多様な働き方が広まってきた日本では、非正規社員の数は約2,100万人。日本の労働人口の約40%を構成しています。自分のライフスタイルに合わせ、フレキシブルに働き方を変化させている日本人の様子が伺えます。今回は、さまざまな雇用形態と業務委託について、主な種類や問題点を見ていきます。
目次
日本人の働き方の変化に合わせて、さまざまな雇用形態が存在するようになりました。厚生労働省は7つの雇用形態をホームページで紹介しています。雇用形態によって適用される法律が異なるため、注意が必要です。
労働者派遣は、労働者が人材派遣会社(派遣元)と労働契約を結び、人材派遣会社が契約をしている派遣先に労働者を派遣するという雇用形態です。このとき、労働者は派遣先の指揮命令を受けます。労働者に対して給与を払う会社と実際に現場で指揮命令をする会社が異なることから、労働者派遣法によって細かくルールが決められています。派遣労働者の法律上の雇い主は人材派遣会社です。派遣先においての何らかの問題や、事故が発生した場合には、雇い主である人材派遣会社が責任者となってトラブルの対処をしなければなりません。しかし現実問題として、派遣先で指揮命令をしている会社に全く責任がないというのは妥当ではありません。労働者派遣法には、派遣元と派遣先がともに責任を分担するべきであるという事項が存在します。
企業等と雇用契約を結ぶ際にあらかじめ雇用期間を定められた社員を指します。雇用期間は企業等と労働者の間で契約時に決定されます。1回あたりの契約期間の上限は一定の場合を除いて3年間で、契約で決められた雇用期間が満了すると、労働契約は自動的に終了します。
パートタイム労働者は、パートタイム労働法における「短時間労働者」のことで、正社員に比べ労働時間が短い労働者です。いわゆるパートやアルバイトといった形態で働くことを指します。パートタイム労働者を雇い入れる際には、パートタイム労働法によって昇給・退職手当・賞与の有無についての明示が義務付けられています。
短時間正社員は、フルタイムの正社員に比べ、労働時間が短いにもかかわらず、基本給や賞与はフルタイムの正社員と同等の水準である労働者です。雇用期間に制限もありません。優秀な人材の確保やコスト削減の実現を目指せるなど、企業にとってのメリットが多い雇用形態です。
業務委託によって仕事を受注し、仕事が完了したことに対して報酬が支払われる人のことです。事業主として扱われ、指揮命令を受けることはなく、基本的には「労働者」としての保護を受けることはできません。しかし、業務内容や働き方の実態から「労働者」であると判断されれば、労働法規の保護を受けられる場合があります。
家内労働者とは、業務委託によって物品の加工や製造を個人で行う人のことです。事業主として扱われますが、家内労働法によって規則が定められています。委託者は、家内労働手帳の交付や最低工賃の順守といった対応を求められます。
在宅ワーカーとは、業務委託の形態で仕事を請け負い、パソコン等を使用してホームページの作成や印刷物のデザイン、ウェブ記事のライティングなどを個人で行う人のことです。
さまざまな働き方があるなかで、「業務委託」とは具体的にどのような形態を指すのでしょうか。「派遣」との違いも含め、見てきましょう。
「業務委託」は、企業などと雇用契約を結ばず、事業主が仕事を受注する契約形態です。主に「請負契約」と「委任/準委任契約」の2種類があります。
請負契約は成果物に対して報酬が支払われる契約です。業務を受注した者は成果物の完成責任を負います(民法第632条「労働の結果として仕事の完成を目的とする」)。成果物が納品されない、成果物に不備があるようなことがあると責任を問われます。印刷物のデザイン、ウェブ記事のライティングといった仕事がこれに当たります。
委任/準委任契約は、特定の業務を遂行することによって報酬を受けますが、成果物を完成させる責任は負いません。法律行為を行う場合は「委任」、それ以外の業務は「準委任」と、行う業務によって変わります。例えば弁護士が行う業務は「委任」となり、企業サイトの保守管理などの仕事は「準委任」とされます。
「派遣」は、人材派遣会社と労働者との間で雇用契約を結ぶ雇用形態です。派遣先と労働者の間で指揮命令関係があるなかで労働を行いますが、成果物の完成責任は負いません。
さまざまな雇用形態が広く普及するに伴って、雇用契約について社会問題化しているものがあります。例えば正規雇用、非正規雇用に関しては、仕事内容に大差はないのに給与に大きな格差が生じるという問題があります。2018年の「賃金構造基本統計調査」によれば、正社員の平均給与は323,900円であるのに対し、非正規社員は209,400円。その差額は114,500円です。正社員は労働時間が長く、転勤などの可能性があるとはいえ、明らかな賃金格差が存在していることがわかります。このような問題に対し政府は、働き方改革関連法に基づいて、同一労働同一賃金という原則で、格差を是正しようとしています。
非正規社員の雇用保険に関しても問題があります。1週間の所定労働時間が20時間以上の場合は、会社は労働者を雇用保険に加入させる必要があるにもかかわらず、会社によっては意図的に加入を怠ることもあり、そのようなケースが問題になっています。
業務委託に関しては「偽装請負」という問題があります。契約上は請負・委託として結ばれているにもかかわらず、仕事の実態としては労働者派遣になっているケースです。偽装請負が発生すると、仕事の注文主が労働者に指揮命令関係を強いているにもかかわらず、労働基準法に基づく労働者の保護は行われないという状況になります。労働者に命令する権利は欲しいが、労働者を保護する義務は負いたくないという悪質な考え方が、偽装請負の裏にはあります。もちろん、偽装請負は労働者派遣法に抵触する違法行為です。
雇用関連で適用される法律や労働者が負う責任は、雇用形態や契約内容などによって異なります。ビジネスにおいてトラブルを未然に防ぐには、労働関係の法律を熟知しておく必要があります。雇用形態や契約内容をしっかりと確認し、企業と労働者が良好な関係を保てるようにしましょう。
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