SEMINAR

生成AIをどう活かすか ~休眠資産を価値に変えるデータ活用~

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登壇者

BRAIN SIGNAL式会社 代表取締役社長兼CEO 米川 孝宏 氏
2002年、AI・機械学習を使った人間の能力評価システム開発で教育工学(EdTech)の博士号(工学)を 取得。
ICTシステム会社(HUBネットワークス株式会社、当時)を設立し、15年にわたって大企業や中小企業向けのCRM、
SFAプロダクトのコンセプト企画、設計、開発の全てに携わる。起業メンバとして参画した国内のIT/AI企業を上場。
2017年にBRAIN SIGNAL社を設立し、システムプラットフォーム開発とAIコンサルティング、データサイエンス、データ分析をワンストップで支援。
企業向けAIセミナー講師、日露経済協力のAI企業代表としてロシアを訪問、など多岐にわたり活動。
AI関連国際会議での論文発表、研究活動とビジネスでのプラクティスの両輪で、キャリアを形成。2019年からは昭和女子大学の非常勤講師にも着任。

レポート

ChatGPTなど生成AIの進化はすさまじく、日々新しい製品・サービスが発表されています。企業の生産性・品質向上への期待が高まる一方、AIを導入した国内企業は約13%程度にとどまるのが現状です。汎用性が高い技術ゆえに具体的な活用イメージが描きづらく、導入にハードルを感じる企業は多いのではないでしょうか。そこで、AI・機械学習による人の能力評価システム開発に携わり、企業のプロダクト企画開発にも詳しい米川氏から、生成AIの導入と活用事例をお話いただきました。

生成AIソリューションの需要が高まる背景

調査によると、生成AIの需要は大きく成長することが予測されています。2030年には、国内の生成AI需要が年平均47.2%増と見込まれており、私たちの生活にさまざまな形で浸透すると考えられています。

ただ、生成AIを導入した国内企業はまだ少数です。国内のデータサイエンティストの絶対数も少ないことから、検討段階の企業が多いと考えられます。

生成AI導入の落とし穴

AI(人工知能)自体は1950年代から存在する概念です。なかでも生成AIは、これまでの非生成AIが行う学習による分類、認識、判定、異常値検出、情報抽出、予測に加え、高度なパターン認識によるデータ生成ができます。テキスト、画像、音声、動画など、あらゆるデータを対象にできるほか、AI自らデータを生み出せる点で注目されているのです。

生成AI導入における3つの悩み

これまで数多くの生成AI導入支援を行った米川氏によると、各社に共通する悩みは「生成AIへの理解不足」に原因があります。その悩みをさらに掘り下げると、3つの傾向がみられます。

①全体像の明確化ができない

生成AIができること、できないことがわからず、目的を定められない。プロジェクトの全体像(何を・いつまでに・どこまで実現したいのか)を描けない

AIを検討したいが、そもそも何が実現できるかが分からず、中々着手までできていない。各種ベンダーに可能なことを相談しているが、弊社内で実現したいことがピンときていない。(米川氏のクライアントA社)

②想定とのギャップがある

生成AIができることの想定と現実にギャップがあり、要求を満たせず、社内データとの接続もできない。あるいは、生成や分析の元になるデータが存在しない。

AIを活用し需要予測をしたいが、実現するためのデータが管理システムごとで異なるために散乱してしまい、データの接続と活用が進まない。仕様が違うシステム同士からのデータ抽出も難航している。(米川氏のクライアントB社)

③実現可能性がわからない

生成AIが目的に沿った課題解決をできるのかわからず、具体的な仕様設計ができない。それにより、ベンダーへの依頼もできない。

目的を決めPJTを進めていくため、ベンダーとの折衝を重ねているが、これがベストの選択肢なのか、判断できず進捗しない。また、価格や機能の妥当性もわからず、フィットするかがわからない。(米川氏のクライアントC社)

生成AI導入が失敗する5項目

さらに、プロジェクトが失敗してしまう共通項を5つご紹介いただきました。

【A】AI先行型
AI導入が目的化しており、具体的な構想や実務想定がない。

【B】AIへの妄想
生成AIへの理解不足から、不可能なことを可能だと過信してしまう。検討範囲が大きく、元データの精度が低い。

【C】コスト削減
本来必要なコストを正確に計算せず、コントロールできていない。人件費を削減してしまう。運用費を想定せず、代替する仕事の妥当性がない。

【D】限定的な把握
社内の情報把握が限定的で、限られた部署しか理解していない。現場の声が反映されていない。想定が現場業務と乖離してしまっている。

【E】早期成果の期待
AIはトライアンドエラーが前提にあり、はじめから100%の成果を得ることは不可能。インプット時間の考慮や、KPIのずれが発生。計画なしの導入をしてしまう。

実際、生成AI関連のお問い合わせで上記のようなお悩みをよく耳にします。具体的な事例や生成AIに触れてみる経験は、導入を考える上で大切な要素と言えそうです。

事例でわかる、生成AI導入における成功のポイント

生成AI導入は、目的によって活用する技術や導入方法が変わります。ここでは、米川氏が実際に携わったプロジェクトの背景、支援内容、結果をもとに、生成AI導入のポイントをご紹介します。

(1)大手コールセンターの従業員トレーニングツールを開発

これは、従業員1500名の大手コールセンターで収集されたデータから、大規模言語モデルの活用場面を洗い出したいというご相談から始まった事例です。ご相談の時点では、オペレーション対応の履歴がデータとして蓄積されていたものの、分析までされていませんでした。
そこで、生成AIと自然言語処理技術を使って解決できる課題を洗い出し、解決の優先付けを行いました。

AIと一言で表しても様々な技術があるため、どの場面で何の技術を使うのか検討が必要です。そのための現状把握から優先付けを3〜4ヶ月かけて行い、その後の支援を含む期間はトータルで1年ほどでした。

課題の優先付けは、生成AIの知識だけでなく、市場や経営への理解なども関係する非常に難しいフェーズです。ここに時間を要するプロジェクトもあります。

これほどのスピード感で進行できた背景には、米川氏自らプロトタイプを実装し、早い段階でクライアントと生成AIが解決可能な範囲と実装イメージを共有できた点が強く影響しています。
「生成AIはすごいもの」という漠然とした印象に対し、生成AIへの理解と課題の切り分けを明確にすることが、導入時のポイントのひとつです。

プロトタイプによって具体的な動きが見えると、より詳細な検討に入ることができます。紙に描いただけではわかりづらいと思うので、実際に動く様子を早い段階で体験していただく工夫はいつも心がけています。並行して社内データを収集・仕分けしながら、AIが実現可能な活用方法を明確にしたことで、次の段階に行きやすくなったと思います。(米川氏)

(2)リサイクル品の画像認識システムの精度向上

この企業は、リサイクル品の画像をもとに見積もりを自動算出できるスマートフォンアプリを持つほど、高い技術とAIへの理解がありました。さらなる画像認識の精度向上と、担当者ごとの見積額のばらつきをなくす見積もりシステムの開発でご相談いただいた事例です。

既存アプリーケーションも、理解あるエンジニアもいらっしゃる状況だったため、プロトタイプを作成し既存システムとの連結方法を一緒に検討しながら実装しました。生成AIで一定の精度を達成するにはデータ量が必要です。データ量が少ないと、思うような結果を出すことができません。

そこで、今回の事例では本物に近いデータを生成AIで生成し、本物に近いデータで画像判別をトレーニングした結果、十分な精度を達成できました。

この事例では、AI部分を一部外注しており、AIシステムの詳細が分からない箇所があるという課題がありました。そこで、米川氏が生成AIの技術をご紹介しながら、課題解決の優先順位に沿って支援を行いました。

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他のAI活用事例については、下記の資料でまとめております。
ご興味があられる方は、ぜひダウンロードください。
▼AI活用に関する事例のダウンロードはこちらから

ご紹介した2事例に加え、こちらの2事例を含んでいます。
➀不動産賃貸業における非定型データの活用
②お問い合わせAIチャットボットによるCS負担減

自社内のAI・生成AI活用、導入のご参考にしていただますと幸いです。
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成功の共通項:専門的知見で、早く着実な意思決定を

生成AIは分野の幅が広く、独自で行うには情報収集や試行錯誤の時間がかかります。AIやデータサイエンスの専門家を活用し、プロジェクトの全体像を俯瞰できれば、速く着実な遂行が可能になります。

生成AIは導入までいろいろなハードルがあるかと思います。どこから手をつけたらいいのか、時間がかかってしまうとか、社内調整が難しいといったことですね。そのような背景のもとAIやデータサイエンスの知見者を活用するメリットは、全体を俯瞰したうえで着実な課題解決ができ、効果・評価まできちんと出せる点にあるのではないかと思います。(米川氏)

生成AI導入は、AIへの理解・目的の明確化・事業の把握が鍵

生成AIの導入を進める流れは、①生成AIの理解と目的の明確化、②テーマ検討以降の2つにわけることができます。

①AIへの理解・目的明確化のポイント

  • AIの実現性や限界を知る。
  • 活用事例から自社での実践方法を模索する。
  • トップ意思と導入理由の明確化をする。
  • データを活かし期待効果を検討する。

まず最低限必要な基本知識は持たなければ判断ができません。そして、自社の経営方針や経営層との意思疎通で「導入する目的」を初期段階に押さえておく必要があります。

②テーマ検討から開発・運用のポイント

  • データの資産を知る。
  • 資産がどこに何があるかを把握する。
  • 量や質の適正値を知る。
  • 検証することを前提にする。

選んだテーマによって、様々な観点があります。現状把握しながらテーマを決めた後、やりたいことを実現するためのデータ量や内容は一般論がありません。その点も、検討と検証を重ねながら進めます。

これまでのシステム開発とは違い、「テストで100%合格したら完成」というものではなく、目標値に向かって実現したことに目を向ける感覚がなければ難しいところがあるかと思います。(米川氏)

AIで可能になる4つのこと

業務改善、効率化だけでなく、ビジネスチャンスを生み出す意思決定にも活用できるAIの可能性は、活用する人次第で大きく広がります。まずは理解を深めてみてはいかがでしょうか。

まとめ

業界を越えて様々な情報が飛び交う生成AIですが、いざ自社の事業を考えると活用イメージが浮かびづらいもの。米川氏のお話から、まずは基本知識と体験が大切だと痛感しました。自社に眠るデータを宝に変えるかもしれない生成AIの活用は、ぜひ早い段階から検討しておきたいものです。

生成AIの導入・活用なら、JOB HUB 顧問コンサルティングへ

AIや生成AIの導入はChatGPTの流れを機に加速度的に進んで参りました。
ですが、アイディア出しや知識を問うような一般的な活用に留まり、業務改善や事業開発までの本質的な導入には未だ至っていない状況です。
それには、AIや生成AIが「どんなことまでできるのか」「自社で活用した際のイメージや方法」「乱立したツール類の妥当性判断」などを想定することが難しいことが挙げられます。
とはいえ、AIを導入することは、現在の社会構造や市場全体から鑑みても重要なことだと考えておられるかと存じます。未知のものを導入する、活用することは非常に難易度が高くございます。
そこで、AI領域に精通するプロフェッショナルがプロジェクトベースで関わることで、全体の青写真の構想やプロジェクトの推進、運用がスピーディーかつスムーズに進み始めます。
ぜひ、何かお困りのことがありましたら、JOB HUB 顧問コンサルティング までご相談くださいませ。

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