SEMINAR

地方製造業が挑む、未来に向けた事業創出~二代目社長 新たなマーケットへの参入

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登壇者

株式会社ニーズ 代表取締役 細谷 光司(ほそたに こうじ)氏
2008年、父が創業社長を務める株式会社ニーズに入社。
入社すぐに東京営業所立上げのミッションで東京に単独常駐し、2009年に東京営業所を開設、東京営業所の責任者に就任。
2012年には営業本部 本部長に就任し、本社・大阪・東京3拠点の営業部を統括。その後取締役を経て、2018年二代目として代表取締役に就任。

レポート

少子高齢化と人口減少に伴い、日本の生産労働人口の減少や国内需要の伸び悩みは今後も更に加速する見通しと言われています。一方で、技術革新のスピードは速く、市場環境は日々大きく変化する昨今、柔軟な事業転換や新規事業へのチャレンジは、どの企業にとっても必要とされているのではないでしょうか。実際、従来事業の継続だけでは、成長の鈍化や先細りに不安を感じられている、という経営者のお悩みのお声も日々伺っています。

今回は、外部のプロフェッショナル人材の力を活用して、新たな事業の柱づくりに挑まれている株式会社ニーズの代表取締役 細谷氏にご登壇頂き、地方製造業の戦い方とその底力を「新規事業への取り組みと成果」の観点からお話頂きました。

事業転換の必要性

日本を支える中小企業

経済産業省のデータによると、全国の約70%、地方部では更に高い85%もの雇用が中小・中堅企業によって創出されていることがわかります。また、業種別・規模別の企業数の内訳から見ても、あらゆる業種において圧倒的に中小企業の割合が高く、「日本経済を支える基盤は中小企業である」と言われている所以が、はっきりと読み取れます。つまり、全国の中小企業の成長こそが、日本経済全体にとっての成長の原動力になるわけです。そしてそのためには、各企業が既存事業に留まらず、新たな事業の創出で成長の柱を育てていく必要があるのではないでしょうか。

新規事業展開を阻む障壁

とはいえ、中小企業が新規事業を立ち上げるのはそう簡単ではありません。
引き続き経済産業省の調査結果によると、中小規模の企業が新規の事業展開に踏み切れない理由として、

有望な事業の見極めが困難であること

② 既存事業の経営への悪影響を懸念

を挙げるケースが最も多いことがわかります。

事業の見極めが重要であることはもちろんですが、取引先に財務状況開示を求められることも多いため、新規事業への先行投資で赤字を作ること自体を避けたい、という側面もあるようです。つまり、取引関係における信用力低下のリスクを避けるため、なかなか新規事業に踏み切れない、踏み切らない、という状況がうかがえます。

更に、

新規事業を担う人材確保が困難であること

新事業の経営に関する知識とノウハウが不足していること

を挙げられる企業も多く、こちらの2つは中核人材の不足、と言い換えることが出来そうです。

―㈱ニーズで新事業を立ち上げる際も、同じような障壁は感じられましたか?

③④関しては、まさにその通りですね。人材の確保は大きな課題です。中核人材の不足に限らず、専門的な知見を持った人材に関しても同様です。中小企業という点に加え、地方の製造業では、採用競争力の課題を常に抱えています。東京や大阪でも需要の高い人材であればなおさら、なかなか香川までは来てくれません。また、仮に求める要件にピッタリの人材に出会えたとしても、立ち上げ期にはどうしても他の業務と兼任して頂くことになるので、その方のスキルを100%活かせる専任ポジションを用意できないことも、雇用側としてはつらいところですね。ただ、そうした障壁を超えてでも、販路拡大をし、競合との差別化を図るために、新規事業に取り組んできた、という感覚です。

では、そんな思いを持った細谷氏の経営する株式会社ニーズでは、どのように新規事業の創出に取り組んでこられたのか、その事例をお話頂きました。

株式会社ニーズ 新規事業への挑戦

株式会社ニーズ 会社概要

香川県丸亀市に本社を構える株式会社ニーズは、うちわの販売事業から始まった会社です。設立37期目を迎える現在も、大阪岸和田のだんじり祭りのうちわを手掛けるなど、創業事業である、うちわやカレンダー事業での安定的な収益基盤を持っています。ポケットティッシュやタオル類など、関連分野から徐々に製品ラインナップは増えていき、直近15年ほどは企業のノベルティグッズの販売なども幅広く手掛け、企業としても着実に成長しています。

新規事業に踏み切った背景

一見、着実に成長してきている㈱ニーズですが、細谷氏にはずっと以前からある思いがあったと言います。それは、

「何らかの影響で、主力事業が不振に陥った場合にも、それを支えることができる別の事業の柱を持っておきたい」

というものでした。

―事業創出への想いはいつ頃からお持ちだったのでしょうか

主力事業とは別の柱事業を育てておきたいという思いは、社長に就任するよりも前からありました。ただ一番の決め手は、コロナ前後で感じた大きな後悔がきっかけです。2019年の夏頃、次の製造の柱をマスクにしようと考えていました。将来の環境汚染や感染症などから人の呼吸・生活を守るためには、マスク需要が上がるだろうと考えたからです。当時は皆から反対を受けたこともあって断念してしまったのですが、奇しくもその半年後、誰も予想もしなかったコロナ禍に突入し、世の中からマスクが姿を消した。なぜあの時に事業を始めなかったのか、とものすごく後悔しました。そしてその後悔が、以降の新規事業への取り組みにつながっていったと思います。

―最初の取り組みはいつ頃ですか?

2020年の初頭、コロナ禍で衛生用品の需要が著しく高まっていた頃です。まずはそのタイミングで製造設備を導入し、自社での衛生用品、ウェットティッシュ製品の製造に踏み切りました。元々ノベルティ商品として取り扱いがあったので、その取扱量を増やすために、最初はノベルティ用のウェットティッシュの製造からスタート。ウェットティッシュは、衣食住のあらゆる場面で使われるすそ野が広い商品だと感じて参入したのですが、最初は掃除用、次にペット用、と徐々に用途を広げ、最終的にはメディカル分野、コンビニでもよく見かけるデオドラントシートなどの医薬部外品の市場に参入したい、という目標を設定しました。

新たなマーケットへの挑戦の歩み

―目標に向けて、最初は何から取り組まれたのでしょうか。

今になってみると恥ずかしいのですが、目標の「医薬部外品の製造」には、まず資格保有者が必要だという情報を得て、薬剤師探しから始めました。幸い地元で薬剤師が見つかり、今一緒に働いてもらっています。しかし、例えば化粧品の製造販売許可を取得するにしても、県の薬務課に通い、必要なことを都度確認しながら手続きを進める、といった具合に、やるべきことの全てが完全に手探りで、とにかく専門知識がないために非常に時間がかかりました。また、全員主業務との兼務で動いているので、なかなか思うようなスピード感で進めていくことができませんでした。

―そんな中、外部人材を活用しようと思われた決め手はどのようなものだったのですか?

正直当時は、専門的な人材が必要ならば、外から雇うのか、自分たちでゼロから勉強するのかの2択しかなく、顧問契約や外部コンサルタントに協力を仰ぐという選択肢を、僕自身が持っていませんでした。ただ、たまたま地元の銀行さんからの紹介でパソナJOBHUBの顧問サービスの話を聞く機会があり、月に何回か足を運んでもらってアドバイスを得たり、メール等遠隔対応もしてくれる外部コンサルがいるのだ、ということを当時知ることができたのはとても大きかったですね。というのも、自分たちは、あくまでも「メーカー」なので、商品開発の多くを外部にアウトソーシングするということは最初から考えていなかったのです。開発は内製化して、社内にノウハウを蓄積していきたかった。また、参入しようとする市場は広く、多くのガリバー企業もある中で、中小の自分たちならではの強みは、小回りとスピード感だと思っていました。商品をリリースして、レビューをもらって、それに対してすぐに改良して、リリースする、というサイクルをスピード感を持って回していきたい。それには、やはり開発は社内で対応する必要がある、と考えていました。そのため、外部の専門家に助言をもらいながら内製化の伴走をしてもらうのは、最適だと思ったのです。

―顧問の方からどのような支援を受けられたのか具体的にお話いただけますか?

支援頂いている顧問の方は、大手化粧品メーカーに長年勤務され、分析研究、品質管理、基礎化粧品やメイクアップ化粧品の商品開発、特許管理等を経験され、その後も化粧品、医薬品、ヘルスケア関連の会社で処方開発等に携わっていらっしゃる薬事にもまた、ニーズで製造を開始したウェットティッシュ製品にも精通されたプロフェッショナル人材です。

最初の1,2回は、こちらは完全に素人で、とにかく「医薬部外品を作りたいんだ」ということばかりを訴えていました。知識も経験も、顧問の方とは大きな差がある状態でしたし、お金を払って来て頂くので、やはり採算をとらなければ、という思いも当然あって、何からスタートするのがいいのか、どういうやり方で、何をお願いすればよいのか、かなり悩みました。そして、その思いを、膝を突き合わせて顧問の方に正直に伝えました。顧問の方も歩み寄ってくださる方で、3回目くらいの時に、「目標の医薬部外品を作る前に、1つ手前のグレードの化粧品を作り、そこで売り上げを立ててから、ステップアップして医薬部外品へ挑戦しませんか」という提案をしていただきました。医薬部外品は、作った後も国の許可を得る必要があり、そこにまた時間がかかってしまいますが、通常の化粧品だとスピード感を持った商品開発とリリースができるからです。ご自身が参画することで、売上につながる支援を、という視点で考えてもらえたこともありがたかったですし、目標に向かうロードマップも描いてもらえた形です。

その後、1年ほど支援頂いていますが、その間は、商品化予定の企画を実現する、処方レシピを作って頂いたり、通常レシピに少しアレンジを加えるアイディアをいただいたりしています。また、薬液の仕入れ先さんを紹介していただいたりもしました。おかげさまで会社として設立以来初めて、ナショナルブランドを一般に向けて今年発売することができました。CS放送ですが、CMも始めました。そういうスタートを切ることができるまでにご支援いただいています。

新規事業への取り組みの成果と今後

顧問サービス導入の成果

商品開発面

まず第1ステップにした、化粧品ブランド、スキンケア商品をリリースすることができました。1品目だったので、2023年1月頃から開発を始めて4~5か月かかりましたが、この間社内にもだいぶノウハウをためることが出来ました。今後、2つ3つとアイテム数を増やす予定ですが、これまでの経験を活かして、次はもっとスピーディーに商品開発ができそうな手ごたえを感じています。

組織面

現状まだ、専任組織の編成には至っていないのですが、売上が上がった先に組織するイメージは、社内でも共有できるようになってきました。今回のプロジェクトで、顧問の方と仕事をさせてもらったことで、外部からこんな風にピンポイントで専門家の力を借りる選択肢がある、ということを僕も社員もわかってきたので、そのような意味でも一皮むけた感覚があります。

営業面

以前は、取引先から新たな商品について開発の相談を受けると、可能かどうか即座に判断できず一瞬立ち止まる感覚がありましたが、今は頂いた依頼はすべて請けよう、というスタイルで営業ができるようになりました。専門家である顧問の方がバックについてくれていることでの安心感が大きく、開発の依頼についても何とかできるだろう、という気持ちで請けてこられるのはかなり大きいですね。

経営面

組織面の話と重複するところもありますが、今後会社を成長させていく上で外部人材の力を借りながら事業を伸ばす、という選択肢ができたことはかなり大きいことです。ちょうど中期経営計画の見直しをしていますが、今回の経験から、具体性を持った内容にできたと思っています。

事業創出を実現させた3つのポイント

ここまでお話頂いた、新規事業創出に向けた歩みの3つのポイントをおさらいします。

1つ目は、着実・堅実なロードマップの設計。2つ目は、知見を持つ方と共に歩むことによって、事業創出までの時間を大幅に短縮できた、という点。3つ目は、将来的に自社で自走していくためのノウハウが社内に蓄積してきた、という点が挙げられます。

株式会社ニーズの現在地と今後

ニーズの今後の目指す姿についてお聞かせください。

今回の新規事業への取り組みによって、37期目でようやく一般向けにナショナルブランドの製品がリリースできました。採算をとるのはこれからですが、1年でここまで来られたことはやはり大きな前進になりました。ただ、新規事業に取り組んでみたからこそ見える課題もありました。それは「人」の面です。社員の育成や外部人材の登用、研修強化も今後更に必要になります。そうした課題をクリアしていきながら、課題解決型のメーカーとして、ニーズならではの「ほしいモノを、ほしい時に、ほしい量だけ、ほしい場所に作りお届けする」というコンセプトを実現できる、唯一無二の企業を目指して進んでいきたいと考えています。   

新規事業の成功確率を上げるなら、JOB HUB 顧問コンサルティング

新規事業を立ち上げる際には、社内のノウハウや知見がないことが多く、模索をしながら進めることが大半です。だからこそ、壁にぶつかり、頓挫してしまうケースがございます。新規事業を多数ご経験されているプロフェッショナルであれば、成功だけでなく、失敗経験も多数お持ちです。企業がこれから陥る課題や悩みも実体験として保有されているため、予め予測をし回避することで、成功確率を上げることが可能です。

ぜひ、お悩みや課題がありましたら、「JOB HUB 顧問コンサルティング」へお問合せください。

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