日本では、プライム市場上場企業の女性役員の就任比率を2030年までに30%以上を目指すとする目標が立てられました。また、2025年には少なくとも1人の女性役員を採用できるような目標の設定を調整しており、企業に女性役員を登用する動きが加速しています。
こちらでは、女性を社外取締役として登用している状況や登用による効果、登用時の注意点や課題を紹介します。自社で女性を社外取締役として迎えようと考えている方は、現在の状況を把握して登用を決定しましょう。
目次
政府の働きかけにより女性を社外取締役へ登用する動きが高まっていますが、実際の現状はどのようなものでしょうか。こちらでは、女性が役員として登用されている割合や社外取締役として登用されている割合などを紹介します。
2022年7月時点のプライム市場上場企業を対象とした取締役、監査役、執行役に関する調査を見てみると、女性の登用率は2022年7月時点で11.4%です。2016年は3.6%であったことから徐々に上昇傾向にあると言えます。
しかし、上昇傾向にあるといえどその数はまだ10人に1人ほどです。2030年の女性役員比率30%以上を達成するためには、さらなる女性役員登用に向けた体制の整備が必要であると言えるでしょう。
画像引用:「執行役員又はそれに準じる役職者」における女性割合に関する調査について|内閣府(男女共同参画局)
また、同調査における性別ごとの社内役員・社外役員の比率は次の通りです。男性役員の60.6%が社内登用、女性役員の85.9%が社外役員であり、女性の社外役員比率の高さがうかがえます。
株式会社日本総合研究所リサーチ・コンサルティング部門が、2023年に上場企業2,637社(旧東証一部、東証二部2,637社)を対象に実施した役員のジェンダーバランスに関する調査によると、女性の社内役員比率は1年間で2.3%から2.5%へ、社外役員は16.1%から19.1%へと増加傾向にあります。また、結果から社内役員よりも社外役員の方が割合も増加率も大きいと言えます。
このことから、育成に時間やコストがかかる社内役員よりも、外部労働市場から経験者を登用する社外役員の採用が進められていると予想可能です。
また、役員への女性登用が増えている背景としては、コーポレートガバナンスの改訂が影響していると考えられるでしょう。具体的な理由としては、独立した体制と人数比の改訂、政府や経団連による女性採用の推進、機関投資家のESG投資で女性の積極的登用を重視している企業への投資傾向などが挙げられます。
参照:取締役会のジェンダーバランスについて(2022年度版)|日本総研
こちらでは、男性ではなく女性を社外取締役に迎えることで企業にもたらされるメリットを紹介します。女性ならではの効果を理解して、登用検討時の参考にしましょう。
画像引用:第1節 就業 | 内閣府男女共同参画局(男女共同参画白書 令和4年版 )
男女雇用機会均等法施行以降、働く女性や長期的にキャリアを築く女性が右肩上がりで増えてきている背景があります。2005年、15〜64歳女性の就業率は58.1%であったのに対して、2022年時点では72.4%と約14%も増加しています。同様に25〜44歳女性も2022年時点で約8割の高い就業率です。
現在の社会では、ライフスタイルや消費トレンドは以前よりも多様化しています。データだけでは汲み取れ切れないニーズや潮流に対応するために、女性の視点が経営に反映されることはメリットになると言えるでしょう。女性ならではの経営視点が生まれることで、経営層の意思決定の多様性を高め、客観的な経営視点の弱点を補うことが可能です。
女性の役員登用は、ダイバーシティを促進するという側面において、自社のスタンスを社会に伝えるメッセージになるでしょう。
また、女性の活躍情報はEGS投資に影響を与える要素になると考えられます。内閣府男女共同参画局が提供する資料によると、9割近くの機関投資家が女性活躍情報は企業の業績に長期的には影響があると考えているようです。そして、女性活躍情報として最も活用している項目に女性役員比率が挙げられています。
このことから、女性活躍情報のうち特に女性役員登用に関する情報がESG投資に活用されていると言えるでしょう。
画像引用:女性活躍情報がESG投資にますます活用されています|内閣府(男女共同参画局)
女性社員が将来的なキャリアを描くにあたって、女性役員の不在が不安となるケースもあります。上の立場に女性がいないことで、どのようにキャリア形成をしていくべきか定まらないこともあるでしょう。
社外取締役だとしても、役員に女性がいることは女性の活躍推進にも重要な役割を果たします。社内の女性活躍が進むことで、将来的な社内女性役員の登用にもつながる可能性が考えられます。
社外取締役に女性を登用する動きが推進されていますが、実際に任せる場合、注意しなければならないこともあります。こちらでは、女性を社外取締役に登用する際のポイントを2つ紹介します。
女性の社外取締役を登用すること自体が目的となってしまっていると、本来の効果が得られないばかりか、オファーする方にも失礼です。ただ女性比率を増やしたいだけという意図が見えてしまえば、オファーを受けてもらえない場合もあるでしょう。
前述した女性特有のメリットもありますが、根底としてその方のスキルや経験を評価し、どのような価値を自社にもたらして欲しいのかを伝えることが大切です。
どのような方を選出するか考えたときに、知名度や実績のみを基準にして選任してしまうと、ミスマッチにつながる危険があります。まずは、自社のフェーズや業務内容、期待する役割を精査し明確にしておくことが必要です。目的を詳細かつ明確に決めておくことで、自然と必要な人材の経験や能力などがはっきりしていくでしょう。実績や知名度だけで判断せず、自社に必要な能力を持ち合わせているかが大切です。
女性の社外取締役を登用する際に課題となるのは、候補者探しの難しさです。政府は、2023年に女性版骨太の方針を決定し、2030年までに大手企業の女性役員比率を30%以上とする目標を盛り込みました。
参考:内閣府 男女共同参画会議 |女性版骨太の方針2023 令和5年6月5日
重要な取り組みであるものの、より候補者探しの難易度は高くなることが予想されます。
また、社外取締役に女性を登用したい企業は増えていても、自社が必要とする能力や経験などの条件に見合った人材を探せず、登用が難航している企業も多いと言えるでしょう。
今回、女性の社外取締役への登用について、過去から現在の状況、メリット、課題などを紹介しました。国の働きかけにより女性を積極的に役員や社外取締役に登用する動き自体は増えていますが、自社が求める条件の人材をなかなか見つけられないという課題も発見されています。
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