SEMINAR

成功する新卒採用 ~ドラマ仕立ての採用法~

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登壇者

株式会社SVOLTA代表取締役社長 Yahoo!ニュース エキスパート 佐藤 裕 氏
パーソルホールディングス株式会社 グループ新卒採用統括責任者、キャリア教育支援プロジェクト責任者、
株式会社ベネッセi-キャリア特任研究員、関西学院大学フェロー、名城大学「Bridge」スーパーバイザー等を歴任。
現在は株式会社SVOLTA代表取締役社長、Yahoo!ニュース エキスパート、成城大学外部評価委員、
iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授、デジタルハリウッド大学非常勤講師を歴任。※2019年にはハーバード大学にて特別講義を実施している。
新刊「新しい就活」(河出書房新社)

レポート

社会要請やコロナ禍によるリモートの普及など変化が激しい昨今、これまでの手法では思うような採用ができず悩む企業様が増えています。そのような状況を企業、学生それぞれの視点で見てきた佐藤氏は、「新卒採用は、自社に合う学生の分析と、その学生の実情に合う採用ストーリーの構築が大切だ」と強調します。今回は、成功する新卒採用ストーリーと具体的な取り組みを、テレビドラマに例えてお話いただきました。

激戦の売り手市場。学生の意識変化

新卒採用市場のトレンド

2015年を境に新卒採用市場のあり方が変わりました。加えてコロナ禍により社会的に大きな変化が加わっています。特に注目したい動きは「売り手市場」の構造です。

企業側から、「PR活動をしても学生が集まらない」、「インターンシップに参加した学生が本選考に進まない」、「選考へ進んでも内定辞退されてしまう」といった話をよく耳にします。実際、24年卒の選考応募数は減少傾向がみられ、内定辞退者数は大手企業を中心に増加傾向がみられます。

一方で学生側は、就活への意識変化に加え、家庭、大学キャリアセンターなどフォローのあり方が変化していると佐藤氏は話します。

コロナ禍を乗り越え求人が増え始めた今、学生はエントリー先をかなり厳選しています。これには学内のキャリアセンターやOBの指導だけではなく、学外の就活支援ビジネスが増えている点も関係しています。学生がより多くの選択肢から選べる時代になったんですね。

加えて、オンライン就活とともに複数社との内定承諾が一般化したことも影響しています。学生と直接会うことなく内定を出す企業があることから、内定を掛け持ちし、内定式で社長や社員と会ってから入社を決める学生が出てきており、大学やサポーターも複数社の内定確保を是としてアドバイスする流れがあるのです。

この状況を企業側が理解し、内定者をフォロー・管理することが非常に重要になってきていると思います。(佐藤氏)

新卒採用市場、3つの変化

佐藤氏が挙げた3つの変化のなかでも、中途採用市場も人材確保が厳しく、新卒採用へシフトする企業が増えている点は、競争激化に拍車をかける要因と考えられます。

選ばれるためには、競合他社との棲み分けと、オンラインとリアルあるいは両方の活用も戦略設計における重要項目になるでしょう。

採用戦略は企業の方向性で個々に変わります。今回は戦略の全体像を捉えるために、実行支援(母集団形成、インターンシップ、説明会、面接、内定者フォロー)の各フェーズで押さえるべきポイントをお話いただきました。

採用活動、よく陥る落とし穴

それぞれのフェーズについて説明する前に、採用活動でありがちな企業と学生のズレを教えていただきました。

➀競合と似たようなインターンシップになってしまう

2016年以降、インターンシップは新卒採用で必須という状況になり、学生側も9割以上が参加する機会になりました。業界・企業理解を深め、学生に楽しんでもらうことを目的に構成を考える企業が多いと思います。

一方で、流行りのツールやトレンドを取り入れてしまうと、競合他社と被ってしまい印象が下がってしまいます。SNSで他社と同様の取り組みであることを拡散されてしまい、会社の評価が下がるケースも見受けられるため注意が必要です。

②説明会・座談会が公開情報の読み上げになってしまう

一昔前の会社説明会は、仕事内容や入社後の将来像をイメージしてもらう場でした。しかし現在、インターネット上には自社・競合のさまざまな情報があります。PR活動でSNSを含むコンテンツ配信を行っている場合、学生側が説明会前に十分な情報を得ていると理解していないと、学生がすでに知っている内容を繰り返し伝える場になってしまいます。

ドラマに見立てて考える採用戦略

月9ドラマで考える戦略の全体像

ドラマは通常、放送前の番組宣伝から視聴者とのコミュニケーションが始まります。CM、バラエティーでの番宣、オンラインコンテンツを駆使し、なるべく多くの視聴者へ第1話を観てもらうよう認知を広めます。そして、第1話で視聴者の心を掴んだ後は、各話ごとに感動し、心揺さぶられながら最終回を迎えます。

これらの流れを採用活動に置き換えたとき、「多くの企業は最初の番宣ができていない」と佐藤氏は話します。

※検討プロセスは多くあるため、第9話・10話と話数が移行しています。

インターンシップの告知をどこでするのか。どの大学で、どんな学生に伝えたいのか戦略的にPRするのが番宣です。大手就職サイトに情報掲載しても出会いたい学生と出会える時代ではありません。大手就職サイトを使わない学生も増えてきています。まず、自分たちが採用したい学生はどこにいるのか、何を伝えれば学生に響くのか考えなくてはいけません。(佐藤氏)

プロローグ:PR活動はペルソナ設計に沿った魅せ方でアピール

PRで考えるべきは、「業界に興味を持ち、自社を知らない学生」と「業界にも自社にも興味をもっていない学生」へのアプローチです。学生のペルソナ像を考えるときには、自社の競合を考えると良いと佐藤氏は話します。

「どの企業と採用活動がバッティングしていますか?」と質問すると、明確に応えられない企業様が多と思います。競合他社はどこで、どのような会社に負けているのか。この内容次第で、競合とは違う学生像が明らかになり、戦略の考え方が変わってきます。このようなペルソナ設定が大事だと考えています。(佐藤氏)

第一話:インターンシップは目的に沿った独自コンテンツで学生を引き込む

採用PRで期待を抱いた学生へ向けて、インターンシップで何を伝えるべきでしょうか。ここでは、戦略に基づいた目的の明確化と、独自性のあるコンテンツ設計が重要になります。また、インターンシップの第一印象は以降の採用活動にも影響しますし、ここで魅力を伝えられなければ離脱されてしまいます。

会社に魅力を感じてもらうのか、採用を前提に考えるのか。目的とペルソナ像が定まっていれば、それに沿ったコンテンツ設計が可能になると佐藤氏は話します。

インターンシップが会社の魅力を思いきり伝える場なのか、圧倒的な違和感を持たせて説明会に引き込むのか。この場の目的を明確にしたうえで、独自性の高いコンテンツ設計が重要になります。自社にしかない特徴を踏まえた情報、体験を提供できると、学生たちはその企業・業界に対し魅力づけができるんじゃないかと思います。

また、開催時期が春夏なのか、秋冬なのかによって、競合も学生も動きが変わってきます。時期ごとに違う学生の思いを捉えて、目的を決めるとよいでしょう。(佐藤氏)

第二話以降:学生の心にアプローチする説明会・座談会

学生は、ネットで得られる説明ではなく、そこでしか得られない情報・体験を求めています。ここで使える心理テクニックを佐藤氏にご紹介いただきました。

例えば食事に誘うとき、「何か食べたいものはありますか?」と聞くよりも、相手の好物を予めリサーチしておいて「オムライス食べに行きませんか?」と切り出すほうが、心理的に距離が縮まりますよね。学生も同じで、自分のことを分かってくれる企業に親近感を感じます。

説明会でも同様に、学生がこの場で知りたいことをリサーチし冒頭に持ってくると印象強くなるでしょう。このとき、若手社員へ接点を持っておくのもポイントです。(佐藤氏)

第九話:学生と対話し成長を促す面接

※検討プロセスは多くあるため、第9話・10話と話数が移行しています。
社会人との接点が少ない学生たちに向けた面接では、学生の考えを引き出す切り口に工夫が必要です。かつ、一次面接と最終面接では展開が異なります。ドラマの場面展開のように、各フェーズに合ったストーリーを汲むことで、学生が受け取る印象も変わるでしょう。そのような学生の様子から、評価の仕方、内容も変える必要があります。

第十話:クロージングは学生自ら決める

※検討プロセスは多くあるため、第9話・10話と話数が移行しています。
以前は、企業側が入社の回答期限を決めて学生に圧をかけることも珍しくありませんでした。今の学生にこの感覚は通用しません。学生は、インターンから面接、回答に至るコミュニケーションを他社と比較し、キャリアイメージを膨らませています。すべてのフェーズでクロージングを意識し、学生が自発的に入社を決めるストーリー展開を作ることができれば、辞退はしなくなります。

一方で、学生の周りにいる人にも注目すべきです。親族、恋人、先輩、学校のキャリア支援、教授など、誰に相談し、どのような意思決定をしているか踏まえて寄り添うことも必要だと佐藤氏は強調します。では、具体的にどのようにして、背景要素を掴むべきでしょうか。

採用戦略で描いたストーリーに沿って、面接の中で学生がどのような人生を歩み、選択をしてきたか汲み取ることが重要だと思います。実際に対面で話したときの温度感を含めて把握しなければならないため、面接官のスキルも重要な要素になりますね。(佐藤氏)

最終話:入社へ向けたフォローと関係づくり

採用活動の出会いからストーリーを共に体感し、自ら入社を決意した学生たちですが、内定で終わりではありません。企業は、彼らの同級生との付き合い方や情報収集の仕方がコロナ禍前と異なる点を踏まえたうえで、目的に沿ったフォローを考えなければいけません。

企業の内定時期が早まった分、入社までの期間が長くなる傾向があります。彼らが社会へ出たときに困らないよう、足りないことを補足する基礎講座などを入社前トレーニングに取り入れると良いでしょう。お互いプラスになる体験が、入社前の離脱防止だけでなく、一人前の社会人として良いスタートダッシュを切る土台になる点でも非常に重要なフェーズです。

事例紹介

この採用戦略ストーリーを活用した事例をご紹介いただきました。

この企業の課題は採用担当の異動が多く、その時流行ったツール(YouTube、TikTokなど)や手法を継ぎ足してきたために、施策ごとのつながりがなく、採用戦略に軸がない点にありました。

そこで、佐藤氏が採用戦略ストーリーを作る際に踏まえたポイントはこちらです。

  • インターンシップから面接にかけて、採用ストーリーを作り込んだ
  • 社内のハイパフォーマーとローパフォーマーからヒアリングし、ペルソナ像を作り込む
  • 採用ツールの利用停止
  • インターンシップの外注停止・内製化
  • インターンシップ参加者から入社にかけてKPIを策定

バラバラになっていた各フェーズをまとめ、高い解像度でストーリーを作り込めば、一貫した採用活動ができます。この企業様も、PRでその企業を見つけることができれば、以降はドラマを見るように最終フェーズまで足を運び、評価し、内定承諾するストーリーを作り込むことができたと思っています。

単純に内製化だけが良かったのではありません。社内を客観視しながら、学生・大学を取り巻く外部情報を持つ人の存在が鍵になります。ときには社外の力を借り、全体設計をするのも必要だと思います。(佐藤氏)

まとめ

コロナ禍を乗り越えた学生たちと、保護者、大学、社会それぞれの変化により、学生の実情を正確に捉えた採用戦略ストーリーが必要だとよくわかりました。学生の価値観に踏み込むリサーチ力と、自社に必要な人材像を明確にする客観的な分析力と戦略設計は、実現に課題がある企業様が多いと思います。佐藤氏をはじめ外部支援を利用しながら、自社だけの採用戦略を描けるかどうかが、今後の採用を左右する要素であることは間違いないのではないでしょうか。

新卒採用のお悩みには「JOB HUB 顧問コンサルティング」にご相談ください。

ご覧いただいた通り、現在の新卒採用における環境は以前と比較すると激変しています。売手市場が進むことで、学生の就活への意識変化や家庭、大学のキャリアセンターも大きく変化しています。

複数社での内定獲得が一般化された今、どう一企業としての魅力をコミュニケーションを通し伝えていくかが非常に重要になってきています。とはいえ、自社だからこそ、自社の魅力がわからない、どのように伝えていくかのフローを設計できない、など悩みもよくお伺いします。

そこで、プロフェッショナル人材が、採用戦略から、コミュニケーション設計、運用面を先導し進めることで、一貫した魅力を伝えることができ、成功確率の向上を目指すことが可能です。また、伴走をいただくため、社内にノウハウが残り、中長期的な目線での新卒採用における体系化もすることが可能です。
新卒採用でお悩みの方がいらっしゃれば、ぜひご相談ください。
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