CRMとは、顧客情報を有効活用し、顧客に合わせたサービスやプロモーションを行うことによって、顧客との長期的な関係を築くためのマーケティング手法の1つ。顧客満足度を向上させることに直結します。今回はCRMの概要や活用事例についてご紹介します。
IDCJapan株式会社が2019年7月17日に発表した調査結果によれば、アプリケーションを利用した国内CRM(Customer Relationship Management)の市場規模は、2018年には推計で前年比7.2%増の1572億1400万円に上りました。さらに、2018~2023年の年間平均成長率は5.8%、市場規模は2023年に2079億8000万円にまで達すると予測され、今後市場規模を拡大するには、顧客エクスペリエンスの向上を目的とした統合型CRMシステムの提供やCRMにおけるAIのユースケース化準備などを行うことが重要であると指摘されています。
最近ではスマートフォンのアプリケーションを利用してCRMを行う企業が増えていますが、そもそもCRMとはどのようなマーケティング手法なのでしょうか。今回は効果的に顧客満足度を上げるCRMについてご紹介します。
目次
CRMとは、Customer Relationship Management(CRM)の略で、一般的に「顧客関係管理」と訳されます。顧客情報を有効活用し、顧客に合わせたサービスやプロモーションを行うことによって、顧客との長期的な関係を築くためのマーケティング手法の1つです。CRMは、顧客満足度を向上させることに直結すると言えるでしょう。
自社で集めた顧客情報をデータ分析し、顧客の行動心理や興味関心、市場のニーズを把握します。その分析結果をもとに、営業やマーケティング戦略、カスタマサービスなどのサポート部門にもデータを有効活用します。企業組織全体として顧客との関係を構築することができるので、長期にわたり良い関係性を持続することが期待できます。
例えば、顧客の家族構成や生年月日を活用すれば、子供の入学時期に合わせてランドセルや学習机などのプロモーションを行うことができます。あるいは、過去の購入履歴から顧客の趣味や嗜好を分析し、誕生日に合わせてプレゼントをお勧めすることもできるでしょう。
・顧客情報の管理が容易に
顧客情報を一元的に管理できるので、必要な顧客情報をすぐにデータベースから取得できます。データの管理のみならず、部署間での情報共有も容易になり、顧客データ管理の属人化を防ぐことにもなります。
・顧客の状態がリアルタイムで確認可能
クラウド型CRMの場合、顧客情報はクラウド上のデータベースに蓄積されていくため、出張先や外回りで外出している際にも、顧客データの更新が可能です。更新されたデータはリアルタイムに反映されるので、常に最新の顧客情報を全社的に共有することができます。
・新規顧客獲得のコスト低減
新規顧客を獲得するコストと既存の顧客を維持するコストは、5対1と言われています。つまり、新たな顧客を開拓するより、既存の顧客との関係を深めていくほうがコストを抑えられるということです。CRMなら潜在的な見込み客を上位顧客にまで育成できるので、顧客獲得の効率化が期待できます。
・業務改善しやすい
顧客情報を社内で共有できるため、顧客の購買動向や売り上げのほか、クレームなど何らかの問題が発生した際の対応も容易です。その結果、問題に素早く対処することができ、PDCAサイクルの高速化につながります。
・顧客満足度の向上
CRMシステムは、顧客データを商品のプロモーションに利用するだけではなく、クレームや顧客の不満、商品の不具合等をデータベースとして管理することもできます。その結果、同じミスを繰り返すことを防ぎ、顧客の不満をできるだけ取り除き、顧客の満足度を向上させることができるのです。
CRMを導入する際には、4つのポイントがあります。それは、現状把握、サイトに必要な機能、システムベンダーのサポート、自社サイトとの連携です。まずは自社の現状を正確に認識することで、CRMを導入する際にどのような機能が必要なのかを明確にしてください。その必要な機能を基準に、最適なシステムベンダーを選定し、自社サイトとの連携を調整する必要があります。
CRMシステムで取得した顧客情報を分析し、新規の顧客・ヘビーユーザーなど、顧客の性質に合わせてアプローチの仕方を考えていきます。まずは顧客を「上位顧客」「中位顧客」「下位顧客(新規顧客)」といった育成段階によってグルーピングし、育成段階に応じて最適なアクションプランを実行します。例えば、新規顧客にはリピーターになってもらうために、DMを送ったり、新規専用のポイントアップなどのキャンペーンを提供したりします。上位顧客には、利益率のアップを狙って優待券等の特典を提供するように、顧客をさらに惹きつける施策が考えられます。具体的なキャンペーンについては、企業や業界によって方法や性質が異なるので、自社の状況に合わせて顧客に効果的にアプローチできる方法を考えてみてください。
最後に、スマホアプリを利用したCRMの具体的な導入事例をご紹介します。
ある大手メガネチェーンは顧客向けにスマートフォン用のアプリを提供することで、本格的にCRMに取り組みました。2017年11月に提供開始した自社アプリは、好調にダウンロード数を伸ばしています。はじめは販促用のクーポンを配布するためにアプリ開発を始めたそうですが、どうせつくるなら会員情報と紐付けた顧客データを活用し、CRMに乗り出そうということになったそうです。ユーザーはこのアプリで、購入したメガネの度数情報や電子保証書を管理できます。また、スマホで自撮りした写真で、どのようなメガネが自分に似合うかをAIで判定する機能も備わっています。しかも、アプリ内のコンテンツの使用頻度によってマイルが貯まり、クーポンが発行されるなど、顧客の育成段階に応じたアプローチができるようになっています。
CRMを管理する側は、例えば、メガネを購入した顧客に対して、1週間後くらいにメガネの不具合について尋ね、フィット感に問題があれば来店を促す通知をします。購入直後は、買った商品の満足度を上げることに注力し、しばらくしてから新商品やキャンペーンの通知を行います。夏はサングラスを薦め、購入2ヶ月後にはメンテナンスに関する情報を発信する、といったプロモーションを行うことができます。
ある地方銀行は2015年4月にiPadを利用したCRMで新システムを導入。顧客の取引履歴や属性をデータ分析して消費者の傾向を把握し、顧客に合った商品を提示しています。今まではプロダクトアウトだったセールスをマーケットインに転換することに成功しました。さらに、行員にiPadを携行させることで、商品説明から申し込みまでを一連のプロセスとして完結させます。業務効率が上がり、事務的なミスを減少させることができました。また、CRMを活用して今までアプローチしていなかった顧客層に接触するため、アウトバウンドのコールセンターを立ち上げました。有人チャネルと無人チャネルの効果的な連携で、金融商品への申し込み率は5倍になったそうです。
単に顧客情報を集めるだけで、その情報を有効活用できていないという企業も少なくないでしょう。取得した情報を蓄積・分析し、全社的に共有、課題を発見すれば、解決策を考え、施策を講じる。このような一連のプロセスをもとに、適切なマーケティング戦略を立て、顧客との信頼関係を築きましょう。
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