創業したばかりの会社や、規模の大きくない企業はあまり知名度が高くありません。そのため資金調達や企業の認知度アップを図るのであれば、広報戦略に重きを置く必要があります。今回は資金調達と認知度アップにつながる広報戦略について解説します。
創業したばかりの会社や規模の小さい会社が知名度を向上させたり、資金調達を実現させたりするには、広報戦略に重点を置く必要があります。しかし、広報の専任者を配置できないケースも多く、どのように広報していくかの判断に迷うことも多いのではないでしょうか。そこで今回は、資金調達と認知度アップにつながる広報戦略について解説します。
目次
「広報戦略」は企業から社会の人々へ向けて、自社の商品や事業を理解してもらい、信頼関係を構築するためのコミュニケーション手段といえます。
つまり広報戦略とは、人々に会社への共感を持ってもらうための方法なのです。共感は、その企業の事業や商品のファンを増やすことへとつながります。その結果として顧客数が増大し、事業の発展を促します。
広報の役割は会社の発展段階によって変化するものであり、以下の4つのステージごとに押さえておきたいポイントがあります。
・会社を立ち上げた時点
この時点ではまだ広報として具体的に何をすればよいか分からないことが多いので、まずは、「どのようなことを発信するか」を決めることが大切です。
・ビジネスモデルが固まり、会社が大きくなっていく時期
企業が大きくなっていくにつれ、その認知度アップの必要性が増していきます。創業時に決めたことを踏まえ、会社の広報戦略を立案して、どのメディアと関わっていくかを固めていきます。
・会社の規模拡大の時期
事業内容が増えてくる時期ですので、情報を発信できる体制を構築すると同時に、情報漏洩を防ぐための危機管理対策にも努めましょう。
・上場へ
上場後は拡大時期につくった体制を維持しながらも、自社の社会的価値を発信できるようにその整備・改良を行いましょう。
広報戦略を策定する際は組織全体を見渡す視点が必要であり、情報トピックスがいかに増えようとも目の前の情報発信に追われることなく、会社全体にとってよりよい広報戦略の立案と実施に努めなければなりません。
ここでは広報戦略の基本構造と、広報活動の一環として行う「パブリシティ」について解説していきます。
広報戦略を立案し、それを運用・評価していくためには以下の基本構造を踏まえておくことが大切です。
(参考文献:『体系 パブリック・リレーションズ』 スコット・M・カトリップ、アレン・H・センター、グレン・M・ブルーム著、ピアソンエデュケーション刊)
・状況分析
会社で問題・課題・機会として見なされていることに対し、それを詳細に調査・分析する段階です。顧客・従業員・株主・仕入先などの事業理解度や意見、行動を調べ、具体的な広報戦略を策定するための参考にします。
・戦略
前段階で明確になった課題と顧客、従業員などの状況を踏まえ、組織としての先進性を活かすための方策と、製品リコールや不正経理などの万が一の事態に備えるための対応策を決めます。
・実施
最初の段階で明確化した課題を改善するために、2番目のステージで策定した計画を実行する段階です。この時点で重要なのは、企業の経営行動と広報活動を調整して進めていくということ。経営活動全体が広報行動を妨げることなく促進し、この2つが乖離しないようにすることが、会社への信頼性につながります。
このステージの広報マネジメントで大切なのは、どのような広報活動においても一貫したメッセージを発信するということです。発信する内容にブレがあると、信頼を得られなくなり、資金調達も難しくなるでしょう。
・評価
最終段階は実行したプログラムの評価です。
このステップは広報プログラムに投下した資本やエネルギーの効果を確認するだけでなく、それらを効率化させ、広報戦略の最終目的が達成されたかどうかを見るためのものでもあります。プログラムの評価はその後の新たな戦略立案のためにも必要不可欠であり、成果が出ていれば予算が投入されて次のよりよい広報活動が可能になりますので、ここを念入りに行ってください。
広報戦略において重要なことはパブリシティ活動です。これはマスメディアへ情報を提供し、ニュース番組や雑誌記事などで取り上げてもらうよう働きかけることです。
現代はスマートフォンやパソコンで、ニュースやウェブ雑誌を読む人々が増えており、マスメディアもネットを使って積極的に情報発信をしています。
マスメディアへ積極的に情報提供を行うのと同時に、SNSや自社メディアを活用して情報を発信し続けることで、資金調達やさらなる認知度アップを実現させましょう。
その際のポイント は3つあります。
・その時代で話題になっている事柄を把握する
時代の流れを意識した広報を心がけることも重要です。時流と発信情報がマッチしたときに、相乗効果が生まれるということもあります。
全く新しい製品やサービスをリリースする際、仮にその分野の市場がまだ十分に形づくられていない場合には、新たな市場を開拓することを意識した広報が必要となるかもしれません。
・人を惹き付ける話を入れる
開発にまつわる苦労話をはじめ、人の心に響くストーリーも注目されやすい要素です。そういったエピソードも探してみましょう。
・計画的に活動する
先に述べたように、広報戦略では計画性を重視することも大切です。特にメディアに積極的に取り上げてほしい事柄や製品・サービスがあれば、発表の数ヶ月~1年前から準備してください。
広報戦略が効果を発揮し、社会の人々からの信頼度がアップすると以下のようなことが期待できます。
・認知度アップ
社名や製品名だけでなく、会社への信頼性が増すことで多くのファンができます。
・売り上げ拡大
ファンの増加は売上アップにつながります。一度ファンになった顧客は、会社が困難なときにも応援してくれるサポーターにもなってくれるので心強い味方です。
・社内活性化と優秀な人材の獲得
社内製品への評価上昇やメディアへの露出増加によって社員のモチベーションが高まることが期待できます。また、企業の良い評判を知った優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。
これまで広報戦略の具体的な方法と効果について見てきましたが、創業したばかりの企業の場合、広報における大きな課題は、発信する情報の質と会社の事業発展につながるかどうかです。特に資金調達に活かせるか否かは、スタートアップ時の企業にとっては大きな問題となります。ここでは創業したばかりの企業における広報活動の課題を挙げておきます。
・発信数が企業価値につながっているかどうか不安
情報発信数の増加が企業価値につながっているかどうか分からないというのは、特に多くの企業で課題となっているものです。こうした課題がある場合には、長期的な戦略を立案して発信する情報を決定し、着実に実行していくことが大切です。発信する情報のコアを決定すれば、一見関係のないトピックであってもその先の事業展開に活かしていくことが可能です。
・どんな媒体で、どのターゲットに、何を提供するか
忘れてはならないのは細かい部分まで戦略を詰めておくこと。マーケットでのポジションを設定し、企業として発信していく情報をどんな媒体を使って、どんなタイミングで発信していくかを決めます。
特に資金調達については、調達した資金で何を実行したいかを明確にし、そのアプローチ方法や露出方法を設定したうえで情報を発信していくことが大切です。
創業したばかりで知名度が低い場合は、広報戦略のターゲットを見定めたうえで効率良く会社の価値を伝えられるよう努力しましょう。会社がどれだけ大きくなっても、広報で大事なことはコミュニケーション戦略です。ステークホルダーとのコミュニケーションを重視し、会社の価値を広く伝え、必要な資金を調達できるようにしていきましょう。