COLUMN
  • TOP
  • コラム
  • コラム一覧
  • MBO(目標管理制度)とは?導入のメリットや評価制度構築の支援サービスをご紹介
組織人事課題

MBO(目標管理制度)とは?導入のメリットや評価制度構築の支援サービスをご紹介

シェアする

MBOは、P.F.ドラッカーが提唱した人事評価制度のひとつです。多くの企業で導入されていることから、自社に導入した場合の効果が気になる方もいらっしゃるでしょう。この記事ではMBOが注目されるようになった背景をはじめ、MBO評価制度の基本的な仕組みやメリットデメリット、MBOを実施する際のステップについて紹介します。

実際にMBOを運用する際に生じやすい課題とその解決法についても紹介しているため、MBO評価制度の導入を検討している方はもちろん、組織文化の醸成や従業員の生産性を高めたい方や効率的な人材育成の方法を準備したい方もぜひ参考にしてください。

MBOとは?

MBO(目標管理制度:Management by Objectives)とは、個人またはグループごとに目標を定め、設定した目標に対する達成度合いで人事評価を行う制度です。1954年に経営学者のP.F.ドラッカーが、組織マネジメントの方法として提唱しました。

MBOで設定する目標は、5つのポイントを踏まえて作成します。

  • 目標が具体的
  • 目標難易度が適正
  • 目標達成までの時間軸の明示
  • 目標を達成するための方法を明記
  • 企業や組織の目標との関連させる

MBOにおける目標管理の例

  • (IT部門)社内システムのクラウド移行とデータセンターの冷却システム改善を図り、2024年までに、システムダウンタイムを月平均8時間から2時間に削減する
  • (人事部門)従業員向けのエンゲージメントイベントとして、年間表彰式や四半期ごとのイベントを実施することにより、従業員満足度のスコアを3年間で3.5から4.5に向上させる

同じく、目標管理の手法に「KPI」がありますが、KPI(重要業績評価指標:Key Performance Indicator)とは、プロジェクト単位の目標を達成するために各プロセスを細分化して設定する目標です。MBOが個人や組織の視点が重視されるのに対し、KPIはプロジェクトの目標を達成する点が異なります。

MBOが注目される背景

MBOが注目を集めて普及した背景には、1990年代のバブル崩壊後の経済状況があります。経済が急速に悪化するなか、多くの企業が人件費削減に迫られました。

従来の年功序列制度では、勤続年数が昇進や昇給の主要な基準とされ、個人の能力や成果が評価に反映されにくいものでした。そのため、組織全体の生産性やモチベーションの低下を招いていたのです。そこで、従業員一人ひとりを適切に評価するための考え方として、成果主義が急速に普及しました。

成果主義の導入により、従来の年功序列に基づく評価システムが効果を失い、MBOが企業の人材育成や組織運用の主要な手法として活用されはじめました。従業員の成果が評価につながるようになったことから、自主性ややる気、責任感の向上に貢献し、経営目標の達成や持続的な競争力の維持に活かせるようになったのです。

MBOと従来の目標管理制度の違い

従来の目標管理制度は、主に上司が目標を設定し、その達成度に基づいて部下を評価する形式です。これに対し、MBO(目標による管理)は、トップダウン型で設定される従来の目標管理制度とどう異なるのか、比較しながら見ていきましょう。

目標設定の主体

「誰が目標を設定するのか?」という主体の観点で見ると、MBOと従来の目標管理制度とでは大きな違いがあります。

MBOの場合は、目標を設定する主体が従業員自身です。経営理念やチームの目標を踏まえたうえで、一人ひとりがどのように目標を達成するかのプロセスを描きます。目標到達までを管理することで、やりがいやモチベーションの向上、自己成長を感じるきっかけにできるでしょう。

一方、従来の目標管理制度では、従業員個人の目標が企業の目標そのままだったり上司のトップダウンで目標が指示されたりすることがあります。本意でない目標を設定されてしまうと、従業員のやる気を大きく損ねる要因になることも少なくありません。

評価方法

成果主義で人事評価を行う場合、目標の達成度合いが報酬や昇給と関連づく傾向があります。そのため従業員の目標を適切に評価することは非常に重要です。

MBOでは、「年度末までに見込み顧客リストを10%増やす」のように数値を盛り込むなどして、目標を具体的に設定しています。達成指標が客観的にわかるため、公平で納得感のある評価につなげられます。

一方、従来の目標管理制度の場合、目標達成度に加えて勤務態度や上司からみた従業員の印象など、能力や成果についても評価されることがあります。定性的な評価が多く含まれると、評価の理由がわからないことがあるのです。

フォローアップ体制

MBOでは、上司と部下が定期的に面談を行って、目標に対する進捗を確認するプロセスが重視されています。進捗の確認は3か月など比較的短期に行われる傾向があります。そのため、市場の変化や担当者の進捗、業務の難易度に応じて計画を柔軟に調整できる点が特徴です。

一方、従来の人事評価制度の場合、従業員の行動や能力に焦点を当てることが一般的です。業務上の課題をフォローするための活用ではなく、目標に対する評価も年一回に限られていることが一般的です。また、一度設定した目標は基本的に変更しません。

このように、MBOは単なる評価の場ではなく、従業員が抱える問題をフォローする場としても活用されているのです。

こちらの記事もおすすめ:離職防止の対策を厳選してご紹介

MBO実施のステップ

ここでは、MBO実施の基本的なステップを紹介します。MBOを実施する際は、従業員一人ひとりの目標達成に向けてやりがいやモチベーションを引き出すことが大切です。組織全体の目標達成と成長促進を目指して、適宜調整を行いマネジメントに落とし込んでいきましょう。

  1. 目標設定
  2. 達成までの計画・プロセスを策定
  3. 実行・フォローアップ
  4. 評価

1. 目標設定

MBOでは、以下のような段階を踏んで目標を設定します。

  • 組織全体の目標を明確にする
  • 各部門・個人の目標を設定する
  • SMARTな目標を設定する

組織全体の目標には、計画や市場シェア、企業やプロジェクトの目標などが含まれます。各部門や個人が目標を設定する際は、まず組織全体の目標や目標が設定された意図を把握したうえで検討しましょう。

MBOでは、目標を設定し実行することで従業員のモチベーション向上を図ります。そのため、企業や組織から押し付けるのではなく、一人ひとりが自らの考えとして目標を設定することが重要です。

組織目標の達成のために「どのような役割を担うべきか」「今何ができるか」「どのような能力を伸ばすべきか」などの視点で目標を作成しましょう。

また、設定した目標は現場で共有し、上司や従業員が目標の内容や難易度を客観的に評価できるようにすることも重要です。簡単すぎる目標や実現できそうもない目標は見直す必要があります。

SMARTな目標とは

MBOでは都度設定した目標を評価します。そのため、MBOの目標は、誰が見ても明確で客観的に見直しや評価ができるように決めることが重要です。「SMART」の形式を満たした目標を立てると、目標の明確化や進捗管理、成果の評価がしやすくなります。

  • Specific(具体的):誰が読んでもわかる明確な表現
  • Measurable(測定可能):本人も上司も目標の達成度合いが判断できる
  • Achievable(達成可能):将来的な方向性や希望・願望ではなく、今実際に実現が可能
  • Relevant(関連性がある):自分の職位や職務、責任範囲、部署の目標、会社の目標との関連がある
  • Time-bound(期限がある):いつまでに実施するかを明示

2. 達成までの計画・プロセスを策定

目標の達成に向けて、より詳細で具体的な行動計画を作成します。「いつまでに何をどの程度達成する」という内容で作成し、達成期日から逆算して日々の業務内容を計画します。行動計画を立てる際は、スケジュール・目標に到達するために必要となる資源・責任者などを明確化します。

個人目標における「資源」とはスキルや知識などであり、責任者は自分自身です。もし自分だけでの達成が難しい場合には、外部のサポートが得られるかを検討しましょう。

次に、目標達成までの具体的なアクションプランを作成します。それぞれのアクションに対して、いつ何をするかを具体的に落とし込むことで、進捗確認がしやすくなるメリットがあります。業務は思うようには進まないこともあるため、スケジュールはある程度柔軟性を持たせることがポイントです。

3. 実行・フォローアップ

2で構築した行動計画に基づいて実際に業務を行います。ここで大切なのは「見直し」です。目標管理シートを定期的に確認して進捗確認を行い、作成した計画が現状のままで問題ないかを確認しましょう。もし進捗が遅れていたり、思ったよりも業務の難易度が高くなってしまったりする場合には、早めに計画を修正しなければなりません。

そのため、計画の作成時だけに限らず、実行時点でも定期的に上司とコミュニケーションをとることが重要です。上司は、従業員の業務に問題ないかを確認し、必要に応じて支援やアドバイスを行います。

このやりとりにより、目標に対するモチベーションの維持に役立ちます。また、従業員が効率よく目標を達成できれば、組織全体としての効率向上とスムーズな目標達成が図れて生産性の向上にもつながります。

4. 評価

MBOでは、目標達成度に基づく評価とその後のフィードバックがとても重要です。従業員が自分への評価に納得することで、その後の成長を促す効果が期待できます。

評価では、上司と部下が目標達成に至るまでのプロセスと結果を客観的かつ公平に共有して認識合わせを行います。例えば、フィードバックは以下のような観点で行います。

  • 目標達成または未達成となった理由
  • 今後期待している役割を踏まえて改善すべき点
  • 数値化しにくい部分の評価

目標が具体的に設定されていれば、より評価の精度を高めることができます。ただし、評価のプロセスでは、単なる成果だけではなく目標に至る過程も重視されます。

今後期待する目標を設定したり、事実に基づく前向きなアドバイスや激励を行ったりすることで、従業員はフィードバックを次期の目標設定に活かすことができます。また、社員の成長やモチベーションの向上にも役立ちます。

MBOを導入するメリット

MBOは成果主義の導入を背景にさまざまな企業で導入されています。MBOの導入は社員にとって自己管理がしやすく、目標達成によるモチベーションの向上など社員目線でのメリットがあります。さらに会社側からみても複数のメリットがあるのです。ここでは、MBOの導入による社員と組織、それぞれの立場におけるメリットについて解説します。

社員のモチベーションアップにつながる

トップダウンでノルマを課せられるのではなく、自身が主体的に目標を掲げ実行につなげていくため、高いモチベーションを保ったまま業務を遂行できるようになります。

社員に主体性が身に付く

マネジメント側から目標やノルマを課せられるやり方は、モチベーションアップにはならないまでも、課せられたことをこなしていれば、ある程度の評価を受けることも可能です。しかし、与えられたものをこなしていくだけでは社員はなかなか成長せず、結果として企業の継続的な成長も困難になりかねません。これに対し、MBOでは社員が自ら考え、行動することで目標の設定・実行を行っていくため、成長スピードが速まり、それが企業の成長にも大きな効果を発揮します。

企業内のコミュニケーションが活性化

MBOでは、社員の目標設定に関して、マネジメント側と密なコミュニケーションが欠かせません。これは、単純にトップダウンで目標を課すだけのコミュニケーションとは異なり、双方が意見を出し合って進めるコミュニケーションです。そのため、活発な意見交換がなされるようになり、結果として企業全体のコミュニケーション活性化につながります。また、社員も単に個人目標を設定するのではなく、企業の目標を達成させるためにはどうすべきかを真剣に考えるようになり、新たなアイデアが創出される可能性も高まります。

MBOを導入するデメリット

MBOを新たに導入した場合、ここまで紹介したとおり長期的な目線でみると社員のモチベーション向上や企業目標の早期達成といったメリットが期待できます。しかし、MBOを運用する際には一定のリソースが必要となるため、デメリットになる場合があります。

コミュニケーションコストがかかる

これまでの人事制度に比べ、マネジメント側は個々の社員とコミュニケーションを密に取る必要があるため、コミュニケーションコストが増大。自身の時間管理をうまく行わないと業務に影響をきたします。

トップダウンではなくなるため目標設定に時間がかかる

トップダウン型のマネジメントは、社員それぞれのモチベーションアップにはつながらないかもしれません。しかし、最も効率的で時間のかからないマネジメントだとも言えるでしょう。これに対しMBOは社員とコミュニケーションを密にしたうえで目標設定をするため、形になるまでに時間を要します。

個人目標と企業目標の調整が難しい

マネジメント側は、社員が目標設定を行うことをサポートしながらも、それが企業目標とかけ離れたものにならないように落とし込まなければなりません。しかし、あくまでも社員の主体性を尊重しなくてはならないため、調整が非常に困難です。

MBO運用時の課題を解決する施策

社員の主体性を重んじることで早期の成長を促し、企業の成長へとつなげていくMBO。これを実現させるには、前項で挙げた運用時のデメリットを解消する必要があります。そこで、マネジメント側が行うべき、課題解決の施策を紹介します。

社員の状況に応じて柔軟に目標設定を見直す

MBOは社員によって目標設定が異なるうえ、それぞれの状況により目標達成の進捗度合に差が生じることも少なくありません。そのような状況下でマネジメント側が無理やり目標を達成させようとすると、トップダウンでノルマを課す従来の方式と変わらず、社員の主体性も育成されなくなってしまいます。そこで、都度、話し合いの機会を持ち、進捗の確認や目標設定の見直しを行うなど柔軟に対応することが重要です。

目標への進捗状況を個別に把握し、適切なタイミングで声掛けを行う

MBO運用を成功させるには、マネジメント側の適切なタイミングでのコミュニケーションが欠かせません。そのためには、それぞれの社員の目標設定ならびに進捗状況を常に把握しておく必要があります。そこで、進捗が遅れている社員に対し、声掛けしたうえで必要なサポートをすることで、トラブルのリスクが軽減されます。

定期的なミーティングにより、全体で目標に向かうモチベーションをアップさせる

自身が主体性を持って仕事を進められることはモチベーションアップにつながりますが、反面、うまくいかないときはモチベーションだけではなく、仕事に対する自信も失ってしまう可能性があります。これを避けるためには、チームや部署での定期的なミーティングを行い、全体で目標に向かうことを意識させ、チームの一員としての存在価値や安心感を持たせることが重要です。

評価者となる上司の教育も実施しよう

MBOを実施する際は、評価者となる上司に対するマネジメント教育も欠かせません。MBOにおける評価では、単なる役職や査定の上下を伝える人事評価ではなく、目標設定や成果評価に焦点を当て、目標達成に向けて従業員をサポートすることが求められます。

MBOの目標は、社員の自主性を尊重することが重要です。上司がMBOの目的を正しく理解していなければ、目標を押し付けてしまうかもしれません。また、評価においても単なる目標達成度ではなくそのプロセスも重視すべき内容です。

評価者は、各社員のやる気とモチベーションを引き出すことも大切です。次の目標に向かって努力を続けるようサポートすることで、従業員は役職に必要なスキルを向上させ、生産性を高めるために積極的に行動できるようになるでしょう。例えば、従業員の構築した目標達成までの難易度が高すぎる場合には、評価者が社員の能力に見合うスモールステップを提案することも求められます。

人事制度の構築や社員教育など、あらゆる人事課題の解決を支援します

MBOを導入して従業員に適切な評価を行うと、一人ひとりのモチベーションを引き出して、企業の生産性を高める効果が期待できます。

しかし導入当初の時点では、目標の立て方や評価の方法など不明な点も少なくありません。手探りで新たな目標管理制度を導入すると、担当者に業務の負荷がかかる一方、制度がうまく機能しなくなる可能性もあるでしょう。そして企業によっては、目標管理を導入する前に解決すべき課題があるかもしれません。

企業により異なる人事課題を解決に導くには、人事制度の構築や社員教育に豊富な知識と経験をもつプロ人材の活用がおすすめです。JOB HUB顧問コンサルティングでは、あらゆる人事課題を解決に導くその分野の顧問をご紹介いたします。大手上場企業役員や現役のCxOなど幅広い人材の登録があり、製造、IT、小売、サービスと業界を問わず対応しています。

お申し込みから最短2週間で稼働が可能。実際の経験に基づいたノウハウを活かして人事課題をスピーディーに解決したい企業様はぜひ一度ご相談ください。

JOB HUB顧問コンサルティングについて詳しくはこちら

キーワード検索

カテゴリー

人気の記事

キーワードから探す

関連するコラム

CONTACT

各種ご相談・お問い合わせは下記よりお願いいたします。