国内市場の縮小が避けられない現在、海外進出する企業は、海外の文化や働き方に対応するグローバル標準化が求められています。
しかし、多くの日系企業の人事制度は、高度経済成長期の前提と慣行のもと作られており、女性の活躍やLGBTQへの理解が追いつかない、あるいは、国内と海外で人事制度を分ければ不公平感につながるなど、改革の必要性に迫られているのが実情ではないでしょうか。
私はこれまでの35年間、グローバルカンパニーと日本企業両方の組織文化・慣習に触れてきました。振り返ると、いかにして組織と働く人々が、それぞれの力を最大限に発揮し、成長していけるか問い続けてきたと思います。日本企業が今後、持続的に発展していくためには、人々の多様な背景を踏まえるインクルーシブな考え方が不可欠です。
海外進出、ブランド力強化など事業課題の根底には、多様性(ダイバーシティ)と包摂性(インクルージョン)の課題がつきものです。
経営戦略にもとづく真の組織改革によって、次世代を見据えたダイバーシティ経営を実現しませんか?
私にとってAIG損害保険の経営統合は、その後の価値観に大きな影響を与えた経験でした。米国資本のAIU損害保険と、大阪発の富士火災海上保険という、全く異なる文化の融合を目指したビッグプロジェクト。なかでも印象的だったのは、役員20名で実施した3泊4日の八ヶ岳合宿です。
この合宿で私は、自分の弱みを周囲に見せる経験をしました。そして、弱みをさらけ出し理解し合うことが、現代の組織運営において大切な要素のひとつだと気づきました。
AIGで「The Best Place to Work(一人ひとりの違いがポジティブに作用する働き方の実現)」という価値観を浸透させ、5年かけて人事制度を整備した結果、内外からさまざまな評価をいただきました。現在も続くOne AIGの意思は、八ヶ岳の合宿で得た、役員同士の絆がなければ実現できなかったことです。
ダイバーシティ、インクルーシブ、社員のエンゲージメント向上、女性活躍などの枝葉に注目するのではなく、根幹の経営課題から考えていけば、結果的にこれらを実現できます。加えて、経営陣であれ、従業員であれ、自分の言葉で伝え合うことが、今後重要になるでしょう。
私は顧問として、フィードバックは自分を変えるチャンスであり、ギフトだと強くお伝えします。
私たちは、人から受けるフィードバックを攻撃や批判のように捉えてしまいがちですが、リーダーの「弱みを見せる勇気」と、フィードバックを前向きに捉える姿勢が、日本の企業文化をより良い方向へ導くと信じています。