普段からテレワークをしているフリーランスのデジタルマーケティングマネジャーのtyuruさんが、コロナウイルス感染拡大化により、一変したテレワークにおけるコミュニケーション方法について貴重な経験をもとに教えてくださっています。今多くの方が同じようなことに直面していて、とても参考になるのではないかと思います。
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目次
ノートパソコン一つでどこでも自由に仕事ができるのが当たり前になっている今、私はデジタルマーケティングの仕事をしています。
デジタルマーケターの仕事の大半はディスプレイを通して、管理画面の数値を見て広告の表示回数やクリック数、問い合わせ数などをより安価に高める方法を探しています。もちろん、コミュニケーションのほとんどがオンラインを通してのものになります。社内メンバーとのやりとりのほとんどがチャットで、むしろ推奨されています。理由は「やりとりの履歴」が残るからです。
クライアントとのやりとりも、月に1度のミーティングを除いてオンラインでのやりとりが中心です。大事な場面では顔を突き合わせる必要がありますが、日々のコミュニケーションはオンラインで効率化を測っています。それがデジタルマーケティングの現場における主流となっている中、いくつかの現場を渡り歩いていた私は、その中で大きなトラブルに見舞われることはありませんでした。
その実績が慢心を生み、”私はチームメンバーとのオンラインコミュニケーションが得意!”という誤認をする原因となったのかもしれません。
そう思ったのは、ある案件でSlackのダイレクトメッセージに複数メンバーから質問が投げかけられた時でした。
私は2020年の初めからフリーランスのデジタルマーケティングマネジャーとして独り立ちをしました。
組成したチームごとにSlackやTerms(場合によっては、LINEやSkype)などを活用しながら、コミュニケーションを取っていました。2週間から1ヶ月はチームメンバーのオンボーディング期間(※)として、コミュニケーション量を多くするように計画しました。
(※)オンボーディング期間・・・初めて参加したメンバーが問題なくプロジェクトや業務を遂行できるよう、組織でサポートする期間
コミュニケーションを多くした理由は、コミュニケーションを増やそうとコメントすることよりも、コミュニケーションそのものをリーダーが増やしていくことが重要だと思っていたからです。
それぞれのメンバーが得意なことや性格などを一定程度理解したつもりでしたし、私も持てる限りのデジタル広告やSEO、LPOなどの知識も共有しました。わからないこともチームのSlackやScrapboxを確認すればヒントが得られるので、情報共有とコミュニケーション量を増やすことを意識していました。メンバーが作成した資料にはコメントをつけ、作業に行き詰まっているようであれば声をかけていました。
そんな折に、新型コロナウイルスの流行が始まりましたが、もともとメンバー同士は別の場所で作業をしていたため、大きな変化はないと思っていました。変化を挙げるとすれば、有志での居酒屋での飲み会と、対面でのクライアント訪問がなくなったことくらいです。
そのイベント自体、日頃メンバーから聞けないことをたくさん聞くことができる場だと思っていたため、普段の仕事には影響が出ないだろうと思っていました。。
新型コロナウイルスの流行が本格化した頃、Slackのダイレクトメッセージへ、チームメンバーからコメントが押し寄せるようになりました。
「●●さんの作業の進捗が見えない」
「○○さんの作業にチーム全体でコストをかけすぎだと思う」
「作業実施の状況を相互に確認し合いたい」
個別メッセージの欄がメンバーの不安で埋め尽くされた時、私はこれまでのオンラインコミュニケーションが根底から間違っていたのではないかと疑い始めました。それと同時に、“何か手を打たなければ!”と、手探りで解決策を探す旅に出ることにしました。
仕事に取り組んでいる時、周りに仕事仲間がいないと「自分の仕事はこれで良いのだろうか」「きちんと誰かに評価されているのだろうか」と、不安になることがあります。また、チームメンバーの進捗や成果が見えず、疑心暗鬼になることがあるのではないかと考えました。
そこで私はその不安や疑いの心を解消するため、Tandemというビデオチャットツールを導入し、いつでもビデオチャットを繋ぐことの出来る環境を構築しました。Zoomなどのビデオ通話よりもフランクに、いつでも質問や疑問があれば繋がることができる!テキストベースのコミュニケーションよりも相手の温度感や感情が見えるようになる!と考えました。
結果としては、最悪でした。
まず、Tandemの導入自体がネガティブな印象を植え付けてしまいました。先述したように進捗や不安、相談を気軽にするためのツールよりも、常にビデオで繋いでおきたい、監視しておきたいメンバーがいるのだと受け取られてしまったのです。いつでも繋がれるという良い反面、いつも疑っているというように思われてしまったのです。つまり、この対策はメンバー間やマネジャー・メンバー間で監視しているように受け取られてしまったのです。
加えて、集中が必要な作業をしている時にチームメンバーからビデオ通話が始まってしまい、集中して作業ができないこともありました。普段なら一声かけたりスケジュールを押さえたりしてからビデオ通話をする場面でも、いつでもビデオ通話できる環境をチームへ要請したことで集中力が分断され、自由な仕事のやり方を奪ってしまうことになったのです。
私が組成しているチームはフリーランサーの割合が多く、このことに皆が異論を唱え、Tandemのつけっぱなしコミュニケーションは廃止になりました。他のチームであればフィットしたかもしれない方法でも、チームの特性によっては悪手になりうることを痛感した瞬間でした。
改めて、最初に問題となったコミュニケーションに関する課題を振り返ってみます。
そもそも、チームメンバーは何故互いに不安や疑いを持ちあってしまうのだろうか―・・・。
その原因には、私のコミュニケーション方法と、チャットツール上でのチャネル編成がありました。
私は個々のメンバーの発言に対して、必要と思われるアドバイスを全てコメントで返していました。それはあるメンバーにとっては不要と受け取っていて、あるメンバーからすれば初歩的なことにマネジャーが時間をかけて答えている(甘やかしている)ように受け取っていました。平時はそれでも良かったのですが、オンライン完結型のコミュニケーションで指摘する場がありませんでした。
なぜなら飲み会もなければ、クライアント訪問後の電車で雑談をすることもなくなったのですから。
私はコミュニケーション方法について改めて考え、チャットツールのチャネルを増やすことにしました。
「#疑問-つぶやきなので返信不要」「#疑問-マジわかんないので誰か教えて」など、疑問を吐き出す場にもパターンを作りました。その他にも「進捗-とりあえず共有」、「進捗-不足があれば教えて」など、自身の仕事についての状況を書き出す場も作りました。それらについて、返信が欲しいか欲しくないかも投稿するチャネルごとにわかるようにしました。
コミュニケーション量や質の他に、コミュニケーション自体も整理する必要がありました。
その後、オンライン完結型のコミュニケーションは、私が関わっている案件のほとんどで続いていて、また、一方でクライアントもわざわざ外部の人とのリアルな接触は求めていないようです。デジタルマーケターのチームを組成している身としては、オンライン完結型の仕事はなかなか難しいと実感していて、この半年程度で様々な打ち手を試してきましたが、どれも「魔法の一手」にはなりませんでした。
しかし、以前に比べてメンバー間がギクシャクする事は減り、深夜にメンバーから悩みがダイレクトメッセージに飛んでくる事もなくなりました。完全ではないけれど、前進しました。
これからも、何かを試してはやめる事を繰り返すと思われます。それでも、いくつかの打ち手が状況を良くしていくのであれば、私はその手を探す旅に出掛け続ける必要があるのだと思います。