自分の思い込みで入力していたことに気づいたり、画像データの確認のお仕事の時には、画像を拡大しすぎて画面に全てが収まっていなくて、ターゲットを見逃していたことも・・・。再度完璧を目指して、3回も見直したりして・・・。結構時間をかけてしまうことがあります。
時間をかけすぎてもいけないので、そのバランスというか、なるべく効率的にチェックを完璧にできると良いなと思ってます。
今は、「データ入稿」と「他の方の納品物のチェックをする業務」をしているんですけど、自分で間違えた経験をしていると、他在住ワーカーさんのデータチェックする際に、間違いやすい所を気をつけて見る事ができます。その点では間違いも経験のうち、無駄ではなかったと言えるのかな(笑)
あと、気をつけている事は納期です。これは絶対守る事です。納期を守らないワーカーには次から仕事をもらえないと思ってますから。納期を守るために、まずやることは、分からない事は調べる、それでも分からない時は聞く。聞くときもコツがあると私は思っているのですが、メールで問い合わせをするときには、件名を見れば内容が一目で分かるように心がけています。在宅ワーク推進センターには一日にたくさんの数のメールが届くことでしょうから。メールが埋もれてしまわないようにね(笑)
―メールを読む相手の気持ちを考えるって大事ですね。
―在宅ワークを始めてから新しく身につけたことや興味を持つようになった事はありますか
私たちの地域の在宅ワーク推進センターでは、特別講座として、動画制作、ホームページ制作、ライティング講座などを開催してくれるので、新しいことにチャレンジすることができます。 昨年夏に「キッズプログラミング講座トレーナー養成講座」を受講しました。キッズプログラミングのトレーナーはプログラミングの楽しさを教えるもので、これまでにも地域の子供会などでプログラミングの講座を開いているご高齢の方がたくさんいらっしゃるという話を聞き、それだったら私もお役に立てるかも!と思い受講しました。2020年から小学校でプログラミングが必修科目になるということを知り、これからは「プログラミングだ」と思ってます。受講させていただいたことによって、自分自身がもっと勉強を深めたいと思う分野となりました。
― 子育て中に家業と在宅ワークと、プラス勉強をするってすごく大変じゃないですか?
時間の使い方ですよね、これがなかなか難しんですよね~。在宅ワークを始めたころは家業との時間の取り方、バランスが上手くいかなくて悩んだ時期もありました。ある日【在宅メルマガ】「タイムマネジメントでワークバランスの充実を」を読んでからは気持ちが楽になり、難しく考えなくなりましたね。
―ストレスの発散はうまくできてますか?
はい。事務系の仕事をしてきて、農家に嫁いだ同じ境遇のお友達がいて、お互い冬場は時間の余裕があるので、よくおしゃべりしてます。家の事、姑の事、子供の事、尽きることなく話します。あとは、ぬるめのお湯にゆ~っくり1時間くらい浸かるお風呂タイムかな。独り言を言ったり、鼻歌を歌ったり、妄想したり(笑)
―農業と在宅ワークは両立できそうですか
できます!やる気になれば。在宅ワークは納期に間に合うよう調整をすれば、いつやっても良い訳ですから。
私はだいたい夜にパソコンで作業をしています。時期的にどうしても厳しい農繁期は「この期間仕事ができません。できる様になりましたら、お知らせします」とお仕事の案内をしてくれる在宅ワーク推進センターに伝えておきます。そうすると自分のペースで無理なく仕事ができます。また、反対に農閑期は比較的時間にゆとりが持てますので、日中家業の合間にも業務に向かうことができます。
―お米農家さんは年間通してのバランスというか、スケジュールがあるんですね。
春の田植え時期や秋の稲刈り時は、どうしても人手が要りますし、機械に合わせて動かないといけませんから、自分の時間が思うようにとれず、納期のある在宅ワークに支障をきたすかもと思ったら、そこは思い切って在宅ワークをお休みし、ある程度自分の時間で動けるようになったら、在宅ワークを再開するという感じです。今現在、在宅ワーク推進センターから定期的にいただいているお仕事は、有りがたいことに、もう1年になりました。慣れてくると、データ量を見ただけである程度、作業時間の予測ができるので、自分でもワークバランスが取りやすいですね。
―在宅ワークも、ある程度の期間、続けてお仕事を貰えるようになるとスケジュールが立てやすくて、働きやすいですよね。東北は冬が長いのでお米農家さんなど、家業があっても冬にしっかり在宅ワークできると力強く話していただきました。本日はどうもありがとうございました。
家業などの本業や地域性なども場合によっては自分の特性ということになります。
これまで、外に働きに出るためには年齢やお仕事時間の確保、その他の条件を雇用される側に合わせていましたが、特性を活かし、スキルと合わせて『自分自身の強み』を持つことで、自分に合った働き方が選択できるようになるのだと感じました。