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戦略人事とは?成功のために人事に求められる役割や、企業が直面する課題と解決策について

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戦略人事とは、人的リソースを有効活用したうえで、企業戦略を実現すべく「人事」が担う役割のことです。戦略人事が適切に機能すると、企業経営も軌道にのりやすくなるため、多くの組織から注目を集めています。しかし、概要や実践方法が明確に定められた資料が少ないことから、詳細がわからずに悩む人も多いのではないでしょうか。

そこで当記事では、戦略人事に対する担当者の役割をはじめ、実施時に直面する課題や解決策・実行手順などを解説します。戦略人事について見識を深め、企業経営を適切にすすめたいと考える方は、ぜひ参考にしてください。

戦略人事とは?注目される背景について

人事

戦略人事とは、人材を主軸とし、戦略的に企業経営を実践する人事の役目を指します。戦略人事制度の発端は、アメリカの経済学者「デイビッド・ウルリッチ氏」によって提唱された「Human Resource Champions」と称する人材戦略の研究内容です。その研究では人材戦略に、「HRBP」「CoE」「OD・TD」「OPs」といった4つの役割を定め、人事は4つのすべてを戦略的に担う必要があると定めました。次の章にて詳しく解説いたします。

以前の日本では、人事に戦略的な内容を求めていなかったものの、デイビッド・ウルリッチ氏の研究を契機とし、「人事にも戦略的要素が必要」という考えがうまれます。そのため、外資系企業を中心に「戦略的人事に関する考え」が導入され、一般企業にも「戦略人事」の考えが広まっています。

また、昨今では、IT技術の進化やグローバル化の浸透によって、市場が「過去とは比較にならない」速度で成熟しています。変遷が激しい時代下において、企業が立ち位置を確保しながら生き残るには、迅速かつ的確な判断が必要です。そのためには、経営者だけにとどまらず、人事部門も戦略的な経営方法を理解する必要があります。人事部門も戦略的な行動を実践できれば、経営層と現場との円滑なコミュニケーションにおける「橋渡し役」にもなるでしょう。

今後においても、取り巻く環境は絶えず変化する見通しです。スピード感をもって柔軟な対応が求められる昨今において、戦略人事という人事部門の在り方も、引き続き注目を集めるでしょう。

人事戦略との違い

戦略人事は、しばしば「人事戦略」と混同されます。戦略人事は、経営戦略における「人的リソース」に的を絞った考え方です。一方で人事戦略は、人事計画や日々の人事業務について、戦略的に行う考え方を指します。

以下に、戦略人事と人事戦略の違いをまとめました。

~戦略人事の例~

  • 他社との優位性を構築すべく、教育プログラムを策定する
  • 経営戦略に長けた人材を採用する

~人事戦略の例~

  • 人事業務の効率化に向けてシステムを導入する
  • 人材獲得に向けて適切な採用方法を選ぶ
  • 業績拡大に向けて評価制度を整備する

戦略人事を実施するために必要な4つの機能・役割

ウルリッチ氏が提唱した「戦略人事」に必要な4つの機能を詳しく見ていきましょう。

HRBP:HRビジネスパートナー

HRBP(HRビジネスパートナー)とは、HR(人的資源)を有効活用しながら、戦略人事を行うリーダーのことです。いわば、戦略人事をまとめる責任者だと言えます。

戦略人事を実行するには、経営トップの考えを理解したうえで、現場のニーズを反映させた然るべき方法の策定が不可欠です。HRBPが経営層と現場の状況を把握し、的確なアドバイスや施策を講じることで、戦略人事を適切に実行できるでしょう。経営層と現場という立場の違う人と渡り合うHRBPには、「適切にコミュニケーションをとる能力」も求められます。

CoE:センター・オブ・エクセレンス

CoE(センター・オブ・エクセレンス)とは、戦略人事の実現に必要とされるスキル・ノウハウなどを保持した「プロ集団」のことです。他社との優位性や経営戦略を重視する「戦略人事」において、実際に行動を起こすメンバーは、経営者の考えを理解するのはもとより、現場の視点も兼ね備える必要があります。

広い視点で物事を推しすすめるには、戦略人事を実行できる能力が不可欠。戦略人事にふさわしいメンバーを集め、集団として配置することで、戦略人事のクオリティーを維持し、実現までの速度もはやめられるでしょう。

OD・TD:組織開発・人材開発

OD・TDとは、それぞれ組織開発(=OD)と人材開発(=TD)を意味します。適切な責任者とプロ集団が存在しても、戦略人事を実現するための仕組みが存在しなければ、人材を有効に活用できないでしょう。そのため、組織開発(=OD)と人材開発(=TD)は、両者ともに戦略人事を適切に実行するうえで欠かせない仕組みだと言えるでしょう。

組織開発(OD)では、組織が円滑に機能するよう、適切な配置や人材のモチベーション管理などを行います。人材開発(TD)では、各自の能力を最大限に活用すべく、教育プログラムの準備や資格取得に向けた育成などを実施します。

OPs:オペレーション部門

OPsとはオペレーション部門のことであり、HRBPおよびCoEメンバーが日々実践する内容を、スムーズに進行させます。具体的な内容を挙げると、以下の通りです。

~OPsの具体例~

  • 給与計算
  • 社会保険の手続き
  • 勤怠手続き
  • 異動の管理
  • 各種マニュアルの作成

上記の内容は、戦略人事部門のメンバーに対しても必要な内容です。各種オペレーションに滞りがあれば、HRBPやCoEは、本来の業務に力を注げなくなる可能性があります。オペレーション内容も適切に機能させることで、戦略人事を円滑に実施できるでしょう。

戦略人事を実行する手順

戦略人事の実行

戦略人事を実行する際には、適切な手順を踏むことが大切です。以下に、戦略人事を実行する基本的な手順および、各ステップの内容について解説します。

1、経営戦略・企業理念の理解を深める

戦略人事は、企業戦略を実現することが目的であるため、企業の「経営戦略」や「企業理念」への理解が不可欠です。企業理念は会社の存在意義や価値観を示しており、企業が「何を達成したいのか」を把握できる要素だと言えます。経営戦略は、企業理念を達成するための「計画」や「方針」を指します。

つまり、企業理念が目的であり、経営戦略が企業理念を達成する方法だといえます。そのため、経営戦略と企業理念への理解が深まれば、目的と目標達成への大まかな道筋が把握できるでしょう。また経営戦略と企業理念への理解を深めることで、経営における課題や改善案が見えやすく、一貫した戦略人事の実施につながります。

2、目標達成に向けて必要な人材像を確認

経営戦略にもとづき、目標を達成するために必要な社員像を把握します。まずは、目標達成の実現に欠かせない「スキル」や「経験」などを精査し、理想的な人材像を抽出することが大切です。理想の人材像を抽出するには、自社の働き方や社風も考慮に入れるなど、定性的な要素も視野に入れます。必要なスキル・経験を保持しても、自社カルチャーに適さなければ、能力を最大限に発揮できない可能性があるからです。「スキルなどの定量面」と「自社との相性といった定性面」の合致する人材が、理想的だと言えます。

とはいえ、理想的な人材が存在しても、必要な人数を満たさなければ、なかなか目標の達成にはつながりません。そのため、目標達成の実現に必要な人数も検討するとよいでしょう。

3、将来必要な人材の数やスキルを分析し、計画に反映する

現段階の状況にとどまらず、中長期的に「必要な人物像」が「何名必要なのか?」を予測することも大切です。中長期的な部分から必要な人材と人数を逆算できれば、計画的かつコンスタントな採用にも直結します。また早い段階から必要人材を明確にし、人材確保に向けた動きをとることは、経営戦略および戦略人事を適切に行ううえで、重要な取り組みだと言えるでしょう。

そのためには、将来的に必要な人材の詳細(人数やスキルなど)について、経営計画に盛り込むことが大切です。経営計画に必要人材の情報をリンクさせれば、人材配置や適切な教育プログラムの準備もスムーズに実施できるでしょう。

4、採用活動や人材育成に関する計画を策定

一般的な採用や育成と同様に、戦略人事においても、採用活動や人材育成に関する計画を策定することは重要です。戦略人事および経営戦略を実現するには、スケジュール通りに計画をこなすべく、計画を実行する人材が不可欠だからです。適切な計画が用意できていたにもかかわらず、人材不足で着手が遅れてしまえば、機会損失にもつながりかねません。

また昨今は、少子高齢化による慢性的な人手不足であるため、業種やポジションを問わず、人材の確保に苦戦する企業も多く見受けられます。慢性的な人手不足という側面から見ても、採用活動や人材育成に関する計画を策定することは、重要な意味をもつでしょう。

戦略人事の導入が難しい理由

戦略人事の導入に苦戦

迅速な経営戦略を実現するうえでも欠かすことのできない要素の1つである戦略人事。しかし、多くの企業で実際にどの程度、戦略人事が導入されているかといえば、思ったほど進んでいないというのが現状ではないでしょうか。その理由としては次のようなことが考えられます。

経営層が人事の重要性を理解していない

戦略人事は、経営層が人事を経営のパートナーであることを認識することで初めて成立します。そのため戦略人事の導入を検討したとしても、経営層が人事の重要性を理解せず、人事からの意見や提言を受け入れられないようでは、実際に導入するには至りません。

経営戦略が明確でない

経営層が人事の重要性を理解していないのと同様に根本的な問題ですが、企業としての戦略が明確でなければ、人材に関する戦略を立てることはできません。また、頻繁に戦略が変わってしまう企業も、人事として対応ができず、導入は困難になるでしょう。

人事部が経営戦略を理解していない

これまでとは逆に、経営層は戦略人事の重要性や、それを実現させるための人事の重要性も理解しているけれど、人事部が経営戦略を理解していないケースです。従来の人事部の役割を果たすことに意識が集中してしまい、経営層のパートナーになるという意識がないと、経営戦略は成立しません。

ここまで、3つの理由を見てきましたが、この3つに共通しているのは、これまでにない新しい戦略を導入するという変革をうまく受け入れられていない点です。そのため、仮に戦略人事を導入したとしても、意識が従来のままであるため、うまく機能しないのです。

戦略人事を受け入れにくい要因としては、

  • 場合によっては成果が出るまでに数年かかってしまう
  • 人材戦略が数字として効果が出ているかどうかの検証が難しい

などが挙げられます。

例えば、マーケティングや営業は数字で成果を示すことができるうえ、短期間で成果を出すことも可能ですが、財務や総務といった部署では成果を数字で表現することが困難です。しかし、戦略人事では、そうした部署への人材配置も含まれるため、特に経営層は数字が出にくい施策に対する変革に対して二の足を踏んでしまうのではないかと推測されます。

戦略人事の実現に向けて、人事組織(人事部)に求められること

人事,人事部

前述の通り、戦略人事の導入が難しい理由として「経営層が重要性を把握していない」「経営戦略が不明確」「人事部が経営戦略を理解していない」といった内容が挙げられます。戦略人事を実現するには、導入のハードルを高めている課題をクリアする必要があります。課題をクリアし、戦略人事の運用を効果的にすすめるには、人事組織(人事部)に対して、以下のような資質が求められます。

  • 人事に携わるプロとしての秀逸な知識・経験
  • 経営層と現場スタッフとの対話を通じ、課題解決に向けた推進力を保持
  • 経営や事業戦略の分野に精通する
  • コミュニケーション力・マネジメント力・問題解決に関する知識を保持
  • 上記の知識を、場面に応じて柔軟に応用できる

知識や経験は自然と身につきやすいものの、「推進力」「コミュニケーション力」「問題解決能力」は、意識して向上させる必要があります。

推進力を高めるには、責任のある仕事を担い、失敗した際の対処方法も複数考えることが大切です。また、自己学習や勉強会への積極的な参加も欠かせないでしょう。

コミュニケーション能力を高めるには、相手の意見を傾聴する姿勢が不可欠です。意見の相違が発生した場合には、適切な落としどころを探します。

問題解決能力を高める場合には、問題と現状のギャップを埋めるべく、「問題の本質を見極める→問題解決の方法を立案→解決方法を実行」の流れですすめることが大切です。一連の流れを繰り返すうちに、問題解決能力が磨かれていくでしょう。

戦略人事に課題がある企業はプロ人材を導入する選択肢も

適切な戦略人事の設置・運用を実現するには、複雑かつ難解な側面があります。また大前提として、戦略人事を遂行するメンバーには、「深い知識」「豊富な経験」「高度な推進力」などが求められます。とはいえ、こうしたスキルは誰もが持ち合わせるものではありません。また習得を試みても、一夜にして身につけることは非常に困難です。

戦略人事を実践するうえで、社内のリソースでのみでは対応できない場合には、プロ人材の導入も選択肢に入れることをオススメします。戦略人事に長けた専門家を導入すれば、迅速かつ効率的に戦略人事を推進できるでしょう。

貴社の戦略人事を実行フェーズまで支援し、解決に導きます

戦略人事が実現すると、市場の成熟速度が速い時代下においても、他社との優位性を確立させながら戦略的に経営を進められます。目まぐるしく環境が変化する昨今において、戦略人事は多くの企業に必要だと言えるでしょう。

しかし戦略人事の実現には、高い知見が必要であり、制度構築後のスムーズな運用も必要です。社内のリソース不足で戦略人事にハードルが存在する場合には、外部のプロフェッショナル人材の活用を検討するとよいでしょう。

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