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経営課題

新規事業立ち上げに欠かせない助成金の種類と獲得のポイント

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緊急事態宣言は解除されたものの、新型コロナウイルスの脅威がなくなったわけではありません。仮に感染第2波、第3波が起きたり、今後新たな災害が発生したりするなどを想定した場合、既存事業だけでは生き残りが厳しいと感じている経営者は多いのではないでしょうか。そこで、検討したいのが新規事業の立ち上げです。しかし、新規事業の立ち上げとなれば事業内容によるものの、多くの場合、自己資金だけでなく外部からの資金調達が欠かせません。その際に助けとなるのが国や地方自治体、民間団体などによる助成金です。今回は、アフターコロナ下でも安定した経営を行うために知っておきたい助成金について、その概要から主な種類、獲得のためのポイントまでを紹介します。

助成金とはどういったものなのか?

新規事業を立ち上げる際の資金調達手段はいくつかありますが、そのなかでも一般的なものとしては、次の3つが挙げられます。

  1. 助成金
    新規事業を立ち上げるうえで、新たに雇用を行う際や社内の人材を育成する際などに受給できるもので、厚生労働省のほか、地方自治体や民間企業・公益団体などが実施しています。基本的に条件を満たしていれば受給でき、難易度は高くありません。ただし、受給できる金額は数十万円~百万円(/人)程度です。受給した金額の返済義務は原則ありませんが、新規雇用を実施する前、人材育成を行う前など、基本的に事前に受給はできません。ほかに、経済産業省が中心となって実施している研究開発型の助成金もあります。
  2. 補助金
    新規事業や創業を行う際に受給できるもので、経済産業省のほか、自治体やその他の団体が実施しています。助成金よりも利用できる範囲が広く、受給できる金額も数百万円から億単位までありますが、予算が決まっているため審査があり、申請をすれば必ず受給できるというわけではなく、公募期間自体も短い場合がほとんどです。また、国や関連機関が推進したい事業や技術振興に沿って用意されているため、すべての事業において受給できるとは限らないようです。また、一部を除き受給した金額の返済義務はありません。受給のタイミングは基本的には事業開始後しばらくたってからです。
  3. 融資
    主に金融機関から受けるもので、代表的なものとしては、日本政策金融公庫の創業融資があります。新規開業資金、新事業活動促進資金、中小企業経営力強化資金などがあり、すでに事業を行っている企業でも審査に通れば融資を受けられます。助成金や補助金とは異なり、返済義務がありますが、新規事業の立ち上げや新規雇用の前(平均して融資申込から3週間程度)に資金調達が可能です。

以上が一般的な資金調達手段です。多額の受給ができるという点では、助成金よりも補助金のほうが有利ではと思われるかもしれません。しかし、補助金は種類にもよりますが、基本的に審査に通らなければならず、条件を満たすだけの助成金に比べ受給のハードルが高くなっています。また、年に数回しか募集のタイミングが設けられないうえ、一回の公募期間も短いことが多いため、タイミングが合わないと申請自体もできません。そのため、通年で申請可能な助成金をメインにタイミングが合えば補助金の申請も行うといった形で考えるとよいでしょう。

新規事業を立ち上げる際に活用できる助成金の種類

では、国や地方公共団体、民間団体による助成金のなかでも新規事業立ち上げの際に活用できる助成金の種類を紹介します。

キャリアアップ助成金

従業員のなかでも、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者など、いわゆる非正規雇用の従業員を対象に、企業内でのキャリアアップ促進を目的とした助成金です。具体的には、有期雇用労働者を正規雇用労働者や多様な正社員などへの転換を助成する「正社員化コース」、有期雇用労働者の賃金規定などを改定した場合に助成する「賃金規定等改定コース」など、全部で七つのコースがあります。

例えば正社員化コースで見ると、有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換または直接雇用した場合、一人当たり57~72万円(中小企業の場合)が受給できます。

※詳細は「キャリアアップ助成金|厚生労働省」をご確認ください。

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)

中小機構と全国約30都道府県の公共団体、金融機関などの共同出資によって組成される地域独自の官民ファンドによる助成金です。主に各地の農林水産物や伝統技術を活用する研究、商品開発、需要開拓などに関わる費用を受給できます。

例えば北海道中小企業新応援ファンドの「地域資源を活用した地場産業」では、最高で150万円(助成率は1/2以内)を受給できます。

※詳細は「地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)|中小機構」をご確認ください。

三年以内既卒者等採用定着奨励金

学校の既卒者、中退者の応募機会拡大および採用や定着を図ることを目的とし、そうした人材が応募可能な募集を新たに行い、採用後一定期間定着させた場合に受給できます。支給要件としては、既卒者等コースと高校中退者コースの二つが用意されています。

例えば既卒者等コースで見ると、採用後、1年定着で50万円、2年で10万円、3年で10万円(中小企業の場合)を受給できます。

※詳細は「三年以内既卒者等採用定着奨励金|厚生労働省」をご確認ください。

人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)

国が主導となって進めている働き方改革に取り組む中小企業が、新たに人材を雇用し一定の雇用管理改善を図る場合に受給できます。主な支給要件としては、雇用管理改善計画や計画達成助成、目標達成助成などがあります。

例えば、計画達成助成では、新たに雇用した労働者一人当たり60万円(短時間労働者の場合40万円)を受給できます。(※労働者の上限は10名)

※詳細は「人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)」をご確認ください。

※受給額はすべて2020年6月現在の金額です。

新規事業で助成金を獲得するための手順とポイント

それでは、実際に新規事業の立ち上げ時に助成金を獲得するための手順について、ここではキャリアアップ助成金(正社員化コース)を例に紹介します。

助成金獲得の手順

  1. 労働組合等の意見を聞き、「キャリアアップ計画」を作成し、正社員化コース実施日の前日までに労働局・ハローワークに提出します。
  2. 非正規雇用のアルバイトやパートタイム労働者、派遣社員を就業規則等に基づく正社員等へ転換を行います(非正規雇用から正社員等への転換規程がない場合、就業規則等の改定を事前に行います)。
  3. 転換後、6ヶ月間賃金支払いを行います(転換前と比較して賃金が5%以上増額されていなければなりません)。
  4. 支給申請を行い、審査を通れば支給が決定します。

助成金獲得のポイント

上記手順を見てわかるように、キャリアアップ助成金の場合、受給は計画立案してから最低でも半年以上かかります。そのため、少しでも早く確実に受給するには、綿密なキャリアアップ計画を迅速に立案すると同時に就業規則の改定を行うことが必要です。ここで不備があると、場合によっては半年先に審査を通らない可能性もあります。

また、正社員等へ転換する従業員への教育も欠かせません。これから新しく始める事業への理解を深めなければ、転換後、半年を待たずに退職してしまうリスクがあります。

ここでは、キャリアアップ助成金を例に説明しましたが、基本的にすべての助成金は一定の条件を満たした後の受給のため、それ以前の計画をしっかりと立て、それに沿って実行することが欠かせません。これを社内の人材だけで迅速に行うのが難しいといった場合、1つの方法として、専門人材の知見活用が考えられます。

助成金獲得には綿密な計画立案と実行がポイント

アフターコロナのなか、企業が継続的に成長し利益を上げ続けていくためには、さまざまな方法が考えられますが、新規事業の立ち上げもその1つです。事業規模にもよりますが、複数の事業を手掛けるのはリスクもあるものの、現在の基幹事業が立ちいかなくなった場合の倒産、廃業リスク軽減に役立つことが期待できます。

助成金にはさまざまな種類があり、新規事業の立ち上げにも効果を発揮しますが、基本的に申請後すぐに受け取れるわけではありません。そのため、立ち上げの途中で新規事業の計画そのものが頓挫してしまえば、新規事業の立ち上げにかかった費用だけが残ってしまいます。これを避けるには、しっかりとした計画作成と実行が重要なポイントです。しかし、新規事業計画は専門的な知見が欠かせないため、場合によっては、専門人材のスポット採用による活用も視野に入れ進めていくことがアフターコロナを生き抜くためのポイントといえるでしょう。

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