昨今のコロナ禍によって、個人の生活環境や生活様式は急激に変化しています。これに伴い、企業はどのように営業やマーケティング手法を適応させていくべきなのでしょうか。
今回は、コロナ禍におけるマーケティングにスポットを当て、JOB HUB 顧問コンサルティングにてご活躍いただいている2名のプロフェッショナルに、「withコロナ時代のマーケティングの今」についてお話しいただきました。
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企業のマーケティング施策はコロナによってどのような変化があったのでしょうか。「代理店任せにしていたマーケティング戦略を、インハウスで立案するようになった、という変化が起こっているのは間違いないですね。」とデ・スーザ氏は語ります。
対面でのコミュニケーションが減ったことにより、メールやサイト上でリードを育てていく設計作りのニーズが劇的に伸びている。例えば、オンラインで完結するECサイトの運営に関してはBtoB事業、BtoC事業問わず、相談が増えている。(デ・スーザ氏)
また、コロナによってデジタル化が加速しリードを育てる仕組みが整備されたため、売上が爆発的に上がっている企業が意外と多いようです。デジタルマーケティングにおいては、数値での管理が多いため非対面でもあらゆる業務が可能です。また、短縮された移動時間を有効活用して情報収集を行い、今最も的確なアプローチを選定することができるため、「コロナだから売上が上がらないという言い訳はしてほしくない」と述べました。
2名のプロフェッショナルは、企業でのマーケティング支援においてどのような関わり方をしているのでしょうか。
デ・スーザ氏は、マーケティング部長代理のような立ち位置で、現場に深く入り込む支援が多いそうです。その際、短期的な小手先のテクニックだけではなく、本質的に設計を組み直すことを意識しているとのことです。
支援に入ってすぐ、その企業で足りない要素は浮き彫りになってくるため、経営層と地道に連携をとりながら社内に波及させていくパターンが多い。(デ・スーザ氏)
実際に組織の中に入って、社員の横に座って同じ目的に向かって進んでいく支援をしていく中で、最終的には自走できるような体制作りを心がけているそうです。
野村氏によると、上場企業では革新的な施策に着手していない傾向があるようです。
そのため、いざ新規事業の立ち上げ等、新しい試みに取り掛かる際に社内の知見がなく、プロジェクトが進まない事例がよく見られる。そこで、新しいアイディアを持つ第三者として参画することが多い。(野村氏)
支援の中では、経営層との連携はもちろん、現場の従業員とも一対一でコミュニケーションをとることを重要視していると語ります。この二軸の視点によって、ボトルネックとなっている箇所が特定できるといいます。
続いて、様々な企業がコロナを機にマーケティング施策の大改革を試みている中で、起きうる失敗と要因についても伺いました。
野村氏は、事例・前例主義でケーススタディーを学ぼうとしてつまずく企業をよく見かけるといいます。まさに先が見えないVUCAの時代の中、前例がどれほど活用できるのかは懐疑的です。
野村氏が、アドバイザーやコーチングといった関わり方で支援をする際には、過去の事例やその企業の考え方に入り過ぎずに、顧客目線を最重要視することを心がけているそうです。顧客がサービスを認知してから購入するまで、そのプロセスを第一に考えていく、それこそが失敗を防ぐコツだといいいます。
野村氏は「マーケティングにおいてはPeople(人)、Process(過程)、Platform(プラットフォーム)、Passion(情熱)の「4つのP」が重要だ」と続けます。
特にPassionは大事です。それ以外の3つのPが揃っていても、主体性を持ち取り組むマインドやオーナーシップがないプロジェクトはうまくいきません。誰のために誰がやるのか、といった「who」の部分を常に問いかける必要があると思います。(野村氏)
この点に関しデ・スーザ氏も、プロジェクトに適した人材がおらず、人材がいたとしても流動化が激しい、といった人材における失敗をよく見るといいます。このような企業においては、社内にノウハウが溜まるように、兼務でも構わないので担当をつけることが重要だそうです。そして、このような課題を持つ企業での支援においては、愛社精神のある若手をアサインし、教育していく体制がオススメのようです。
3つ目の失敗要因として、デ・スーザ氏は「マーケティング施策における属人的なプロセス」を挙げました。マーケティングのスペシャリストのいる会社は、有利である一方でその人材が抜けるとノウハウが無くなってしまうというリスクも併せ持っています。だからこそ人材教育をすると同時に、会社としてナレッジが共有される仕組み作りや社内での強固な横串の体制を根付かせていくことが必要不可欠だといいます。
デ・スーザ氏が顧問として支援する際、「組織づくり」「仕組みづくり」をミッションの1つと捉え、会社の自走のために仕組みを残していく働きかけをしているようです。
デ・スーザ氏によると、マーケティングの支援に関わらず、経営層は「なぜ現場の社員には我々の意思が通じないのか」、現場は「なぜ経営層は認めてくれないのか」と感じている企業が大半だといいます。 そこでデ・スーザ氏が支援に入る際には、経営層と現場双方の懸け橋となり言葉に翻訳することを大事にしているそうです。
同じものを売っているはずなのに、双方の目線が合っていない例が多い。まず着手すべきことは経営層と現場の目線合わせだ(デ・スーザ氏)
目線合わせをすることにより、現場でマーケティングの成果が出たときに経営層と現場が同じ方向を向くことができます。成果に伴って波紋が起きて、周りが巻き込まれていき、共鳴する人が増えることにより、会社全体がマーケティング企業に変わっていくのだそうです。
同じく野村氏も、経営層や部長クラスからは現場視点が見えづらいことを指摘し、「経営層と現場の双方を動かすことが重要だ」と語ります。解決手法として野村氏は、顧問として双方での課題を可視化するためにマッピング作業を行うことが多いようです。これにより、経営層が求めているものが現場のどこに結び付いているかが明確化され、組織全体が同じ方向を向くことができる、と分析します。
また、野村氏が支援に入る際には、ワークショップを用いて課題感の違いを整理する機会を設けているそうです。 事前に聞いていた課題感と、実際に支援に入った後に感じる課題感が異なっていることが多いため、個人単位・チーム単位・会社単位と、3つの軸を主語にして整理していき、ずれをアラインしていきます。「そもそもこの会社はどのような会社なのか」「なぜそれをやるのか」といった第一原理に立ち返るところからサポートすることが多いようです。
外部視点から感じた疑問点をぶつけながら、最終的に現場が答えを出していく。このように顧問のような外部視点が入ることで、良い意味でハレーションが起こり、改革・改善が実現されるそうだ。野村氏は、「思いがあるからこそ、ハレーションが起きるので、何をするかを明確にする良い機会だと思っています。」と分析している。
最後に、コロナ禍だからこそできることについて伺いました。
デ・スーザ氏は、コロナの今だからこそ分かる数値の検証がおすすめだといいます。例えば、コロナの影響により広告を出せなくなった状況を生かし、広告がもたらしていたリアルな数値などを把握することなども今ならではの恩恵だとデ・スーザ氏は分析しています。
自粛中だから我慢して何も得るものがなかった、ということにならないよう、予算の見直しなど、コロナ渦故読み取ることのできる点を次に生かせると良いですね。(デ・スーザ氏)
さらに、コロナのような未曾有の事態が発生した時、本能的に立ち止まってしまうのではなく、活動を続けることが重要だと野村氏は続けました。活動の継続がモチベーションにつながり、モチベーションがあるから続けられるというサイクルで動き続けて回していくことが重要だそうです。コロナという前例がない時代、今だからこそできることを見つけ出して前進していくことが必要のようです。
そして両氏とも、コロナの今だからこそ勉強をしながらトライ&エラーでチャレンジする場を作ることが重要だと締めくくりました。チャレンジのサポート役として、ぜひ顧問活用を検討してみてはいかがでしょうか。