SEMINAR

採用のプロが語る ~採りたいエンジニアを採用するメソッドとは~

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登壇者

ワミィ株式会社 代表取締役 伊藤和歌子 (いとう わかこ)氏
大学卒業後、ニフティ株式会社に入社。ソフトウェアエンジニアとしてアプリケーション設計・開発等に従事。その後、京セラ関連のIT企業の人事部門責任者を経て、2016年10月ワミィ株式会社設立。「エンジニアの力をすべてのチームに!」をコンセプトに、エンジニア出身コンサルタントによる、企業の採用支援コンサルティングやRPOサービスを展開。弊社ご登録顧問としても、企業のエンジニア採用やDX研修における課題解決を支援されています。

レポート

経済産業省の調査によると、2030年には最大79万人ものIT人材が不足すると見込まれています。「IT需要の拡大」や少子高齢化による「労働人口の減少」そして、技術革新の速さとキャッチアップの難しさによる恒常的な「先端IT人材の不足」がその理由と言われています。そうした状況に加え、エンジニアをはじめとするIT人材の就業形態や採用手法は年々多様化が進み、エンジニア採用を取りまく環境は、熾烈を極めています。

本セミナーでは、エンジニアとしての就業経験や、IT企業の人事部長としてのご経験を持ちながら、現在はエンジニアの採用支援やコンサルティングを手掛ける伊藤和歌子氏に登壇頂き、昨今の採用トレンドやこれまでの支援実績を踏まえ、採用の各ステップに沿って自社に適したエンジニアを採用するための手法を解説いただきました。

ITエンジニアを取り巻く概況と採用市況

経済産業省から発表された「IT人材需給に関する調査」によると、2018年頃からIT人材の需給バランスは徐々に崩れ始め、今後2030年にかけてその人材不足はより加速していくとみられています。こうした影響から、2023年現在、転職市場でのエンジニアの求人倍率は、その他の職種に比べて既に5倍ほども高くなっています。また、近年はDXの推進や社内システム内製化の動きから、自社でエンジニアを採用する非IT系企業も増加しています。みずほフィナンシャルグループやトヨタ自動車、東京海上ホールディングスといったリーディングカンパニーのそうした動きからも、今後エンジニアの採用市況は、更に熾烈な状況に陥っていくことが予想されます。

採用プロセス別の課題とその解決策

採用計画

具体的なプロセスを見ていく前に、まず押さえておきたいのは「人材採用への意識を、全社で統一する」ということです。経営者と採用部門、採用担当者などの関係者全員がその意識を等しくできていないと、具体的な採用プロセスの中で判断の基準が違ってしまう可能性があるからです。

一昔前まで、採用活動は「Recruiting リクルーティング」という位置づけでした。ポジションごとに期間を定めて応募者を募り、応募者の中から適切な人材を見極め、選別して、採用する。このやり方で、企業は十分に採用目標を達することが出来ていました。

しかし現在、とりわけエンジニア採用においては超売り手市場と言えます。「選別して採用する」のスタンスでは到底うまくいかなくなっているのです。

現在の採用活動は、「Talent Acquisition タレント アクイジション」有能な人材の獲得、とも呼ばれています。自社の将来像から逆算して、長期短期の採用ターゲットを定義し、採用活動そのもの以外にも、採用ブランドの構築から入社後のオンボーディングまで、「手を尽くして人材を獲得する」姿勢が求められます。このことを全社で共有し、意識統一を図ることが、まず第一歩です。

つまり、逆説的になりましたが、採用計画フェーズで課題になりやすいのは「採用に向かう社内の意識の相違」です。担当者と共に採用戦略やアピールポイントを考えるべき経営者や上席者が、従来通りのリクルーティングの概念から抜けきれず、「選別する側」としての意識ばかりを持っていると、どうしてもうまくは進みません。採用する側も、見極められジャッジされているのだ、という姿勢で採用活動に向き合うことがとても重要になります。

母集団形成

母集団形成のお悩みは、日頃クライアントからも非常に多く寄せられています。母集団が形成できない理由にまで踏み込むと、多くの場合、

①  人材紹介エージェントから推薦(応募)が上がってこない

②  ダイレクトリクルーティング(メール)に対して反応がない

のいずれかのケースに当てはまるようです。では、それぞれの場合について対応を考えてみましょう。

  人材紹介エージェントから推薦(応募)が上がってこない

エージェントと契約すれば、自動的に候補者が推薦されてくるわけではありません。現在のような売り手市場では、多くの企業に多数の求人がありますし、エージェント1人あたり100社を超える企業を担当するケースも少なくありません。その中で、「紹介したいと思える企業」になっている必要があるのです。エージェントにとって「紹介したい企業」の基準は、採用人数や給与水準、フィーの料率といった基準も当然ありますが、それに加えて「決定のしやすさ」や「採用活動が円滑に進むこと」「応援したいと思える企業であること」といった面も重要です。積極的な情報提供や密なコミュニケーションで、担当エージェントと良好な関係を築き、自社の採用のパートナーとして積極的に動いてもらえるようにしておくことが求められます。

②  ダイレクトリクルーティング(メール)に対して反応がない

この場合のチェックポイントは、大きく以下の3点です。

  • 使用媒体は適切か
  • 送信数の担保はできているか
  • 返事がこない要因を分析できているか

前提として、採用したい人材の属性に適した媒体を選定し、その媒体の上限数までメッセージを送信し、再送機能などもフル活用する努力が必要です。その上で、返事がこないとすれば、その原因を分析する必要があります。送信したメールは開封されているのかいないのか、開封されていないとすれば、件名や差出人名に改善の余地がありそうです。とりわけエンジニア採用では、差出人が人事担当ではなく、CTOや技術責任者であることが有効なケースもあります。また、メールが開封されているのだとすれば、メール文面や求人票に問題や改善点がないかを考えます。こうした検証と同時に、対象者の条件を狭めすぎていないかどうかも、検討してみてください。必要に応じ、適宜要件の緩和や見直しながら進めていく必要があるでしょう。

書類選考

書類選考の通過率は30%を1つの目安にしてください。これを下回ったら、以下の項目をチェックしていただきたいです。

  • 定量事項と定性事項を切り分けて考えられているか
  • 求人票で求める必須スキルが高すぎないか、多すぎないか

求人票に記載する要件は、客観的に判断ができる事項=定量事項(技術スキル要件など)にとどめておくことをおすすめします。定性面の気になる部分は、実際に面接で会って確認すれば良いからです。

また「必須スキル」が高すぎたり、多すぎたりすると、応募数は少なくなり、書類通過率は低くなります。必須スキルは多くても3つまでに絞り、できるだけ候補者とのリアルの接点を増やすことがポイントです。更に書類選考では、求める条件と提示する処遇のバランスが適切か、という点も立ち止まって検討する必要があります。

面接

面接フェーズでは、直前キャンセルや、選考中の辞退が課題ですね。その際にチェックいただきたいのは、以下の2点です。

  • 選考スピードや面接回数に問題はないか
  • 面接官のアサインは適切か、面接時に自社の魅力を訴求できているか

一般的に、応募から応諾までのリードタイムの目安は、1ヶ月です。それ以上かけると、他社にスピード面で負けてしまいます。また、面接官は、選考官であると同時に採用における営業・広報の役割も果たすため、候補者に対して自社の魅力を訴求することが求められます。特にエンジニア採用の場合には、技術的な話ができる面接官をアサインし、エンジニアの立場から見た自社の魅力を語れることが重要です。

内定・入社

IT・インターネット業界の内定承諾率は、平均80%と言われています。これを下回った時には、以下の3つが間違いなく実行できているかをご確認ください。

  • オファー面談の実施
  • 選考スピードのアップ
  • 候補者の選考状況の把握

メールで内定通知書を送付するのではなく、実際に会って内定を伝えましょう。できれば同年代や共に働く予定の社員をアサインするなどして、「ぜひ共に働きたい」という意志を伝えることが重要です。また、転職活動中の候補者は複数企業で選考が進捗していることがほとんどなので、既に他社から内定を取得している可能性もあります。選考スピードが合わないと、先に内定をもらった企業に意志決定をされてしまうことも起こり得ます。これを回避するため、自社の選考スピードを上げること、更に、他社での選考状況の把握を、早いタイミングから心がけていただくことが重要です。上記の3つは、採用活動をされるすべての企業に、ぜひやって頂きたいと考えていることです。

さらに承諾率を上げるためには、「選考官の質を上げる」こと、「選考の早い段階からアトラクトの質を上げる仕組み」の構築も重要です。面接官のトレーニングや、エージェントからの面接フィードバックなども活用し、選考の全過程において、候補者を引き付けるしくみ、アトラクトの質を上げる努力を続けることが求められます。

採用活動を成功に導くには

採用活動に臨む前提条件

規模や業界、職種を問わず、採用活動を成功に導くための前提条件として意識していただきたい点は、以下の3つです。

➀KPIとKGI

意外とできていないのが、KPI、KGIの設定です。採用活動が始まると、ツールや手段の選定にすぐに入ってしまいがちですが、いつまでに、どのような人材を、何人採用するのか。各選考過程での歩留まりは何%程度が妥当か。明確にゴールを設定した上で、それを達するための各プロセスでの必要数を逆算し、具体的な数字でKPIを設定します。これに自社の現状を照らし合わせて、課題抽出をすることが重要です。母集団は必要数に足りているのか、各選考プロセスでの通過率はどうか、内定の承諾率に問題はないか。先にKPI、KGIの設定があってこそ、課題の特定や、それに対する対策、手段を検討することが出来るのです。

②凡事徹底

例えば、次回面接の日程調整1つでも、単なる事務連絡としてではなく、面接官の所感や、次回もぜひ会いたい、という前向きなニュアンスを候補者に伝えることができるツールになります。そういう小さな積み重ねが、次に進むか迷っている候補者の心を1つ前に動かすことができるかもしれません。「選ばれる立場」だからこその、アトラクトの要素を、1つ1つの接点に込めていくことが重要なのだと思います。そして、その積み重ねが、その企業の採用姿勢になっていくのではないでしょうか。

③PDCA

これは採用活動に限った話ではありませんが、PlanとDoは、比較的どの会社でも取り組みやすいものの、その後のCheckとActionは、なかなかできていないのが現実です。例えばSNSで発信しよう、技術ブログをやってみよう、と様々な取り組みをスタートさせたとしましょう。SNSを始めた結果、フォロワーが増えたあたりまでは進捗を追えたとしても、その後どのような成果に結びついたのか、それを改善するためにどのような打ち手があるか、と丁寧に検証し、PDCAを回せているケースはとても少ないのではないでしょうか。多くの手を見切り発車でスタートさせるよりは、CheckとActionまで見込んだ施策を実行することが重要だと思います。

成功するエンジニア採用

最後に、エンジニア採用を成功させるための3つのポイントをおさらいします。

市況の理解

繰り返しになりますが、エンジニアの採用市場は、かなり熾烈な競争が行われています。そのことをしっかり理解し、全社で共有することが、第一です。その上で、今回は詳しく触れませんでしたが、給与や処遇の面で他社と大きな乖離を作らないことも大変重要です。採用エージェントを味方につけ、市況や他社の動向もこまめに把握しながら取り組むことが成功の秘訣です。

全社で採用する意識

採用は、会社にとって最も大きな経営課題の1つです。そのため、経営、現場、人事の各関係者が一丸となって、全社で採用を進める意識が重要です。これができている企業は、採用がうまくいく傾向が強いと感じます。

専門家を味方につける

採用活動は、リソースもかかりますし、市況の変化も大きく、困難なことも多い領域です。必要な部分は、外部専門家の力を活用するのも有効だと感じます。例えば、採用プロセスの前段、計画から母集団形成、書類選考あたりまでは外部に委託し、面接以降のフェーズは、自社の魅力を伝え候補者としっかり繋がる「アトラクト」が重要な部分なので、責任をもって自社で対応する、と言うように、自社のリソースは重要な場面に集中させて運用するのも有効だと思います。

また、処遇面で採用に苦戦するケースもよくありますが、処遇は経営者判断のため、社内からの進言で改善するのは難しいことも多いです。そんな場合も、私たちのような外部リソースをうまく活用していただけば、例えば数年前と現在の処遇の変化など市況を交えて、客観的な立場から経営者と交渉することができます。場合によっては、エンジニア手当の新設など、やり方もご提案しますので、賢く活用していただけるといいと思います。

まとめ

今後も益々熾烈な争奪戦が繰り広げられそうなエンジニア採用に勝ち抜くためには、会社側が「選ばれる立場」だという自覚を強く持ち、全社一丸となって活動を進める姿勢が重要である、と繰り返す伊藤氏が印象的でした。

エンジニア採用なら、「JOB HUB 顧問コンサルティング」にご相談ください。

現在、エンジニア採用を取り巻く市況感は厳しく、採用トレンドも早いスピードで変わっております。そのような中、重要なのは、KGIやKPIをしっかりと定め、採りたい人材像のエンジニアがいる場所を探し、ストーリー性を持った採用活動が徹底してできるかどうかにあります。

しかし、現状の採用チームや人事部の体制では、知見や経験だけでなく、採用メンバーの不足感が拭えず、中々実現が難しい状況です。
そのような中、弊社の「JOB HUB 顧問コンサルティング」のサービスでは、ご経験豊富なプロフェッショナルが貴社の採用活動の成功に向け、伴走いたします。
今回のテーマとなっているエンジニア採用だけでなく、新卒採用やオンボーディングなど様々なご経験者がご登録いただいております。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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