ビジネスをスピーディに成功へ導くには、高い知識やスキルを持った専門家である顧問の活用が有効です。顧問の仕事内容や依頼できる業務、一般的な報酬、顧問を導入するメリットなどを知り、必要に応じて依頼を行うことで業務の改善を図りましょう。
この記事では顧問の仕事内容や役割、顧問を依頼した場合の具体的な効果などを解説します。
目次
顧問とは、企業や組織からの依頼をもとに、高度な専門性やビジネス経験を活かして経営や業務の補佐や指導を行ったり、実行支援を行ったりするアドバイザーです。
顧問は役員として活躍することも可能ですが、会社法には顧問に関わる定めはありません。つまり顧問は企業の経営層ではなく、自ら意思決定をする立場ではない点に注意が必要です。
顧問には、内部顧問と外部顧問の2種類があります。内部顧問は、社内における長年の経験を活かして元社長や常勤役員などが顧問となるケースが多く、外部顧問は顧問弁護士のように特定の分野の専門家が活躍することが多くみられます。
また、顧問に近い役割には相談役、参与、理事などがあります。
顧問の役割は、社長や取締役などの経営層に対して必要な、専門的な観点や経験をもとにビジネスを成功に導くための戦略立案や課題解決のための意見やアドバイスを行うことです。そのため、1つの企業が目的に応じて複数名の顧問と関わることも少なくありません。
例えば中小企業では、経験豊富な顧問の知識や経験を活用して実務的なアドバイスだけでなく、課題解決の実行や支援を受けるケースが増加しています。顧問は企業が解決したいことへの知識や経験があるだけではなく、人脈やスキル、ノウハウ、業界トレンドなどの情報を持っています。そのため、戦略立案、業績改善、組織改革、業界トレンド分析をもとに最短で事業を課題解決に導く役割が期待されています。
顧問は、一次的なアドバイス対応ではなく、半年や数年など比較的長期にわたり企業に関わることが一般的です。どのような役割を担っているのかによって、常勤や非常勤両方の働き方があります。
顧問の種類には内部顧問と外部顧問があります。
内部顧問とは、元々企業の内部に所属した経験がある人材が顧問になる場合です。退任した取締役などが、経営の支援を行うことがあります。一方、外部顧問とは、顧問先での就業経験がないことが一般的です。主に専門知識がある人材が就任して、客観的な視点から企業の支援を行います。
顧問の雇用形態は、法律上の定義がないため企業によって異なります。常勤が内部顧問、非常勤が外部顧問とは限らないため注意が必要です。
顧問にはさまざまな役割があります。以下の表では、主な顧問の種類と業務内容、就任することが多い人材をまとめています。
顧問の種類 | 業務内容 | 就任する人材 |
経営顧問 | 経営戦略策定経営陣サポート経営視点からの経営支援 | 元役員、経営コンサルタント 中小企業診断士 |
顧問弁護士 | 法的問題対応契約対策法務視点からの経営支援 | 弁護士 |
顧問税理士 | 税務代理税務書類作成税務相談税務視点からの経営支援 | 税理士 |
顧問社労士 | 社会保険手続き代行人事労務コンサルティング労働法務視点からの経営支援 | 社労士 |
法務顧問 | 法的トラブルの予防法的問題の解決案提示法的コンプライアンスの支援 | 弁護士、行政書士、司法書士 社労士、弁理士、コンサルタント |
技術顧問 | 技術戦略策定実行支援技術視点からの経営支援 | エンジニア、 CTO(最高技術責任者)経験者 |
営業顧問 | 営業スキル向上支援顧客獲得戦略策定人脈の紹介 | 営業経験者、大企業の経営陣などとの人脈を多く持つ者 |
人事顧問 | 採用改善労務管理給与評価設計人事異動支援 | 人事業務の経験者、社労士 |
内部顧問と外部顧問のどちらに依頼をするのがおすすめなのかは、企業の状況や課題、目的によって異なります。
内部顧問は、社内事情や人脈に明るく、経営陣や社員とのコミュニケーションが比較的スムーズです。しかし、新しい視点や変革のアドバイスには不向きなことがあります。そこで、内部顧問への依頼をおすすめする業務の一例は以下のとおりです。
外部顧問は、自社に不足するスキルの増強や新規システムの構築が得意です。しかし、場合によっては企業における課題・ニーズの把握に時間がかかることがあります。そこで、外部顧問への依頼がおすすめな業務の一例は以下のとおりです。
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顧問は、一般社員のようにフルタイムで従事する役職ではありません。常勤顧問と非常勤顧問は、一般的には雇用形態と勤務日数・時間が異なります。ただし法律で明確な定めがないため具体的な勤務条件はそれぞれ異なります。
なお、企業に複数の顧問がいる場合、常勤顧問よりも非常勤顧問の人数が多い傾向があります。
常勤顧問は、企業と雇用契約を結び、組織の一員として常駐または定期的に勤務をして日常的に組織内の業務に関わります。また、通常の従業員と同様に雇用契約に基づいた給与を受け取ります。また福利厚生として、社会保険や年金、有給休暇などが適用されます。
非常勤顧問は、企業と雇用契約を結ぶのではなく、プロジェクトや特定の業務に対する契約を締結して業務に参画します。そのため、給与ではなく契約に対する報酬を受け取ります。また、企業の社員ではないため、基本的に福利厚生は適用されません。
会社には、顧問のほかにも以下のような役職があります。その役割や権限は企業により異なりますが、相談役や参与は名誉職的な意味合いを含むことがあります。一方、理事は会社法に定めがあり法的責任を負う立場であることが特徴です。
役職 | 主な役割 | 会社法での規定 | 業務への関与 | 適している人物 |
相談役 | 組織の戦略的な問題にアドバイスを行う | なし | 非常に限定的 | 経験豊富な前経営者、業界のエキスパート |
参与 | 特定のプロジェクトや問題に関与し、意見を提案 | なし | 特定のプロジェクト | 専門分野のスペシャリスト |
理事 | 組織全体の戦略策定、政策決定、組織監督を行う | あり | 全体的 | 組織運営やガバナンスに精通した人物 |
相談役の主な役割は、経営者や企業の意思決定に対して戦略的なアドバイスや知識を提供することです。一般的には経験豊富な元経営者や業界の専門家などが相談役を担います。相談役は、名誉職であることが多く、戦略的なアドバイスを提供して経営者の意思決定に外部の視点を提供しますが、原則として実務には直接関与しません。
相談役は実務に関与せず外部からの知識と視点を提供するのに対し、内部顧問は組織内で実務的なサポートとアドバイスを提供する点が異なります。
参与は、経営幹部として経営者や管理職の補佐を行い、組織の運営や意思決定にも参加します。通常、部長など管理職以上の経験や能力を持った者が退職したあとで、知識と経験を企業に提供するために就任します。
参与は組織改革や新しい戦略の策定、経験や人脈を生かした新たなビジネス機会の探求など、幅広い業務を担当します。企業の戦略策定、重要な意思決定、組織改革などに関与するため、意見や提案が業務に反映されることがあります。企業において、意志決定権がある点が顧問との大きな違いです。
理事は、定款や社員総会の決議に従って法人を運営する役割がある役職です。対外的な法人の代表であり、取締役、執行役と同程度、参与よりも上位の職位です。一般社団法人、一般財団法人、NPO法人では設立に必ず理事が必要です。
また、理事は会社法において定義された役員です。株主総会で株主に報告を行ったり、企業の方針を決定したりと企業の経営に参画します。法的な責任を負いつつ、企業の成長戦略やリスク管理、法的遵守などに関わる役職です。
顧問の給与や待遇には明確な基準が存在しません。ただし、常勤の内部顧問に関しては、通常役員待遇が適用されます。一方、非常勤の内部顧問の場合、給与の有無は一概に問われません。
外部顧問の給与や待遇は、契約形態や顧問サービスの利用有無によって異なります。さまざまなケースがあるため、金額だけを判断基準とするのではなく、顧問の貢献度や求めている役割など総合的な評価を行うべきです。ここでは外部顧問と直接契約を結んだ場合の、一般的な報酬額をご紹介します。
<直接依頼した際の相場>
また、顧問への報酬は自社の経営規模でも異なります。例えば、顧問税理士に依頼をする場合に、個人事業主が年額3〜20万円で依頼できたとしても、法人では年額10〜30万円になることも珍しくありません。
顧問料を抑えたい場合には、細かく要望を伝えて作業を明確化したり、交渉する必要な時にだけ依頼を行ったりすることが重要です。また、はじめて依頼をする場合には、同様の業務の実績がある顧問に依頼すると効率的に成果を出しやすくなります。
報酬について詳しくはこちら:顧問の報酬はどれくらい?種類別の相場や待遇について詳しく解説します
新しい事業を始めたいが経験や知見が不足している場合など、社内のリソース不足や業務の効率化を図るためには、内部のメンバーだけではなく外部顧問のサポートを得ることが有効です。ここでは外部顧問を導入するメリットをご紹介します。
顧問が就くことの多い業務は多岐にわたりますが、例えば以下のようなものが挙げられます。
企業が強化したい分野に精通した人材を外部顧問として依頼することで、自社の社員が新たに学ぶよりも早く、新しいノウハウを高い精度で得られます。
ある事業を立ち上げる場合には、アイデアの企画具現化、事業構想、サービスの評価、概念実証、売上予測などさまざまな検討を行う必要があります。経験が浅い社内メンバーだけで業務を行う場合、進行が手探りになってしまうことが少なくありません。専門家である外部顧問がプロジェクトメンバーにいるだけで、最短経路での事業立ち上げが可能です。また、社員が試行錯誤して不安に感じたり事業が不調となったりするリスクを抑え、モチベーションの向上が図れるでしょう。
さらに外部顧問の知見や経験はノウハウとして社内に蓄積するため、OJTとして社員の能力向上に役立ちます。
ビジネスにおいて、意思決定の迅速さは非常に重要です。意思決定が遅いということは、現場の動きが停滞したり、生産性が低下したりするリスクを負ってしまいます。
問題や課題に対処する際に、自社や担当者の知識、経験だけでは発想が限られてしまうことがあります。そこで、ビジネススピードの向上を図るには、専門家に意見を聞くことが効果的です。外部の専門家や顧問から的確なアドバイスを受けることができれば、迅速かつ効果的な意思決定が可能となります。
新規に外部顧問を募る場合でも、数週間で専門家が見つかるケースが少なくありません。問題解決に向けた新たなアイデアや戦略の創出や競争力強化など、素早く精度の高い情報が必要となる場合でも、社員がリサーチを行うよりも早く外部顧問から必要な情報が得られる可能性があるのです。
新たな視点から戦略をブラッシュアップさせたりビジネススピードを向上させたりするには外部顧問の活用が有効です。外部顧問が対応可能な領域は多岐にわたります。
外部顧問には、大手上場企業役員や新規事業の複数立ち上げ経験者、マーケティング・DX分野における現役のCxO(Chief x Officer)、大学教授など幅広い経験と専門知識を持った人材がいます。
経験豊富な顧問から適切な戦略的アドバイスが得られれば、企業の目標達成に向けた最適なアクションプランの策定や業務の遂行に活かすことができるでしょう。
ここでは、外部顧問を導入してどのような改善が図れたのかに着目して、具体的なケースを3事例ピックアップしてご紹介します。
美容室専用のヘアケア製品やヘアカラー剤などを製造・販売する株式会社ミルボン様は、広報活動に注力したいと考えていました。しかし自社内に知見やノウハウが少なく、セミナーや書籍などから他社の成功事例を参考にしようとしたものの、企業により目的や戦略が異なるため、成功事例の転用が難しいという課題を抱えていたのです。
そこで、広報業務のノウハウやケーススタディが豊富な外部顧問を活用した結果、広報活動におけるストーリーの重要性についてアドバイスされました。自社の伝えたいメッセージを明確化したことにより、社内の意識改革が図れたのです。その結果、社内からもストーリーの構築に役立つ情報が集まるようになりました。
2年間の支援でメディア露出量が2倍に増加したうえ、コンテンツの質も向上する効果が得られました。また、社内に広告に関するノウハウが蓄積できたため、スムーズに戦略が構築できるようになったのです。
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コンビニATM事業や金融サービス事業を行う株式会社セブン銀行様では、テクノロジーを活用した新たなサービスの開発のために、優秀なエンジニアを採用したいという課題を抱えていました。
採用に実績のある外部顧問を活用した結果、自社の求める人材が募集内容に記載できておらず、転職活動をしているエンジニアに伝わっていないことがわかりました。
例えば、「社内SE」と書いてあるだけでは具体的な業務が想像しづらく、複数の職種に切り分けられる業務が一つの職種にまとめられた募集もありました。
そこで、実際に募集する業務の内容を適切に反映させた採用職種名への改善を行いました。
また、エンジニアに特化した紹介会社の活用、転職エージェントとのコミュニケーション機会の充実などの新しいアプローチを取り入れることで、採用活動が効果的に進展したのです。
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大手のゼネコンである東京の建設会社、株式会社安藤・間様では、建設事業を強化して事業領域を拡大するために新規事業を創出したいという課題を抱えていました。新規事業創出のための部署を新設したことを受けて、効率的な情報収集の一環として外部顧問の活用を行ったのです。
新規事業の創出に強いフリーランスを外部顧問に迎え、地域活性化をテーマに取り組むことになりました。今まで社内の部署単位やワーキンググループで検討をしても、事業化まで至らないことが多かったものの、外部顧問を活用することでスタートアップ企業との協業を検討する段階にまで進めました。
「量が質に転換する瞬間を信じ、事業アイデアを100案出す」「さまざまなフレームワークを元に議論を進める」など、今まで考えたこともない評価軸や分析視点で事業のアイデア出しができました。あえて社外の外部顧問を活用したことで、新しい発想と経験が積めたと言えます。
▼詳しくはこちら:
本記事では顧問の役割や立ち位置、メリットなどを紹介しました。
顧問とは、企業や組織からの依頼をもとに、高度な専門性やビジネス経験を活かして経営や業務の補佐や指導を行ったり、実行支援を行ったりするアドバイザーです。
企業に重要な戦略的パートナーとして位置づけられていて、幅広い経験と専門知識を持ち、顧問先の新しい視点構築や変革に向けた支援を行います。顧問は内部顧問と外部顧問の2種類に分けられ、それぞれに得意なことが異なります。
顧問を導入する目的は、成長や発展、競争力強化、リスク軽減など企業によってさまざまなので、目的にあわせて顧問に依頼を行うことが大切です。特に新しい視点や変革のアドバイス、成長や発展のために顧問を導入したいと考える場合は外部顧問の設置がおすすめです。
事業を最短で成功に導くには専門家の活用がおすすめです。
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専門家が直接プロジェクトに入るため、知見や経験が社内に蓄積されます。OJTとして新たな経験を積むことで、社員の能力開発とモチベーションの向上が期待できます。
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