近年、AIやIoT、ブロックチェーンなど、新たな技術が台頭し、ITへの期待は『守りのIT』から『攻めのIT』へと変化してきています。弊社でも『DXとは何か知りたい』、『DX人材を探している』など企業様からのご相談が増えてきています。そこで、2名のDXプロフェッショナル人材をお招きし、『DX×経営~デジタルを活用した事業・サービス企画について~』オンラインセミナーを開催しました。
目次
経済産業省によると、DXとは『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』とされています。
以前は社内の業務効率化、コスト削減等を目的としてDXは活用されてきましたが、昨今はAIやIoTなどの技術を活用したビジネスモデルの変革や新サービス開発が必要不可欠になってきています。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によって、行動や生活のデジタル化が進み、ますますDXがニューノーマルに変化してきているのが実情です。
また、DXを推進しないことで生じる企業の経済的な損失の大きさは、経済産業省にて『2025年の壁』とも呼ばれており、必要な人材を揃えた早急なDX推進対応が求められています。2018年に『DX推進ガイドライン』も策定され、企業はデータとデジタル技術の活用、すなわちDXが必要である、と政府の方針として掲げています。
DX着手前の企業と、DX推進中の企業での課題傾向にはどんな違いがあるのでしょうか。DX着手前の企業では、『何から始めて、どう取り組むべきなのか分からない』という課題を抱える企業が多い、と宇野氏は語ります。
また、この課題の実態は、デジタル人材が社内におらず、またクラウド化やデータ整備も未着手であり、自社のDXがどの程度遅れているかを把握していない状況が根底の課題であることが多いといいます。「DXを推進する人材は、従来のIT人材とは人材の種類が違うため、適切な情報収集ができず、目的が不明確のまま、いつまでも着手できない状況に陥るケースが多い」(宇野氏)
DX推進における専門人材の確保が最初の関門となりそうです。
また、最初のアプローチ法として、まずは自社のDX推進における現状や人材状況を把握し、そのうえでいくつかのスコープに分けてから進める手法が一般的である、と宇野氏は話す。例えば、DXに着手する以前に『Excelでのデータ整備』、その後に『データサイエンス』→『機械学習』→『新しいデータビジネスの策定』といった短期と長期のロードマップを作り、経営と議論しながら進めていく事が先決とのことだ。
対して、DX推進中の主に大企業での課題について、金本氏は次のように語ります。
「大手企業は計画的に進めることを好むが、計画に重きをおきすぎるとなかなかスピード感を持って進められず、実行面でも思った通りに進まないというケースが多々発生する。計画も重要だが、不確実性に対応した素早い改善サイクルを構築することの重要性が注目されている。さらに、従来の慣例から自社のグループ企業等にアウトソースし、うまくいかないといったケースもよく見られる。目指す姿に対して最適なパートナーを選択、連携体制を構築し、社内にノウハウを蓄積していくことが本質的に重要だ」(金本氏)
DX推進を成功させるためには、計画から実行までをスピーディーに行い、そこから得られる結果を改善へとつなげるサイクルを重視した社内体制が求められるようです。
他にも、技術面をアウトソースした結果、社内で誰も仕組みを理解できていないため、価格の妥当性が分からず、高コストになってしまう例もあるといいます。
「私は、DXとは人材育成やカルチャー醸成とイコールだと考えている」と金本氏は続けます。「知見のない人材が意思決定を行うとこのような課題が生じてしまうため、社内の既存人材を育成することや、DX推進についてレクチャーできる外部人材との協働等が今後重要視されていくだろう。」(金本氏)
上手くDXを進められている企業の共通点とは何でしょうか。
「上手にDXを推進する企業は、経営層が学ぶ姿勢を持ち、かつ若手に裁量を与えようとする姿勢がある」と金本氏は切り出しました。デジタル技術は日進月歩で発展していくため、自社でトレンドをキャッチするのはなかなか難しく、時にプロフェッショナル人材の力を頼りながら情報を収集し、新しい技術の知見を吸収することができる若い人材が主体的に進めて行くことが重要のようです。
また、社内全体としては失敗を恐れずにトライアンドエラーし続ける姿勢が必要であると語ります。多くの企業において、IT領域の成功体験が必ずしもあるわけではないため、社内では失敗することを許容し、経営層の理解と現場の努力を両輪で回すことが重要との見解を述べました。
宇野氏は、「これだけDXというキーワードがあふれているので、まずは仮説や可能性の棚卸を行うことが最初の一歩だ」と話します。その際、トップダウンよりボトムアップで若手の意見が出やすい形で仮説を集めていくと、そのあと若手が中心になってリードする光景も見られるといいます。
対して金本氏は「まずはDXをしようという意識を捨てるべきだ」と語りました。DXはテクノロジーを活用して競争優位性を作ることであり、まずは自社の『競争優位性は何か』『課題感は何か』という定義付けから始めるべき、とのことです。「AI導入といったツール論や技術論から入るのではなく、まずは競争優位性や課題感を整理し、テクノロジーをどう活用していくのかを検討する。」これが今テクノロジーを活用し、ビジネスに成功している企業の共通点だといいます。
そして最後に金本氏は、「競争優位性の定義付けを自社の社員だけで行うと、視野が狭まるリスクがある。その際には他社での豊富な経験や知見を持つ外部人材を活用しながら、DXを推進していくと、ネクストアクションが見えてきやすくなるのではないだろうか」と結びました。