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グローバルな社会課題と向き合った経験が新規事業創出のきっかけに ~ ブリヂストンで新規事業創造に取り組む担当者を直撃インタビュー

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【新規事業】というテーマでのインタビュー企画第3弾。今回は、株式会社ブリヂストン モビリティソリューション戦略部 モビリティソリューション戦略ユニット(※2020年9月インタビュー時点)山口 真広(やまぐち まさひろ)様にお話を伺いました。

(インタビュアー:株式会社パソナJOB HUB 加藤 遼)

―はじめに、山口さんの業務内容について教えてください。

現在は、モビリティ大変革時代と言われており、自動運転などの技術革新やモビリティ自体をサービス化する取り組み(MaaS)などが進められています。そんな中、当社としてもタイヤの製造・販売会社からソリューションカンパニーへ更なる変革を遂げる必要があり、新しいソリューション事業の創出に向けて戦略を練っています。当社はグローバルでオペレーションを行っているため、我々の部署では、メガトレンドをとらえた今後の戦略を立案し、実行に向けオペレーションを行う事業会社とディスカッションを行う役割を担っています。

クライアントが“販売先”から“新しい価値を共に創り出すパートナー”へ

―山口さんが所属している部署が立ち上がった背景について教えてください。

今までは、クライアントから「こういうタイヤが欲しい」と、明確なご要望をいただく機会が多くありましたが、現在は「何が欲しいか分からない」という状況のクライアントも少なくありません。
欲しいと言われたから作る、という時代から世の中を良くするために手を携え新しい価値を共創していく時代へシフトしているのです。クライアントの課題をより深く理解し、こういう世の中を共に創っていこう、と発信していけるよう、クライアントとの関わり方についても見直しており、データ活用も積極的に行っていく予定です。
タイヤは路面と接する唯一の部品であり、モビリティを支える重要な役割を担ってきました。今後、タイヤはあらゆるデータを活用・共有することでモビリティと繋がり、新しい価値を生む可能性を秘めていると考えています。我々ブリヂストンは、時代の流れに沿った新しい価値や新規事業を創るソリューションカンパニーを目指していくことで、社会価値、顧客価値を生み出していきたいと考えています。

―なるほど。時代の流れに沿った新しい価値や新規事業の創造、とても大切ですよね。山口さんがブリヂストンに入社(転職)されたのは、なぜですか?

ブリヂストンは世界トップクラスのタイヤゴムメーカーであり、世界をよりよくする大きな事業を創れると思い入社を決めました。
私は以前、青年海外協力隊でアフリカに住んでいたことがあります。社会人になる時も、ビジネスを通してアフリカに貢献したいという思いから、前職に入社しました。国連でミレニアム開発目標(MDGs)が掲げられており、その中にマラリアによる死亡率の半減という項目がございました。前職では、この目標を実現する事業に携わりました。ビルゲイツをはじめとするビジネスリーダーや、多くの学者も関わり取り組んだ活動で、結果として死亡率をほぼ半分に減らすことに成功し、その瞬間に立ち会う事が出来ました。
ビジネスで世界を良くするというこの経験は、私の考え方や価値観に大きな影響を与えています。今度はブリヂストンで、その様な事業創造を成し遂げたいと考えています。

原体験を基に立ち上げた新規事業プロジェクト

―大変貴重な経験ですね。現在、山口さんは新規事業にどう関わっていらっしゃいますか?

私が今、有志メンバーを集めて取組んでいる新規事業があります。
『新しいタイヤを創ろう』というプロジェクトで、私自身の原体験を基に立ち上げました。

タイヤは、年間10億本以上が取り換えられていると言われています。リサイクルや焼却なども行われていますが、適切に処理されずに捨てられ、野ざらしになっているタイヤもあります。私が前職でフィリピンやインドを回った時も、そうした光景を目の当たりにし課題に感じていました。捨てられたタイヤの中に水が溜まると、マラリアやデング熱を媒介する蚊が発生するリスクもあります。
一方、タイヤは人の命にかかわるものですから、安全性や品質にこだわりがあり、非常に壊れにくい性質があります。この2つのパラドクスをどうにかしたいと考えております。
青年海外協力隊の経験から、現地の方々に対して廃棄方法を教える、資源としてのインセンティブを与えるなどの解決方法を考えてみましたが、モノづくりをする立場になった今、廃棄に関する責任の一端を消費者に任せているという現状が問題なのではと考え、企業としてどうあるべきかを考え直すようになりました。
そこで、思いついた事業が『新しいタイヤを創ろう』というものです。マラリアの蔓延防止に取り組んでいた際に自然(蚊)を相手にした経験から、生物模倣(バイオミメティクス)に目をつけ、3Dプリンタ等技術的に可能かどうかを仮説検証しながらプロジェクトを進めています。現在メンバーは5名~10名です。小型ベンチャーのようにCEO、CTO、COOなどのそれぞれのメンバーの得意分野を活かしてプロジェクトを進めています。

―なるほど!私(加藤)は、サーキュラーエコノミーの分野も研究していますが、山口さんの活動はまさにサーキュラーエコノミーのサプライチェーンの構築に向かっていくプロジェクトですね!サーキュラーエコノミーを実現するためにはタレントシェアリングが必要で、生物多様性の中で永続的な循環が行われている自然の知恵を活かすというマインドセットが重要だと考えています。山口さんは実践的で、且つ直観的な感覚から本質的なところを体現していますね。

サーキュラーエコノミーにこだわったわけではないですがね(笑)。
解決したい課題を中心に何が一番現実的かを考えたときに、自然とサーキュラーエコノミーのモデルに行き着いた感じですね。

―とても面白いですね!

新規事業創出の社内制度について

―次に、新規事業を生み出すための会社の制度がありましたら教えてください。

当社では、研究開発部門を中心に、部門によって20%ル―ル(従業員の勤務時間中の一定時間を、通常の職務を離れて自身が取り組みたいプロジェクトに費やすことができるルール)を導入しています。社会に対して課題意識を持っている人が多く、社内では自然発生的にプロジェクトが始まっていきます。定期的に発表の場があり、そこで認められれば、会社としての予算も与えられます。

―自然発生的に複数の新規事業プロジェクトが立ち上がるのは素晴らしいですね。多くの企業が理想とする環境です!特に最近、新型コロナウイルス感染症の影響で既存事業に危機感を感じ、新規事業の模索をしている企業も増えていますが、そのような状況についてどう思いますか?

どの会社も課題に感じている点ですよね。ただ、例えば、今、景気が悪く業績が悪化したために、急いで何かをしなければいけないという流れではなく、業績が悪い背景には社会の変化があり、その中で自社が勝てていないという現実を受け入れる、さらにそうした社会をどのように変えていきたいのか、という視点で考えることが大切だと思います。または、自社の技術をもう一度見つめ直し、どのように世の中へ発信していくかを考え直すことも大切だと思います。経済的な目線だけでないところにオポチュニティ(機会)があると思います。私はMDGs経験者として、それを伝えていきたいですし、このように考える仲間を増やしていきたいと思っています。

―心に刺さるお言葉ですね。このような思考はどうして生まれたのですか?

これも実体験からです。前職で途上国でビジネスを行っていた際、「儲けよう」と思って必死にやってもなかなかうまくいきませんでした。ビジネスではありますが、目的を「命を救おう」ということに変えた瞬間、やることが明確になりました。社会的な課題の解決を思考の中心に置くことで、自分がすべきことや事業を進める方向性がクリアになり、新規事業を更に加速させることができます。多くの人は、新規事業を創るというミッションを会社から得た途端、自社に目を向けてしまう傾向にあると思います。「どうやったら儲かるか」「どうやったら上司を納得させられか」と。しかし、当社のように有志による取り組みにすれば、「どうしたら社会を良くできるのだろう」という点を譲れない軸として事業が立ち上がります。そして、思いに共感した人たちが集まっていきます。適切なタイミングで適切な仲間に出会い、適切な場所が揃った時に、ビジネスにつながっていくのだと思っています。

―「適切な仲間に出会う」ための、仲間集めはどうされているのですか?

わらしべ長者的にです(笑)。社内ネットワークを持つ社員が、他の社員に声を掛けて助けてくれる時もあります。コロナ禍でオンラインミーティングに抵抗がなくなったため、オンラインで話そうとカジュアルに声をかけて口説いていますね(笑)。
よく「違う部署の人と仲良くした方が良い」と言われることがあります。これは、社内の自分の業務を円滑に進めるためだけではなく、新規事業の場合でも、年齢や役職を超えて共通の思いを持った仲間がそれぞれの業務や垣根を越え集まってくることで、想いで繋がり、新しい事にチャレンジできると思います。
また、社外の方にも積極的に声を掛けています。特に、技術的に解決したいことがあって、その答えを持っている人を探すために何人もの人にアポを取ったり、本を読んで興味を持った著者の方に会いに行ったり、ベンチャー企業と議論をしたり。仲間を集めるための行動は惜しみません。
また、社外の方にも積極的に声を掛けています。特に、技術的に解決したいことがあって、その答えを持っている人を探すために何人もの人にアポを取ったり、本を読んで興味を持った著者の方に会いに行ったり、ベンチャー企業と議論をしたり。仲間を集めるための行動は惜しみません。

―社内外問わず、多くの方とコミュニケーションを取っていらっしゃるのですね!このような取り組み、ゆくゆくは本業にもつながっていきそうですね!

そうですね。当社は、モノ作りはもちろん、会社として継続的に存在し続けていくサステナブルな企業を目指しています。今進めている有志で取り組んでいる新規事業は、まだ共感いただけるパートナーやコアなお客様を見つけていくフェーズですが、ある程度のかたちにし、世の中に発信していくことで、ゆくゆくは会社の方向性に合致した本格的な事業に繋がるよう展開していけると信じてます。

イントレプレナーとして大切なこと、そしてイントレプレナーを生み出す企業の在り方とは何か

―サステナブルな企業ですか!山口さんの進めている新規事業と方向性が合致していますね!ところで、山口さんのようなイントレプレナー(社内起業家)として活躍する人を増やすためには、何が重要だと思いますか?

仕事はちゃんと取組み、余白の時間や休日を使ってプラスアルファで想いを持って動けるかどうかだと思います。自分の組織の中にとらわれず、越境し、外部と積極的に関りを持ちながら新しいことを創っていくことが大切だと思います。
名刺を持ってそうした場に出て行く以上、会社としての顔があり、会社のリソースを使って何かを成し遂げたいという思いもありますよね。会社を通して社会に貢献したいという思いがあるからこそ、越境活動を広げていくべきだと思います。

―越境する人たちを増やしていくために、会社としての在り方はどう思いますか?

日本もいろいろな問題があると言われていますが、世界にも多くの問題があります。グローバルスケールで社会課題を見ていかなくてはならないと思います。
私は『インパクト』を大事にしています。どのようなポジティブなインパクトを世の中に出せるか。グローバルな問題に目を向け、それを自分事として捉えることが重要です。そのためには自ら行動して、そうした課題に触れる機会を創る必要もありますし、会社としてもそうした機会を提供する必要があると考えています。

―グローバルな視野で、個人の思いと会社のリソースを使って何ができるのかを考えられる人が増えるといいですね。

日本は課題先進国と言われていますが、視野をもっと広げてグローバルなイシューに触れていく機会が必要です。それは、ビジネスパーソンとして絶対に役立ちます。私自身、マラリアの課題に向き合った現場の経験があったからこそ、廃棄タイヤの課題に気が付きました。現場にいるからこそ、気が付ける。世界的な課題の現場に行って、原体験からのインプットがアイデアに繋がります。

―最後に、山口さんが今後一緒に仕事をしたい人とはどのような人ですか?

話をしていて夢が膨らんでいく人です。お互いの思いを語り合うことで、「実は私もそう思っていた」「こういうことがしたかった」などと共感し、話が盛り上がっていくような人ですね。人類はマラリアの課題に英知を注ぎ込んで、お金も注ぎ込んで、死亡率をほぼ半分にすることができました。著名な経済学者やWHOの方と話をしていくと、日本の一企業で考える話とは次元が異なります。私自身としてもそういうレベルの仕事をしたいですし、実際のキーマンとして世の中の社会課題を色々な側面から取り組んでいる人と繋がっていきたいと思っています。

山口 真広 氏プロフィール

株式会社ブリヂストン 革新技術推進室 革新技術推進ユニット所属。青年海外協力隊(エチオピア)、国際NGOインターン(ガーナ)を経て、2011年に住友化学株式会社に入社、マラリア防圧事業に携わる。主に、アジア市場においてNGOや社会起業家、異業種企業との共創による新たなビジネスモデル構築や新規販路・市場開拓に従事。

その後2018年にブリヂストンに入社、将来都市交通向けのモビリティソリューション戦略の企画、新価値創造に向けた共創/新事業化プロセスの構築等に取組む。2020年10月より現ユニットに異動、革新技術の社会・顧客価値検証等を担当。サステナブルなタイヤの実現に向け社内有志メンバーと共に活動中

エチオピア バスケットボール男子ナショナルチーム・元アシスタントコーチ。

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