会社を大きく発展させるには、新規事業を考えだし、スケールさせていく必要があります。新規事業に必要な要素は「提供価値」「提供手段」「収益モデル」の3つだといわれています。この場合の「提供価値」は、今まで顧客や企業にとって盲点になっていた部分に新しい価値や新たな課題を発見することを意味します。提供価値が見つかったら、その発見した価値を実現し、課題を解決するための「提供手段」を考え、新しい価値や課題解決方法を顧客に提供することによって、「収益モデル」を確立します。
例えば、「料理宅配サービス」のような新しいサービスを考えます。飲食店はコストをかけずにデリバリーで販売したい。配達員は隙間時間を使い、趣味のサイクリングを兼ねて収入を得たい。この2つの課題をスマホやGPSのテクノロジーによって解決し、モバイルアプリによる出前サービスを作り出しました。
しかし、新規事業がうまく軌道に乗ることは稀です。多くの場合、大きな売上げを上げる前に撤退を余儀なくされます。今回は新規事業が失敗する原因について紹介します。
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新規事業は会社を大きく発展させる過程で、必ず課題になります。会社の経営がうまくいっていても、既存のビジネスが将来的に成功するとは限りません。マーケットの変化に柔軟に対応する意味でも、新規事業の重要性は高まっています。日本における新規事業の成功率は、どの程度なのでしょうか。
関西生産性本部の調査によれば、日本が好景気であった1990年度で新規事業の成功率は37%。バブル崩壊後の1995年度で28%というデータがあります。日本の景気が最高潮であったバブル期でさえも、新規事業の多くが成功できずに失敗しています。これは大企業、中小企業にかかわらず言えることです。この1995年の調査では、新規事業を「この5年間の重要な経営課題」として挙げた企業は30.89%。「今後その重要性が増す」と回答した企業は42.82%でした。
企業としては、新規事業が重要な経営課題と認識しているにもかかわらず、事業を上手くスケールできない事例が散見されます。
新規事業を成功させるのが難しいことは分かりましたが、失敗する原因は何が考えられるのでしょうか。原因やパターンが分かれば、対策を立てられますので、新規事業が失敗してしまう共通点をご紹介します。
長年、自社で経験を培ってきたビジネス分野以外で、新たな事業をはじめようとすると、どうしても不確実性が高くなります。自社のビジネスにおいてゴールや課題があり、それに向かっていく、課題を解決していくのは比較的分かりやすい方向性です。しかし、「何か新しいことをしたい」といった、最終ゴールが見えないプロジェクトでは、どのように計画を進めていけばいいのか分からなくなります。たとえ新しいサービスをローンチできたとしても、とりあえず新しいことをした結果だけが残ります。そこからの方向性が明確ではありません。長期的に事業として成功させるのは難しくなります。
どんなに良い新規事業を考えても、社内の上申がうまくいかなければ、実現できません。新規事業の分野は、企業として力を入れているにもかかわらず、いざプロジェクトを推進する段階になると社内からブレーキがかかることがあります。「新しい価値を提供できる事業を考えた」とチーム内で計画がまとまっても、社内で話が通りません。ビジネスとして成功するか否か以前に、社内で話を通すハードルがとても高いのが新規事業です。個人で何か新しいことに挑戦するときには恐怖や躊躇があるのと同様に、企業組織でも未開領域に足を踏み入れることに対しては消極的になりがちです。
新規事業は本業とは全く関係のない分野でビジネスを始めることです。ですから、社内での人選が難しくなります。基本的には新規事業の分野に関しては全員が素人です。ゼロからマーケティングや事業計画を考えなければならないので、社員の負担が大きく、誰を任命するかという問題が大きくなります。
新規事業ではノウハウの蓄積がありません。経験値や実績が利用できず、どのようにプロジェクトを進めていいか分からなくなることがあります。「今まで自社でやっていないことに挑戦する」とは聞こえが良いですが、事業が素人考えになってしまうケースもあります。ノウハウを蓄積するには試行錯誤が必要ですが、その前に資金がショートしてしまう可能性が高いです。
「とりあえず新しいことをやってみる」という本気度のないマインドセットで新規事業を始めることが、失敗の原因になります。社員にとっては、今までとは違う分野の仕事を振られる可能性が高く、精神的なストレスが多くかかります。新規事業には明確な目的意識と本気度が必要です。
最後に、新規事業に乗り出したものの、ビジネスとして成立しなかった失敗事例を紹介します。新規事業は、資金力や知名度のある大企業ならうまくいくわけではありません。会社に体力があるだけに、事業の目算が甘い、ビジネスプランが大雑把になるといった可能性もあり、組織の大きさにかかわらず、失敗することが大いにあります。
ある住宅メーカーがクラフトビール造りに挑戦したことがあります。東北地方の村おこしを兼ねた新規事業でした。本業は家づくりなので、もちろんビール造りに関するノウハウはありません。
ビール造りの新会社を創業した頃は日本で地ビールブームが起こっており、ビジネスとしては順調な滑り出しでした。当初は資金的な問題もなく、ビジネスはうまくいくと考えられていました。
しかし、会社の設立当初から積極的に設備投資を行っていたため、企業としては赤字体質になり、経営難に陥っていました。そのような状況のなかで2001年ごろから地ビールブームが過ぎ去り、売上げが低迷。コスト的に有利な発泡酒がアルコール飲料がマーケットで台頭し、厳しい経営状況に追い討ちをかけます。2005年9月期には年商約38億8900万円に対し、本業の不振や工場を売却したことによる損失等により約77億円の赤字を計上するなど、債務超過の状態が続いていました。ビール工場に併設されていたビール園も閉鎖となり、最終的な負債総額 約126億円です。
世間的に知名度のある経営者たちが、女性向けのファッション雑誌を作る新規事業がありました。新会社を設立し、有名な音楽プロデューサーや新興IT企業の社長、流行雑誌の編集長も参画するなど、経営者のドリームチームのようなメンバーでスタート。ヒト、モノ、カネがすべてそろっていましたが、事業は成功しませんでした。
雑誌の内容は40代の独身女性をターゲットにしたファッション誌です。創刊当時は話題性もあり、世間の注目を浴びましたが、雑誌自体に対しては厳しい意見も寄せられ、ビジネスとしてはうまくいきませんでした。創刊から1年半で3億4200万円の赤字となり、事業は売却されました。
大手コンビニチェーンのQRコード決済用のアプリは、ローンチからわずか1ヶ月でサービス廃止を決定しました。原因はサービスのセキュリティーに問題があり、不正アクセスが頻発したからです。誰もが名前を知る大企業でも、新規事業に関しては失敗することがある代表的な例と言えます。
不正アクセスに関する記者会見で企業側は被害者のスタンスをとり、事態は悪化。最終的に、サービス廃止に追い込まれるだけではなく、ブランドイメージを大きく損ねる結果となりました。
新規事業の失敗する原因を知っていれば、事前に対策を立てることができます。新規事業の事前準備として失敗パターンを熟知しておきましょう。失敗を防ぐために多彩な知見を有する外部人材を活用するのもよいでしょう。外部人材による客観的な事業分析を新規事業に活かすのも有効な手段になり得ます。専門スキルや豊富な経験を持つ外部人材によって、経営課題を解決に導く「JOB HUB 顧問コンサルティング」のなかでも、「新規事業支援サービス」なら、新規事業に精通したプロフェッショナル人材が、客観的な視点と経験によって裏付けされた推進力で、新規事業の問題をスピーディーに解消し成功へのサポートを実現します。
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