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権限の委譲は組織へのメリットが豊富!目的やリスクを正しく理解して導入しよう

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権限の委譲とは、上司が部下に業務の一部を委ねることで、個人の力を最大限に引き出すマネジメント手法のことです。

また、権限の委譲は、エンパワーメント(empowerment:力をつける、自信を与える)とも呼ばれます。適切な権限の委譲は、迅速な意思決定を促進し、組織全体の生産性を高めるために役立ちます。

権限の委譲で重要な点は、部下に権限を委譲しても最終的な責任は上司にあることです。最終的な責任が上司にある状況で部下が権限をもって仕事をすることにより、部下の自律的な行動を促し、組織全体のパフォーマンス向上や業務効率の改善が期待できるのです。

この記事では、権限の委譲を行う手順やメリット・デメリット、権限委譲を効果的に導入するためのポイントを解説します。

権限委譲の目的や必要とされる背景

権限委譲は、部下の能力を引き出し、組織の成長と発展に寄与するために必要不可欠な戦略です。

  • 部下の成長促進
  • 組織の活性化
  • 上司の負担軽減

現代は労働力人口が減少しているため、企業は限られた人材でより多くの成果を上げることが求められています。そのため部下の成長促進が重要視されています。権限委譲により、部下は実務を通じてスキルを磨き、自己成長を遂げることができます。

また、権限の委譲は組織の活性化にも繋がります。現場に近い部下が迅速に判断して行動できるようになることで、意思決定の迅速化が図れます。これにより、組織全体の効率が向上し、業務のスピードアップが期待できます。

さらに、権限の委譲は上司の負担軽減にも寄与します。上司がすべての判断を行うのではなく、部下に権限を委譲することで、上司は戦略的な業務に集中できるようになります。これにより、組織全体のパフォーマンスが向上し、企業全体の成長を促進する効果が期待できるのです。

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権限委譲を行う一般的なプロセス

部下に権限を与え仕事を任せるには、以下のような段階を踏むのがおすすめです。

1、具体的な目標を設定

部下の成長や組織の活性化を念頭に置き、明確で測定可能な目標を定めます。

2、権限範囲の明確化

部下が意思決定できる範囲、情報収集できる範囲、リソースを活用できる範囲など、権限の範囲を明確にすると、部下が自律的に業務を遂行できます。

3、必要な知識・スキルの伝授

OJTや、研修、メンタリングなどを活用して、知識やスキルを伝えます。これにより、部下は業務を正確に遂行して、組織に貢献できるようになります。

4、権限委譲の合意

「○○については任せる」と上司と部下の双方が納得したうえで合意形成することで、部下は自信を持って業務に取り組め、上司も安心して任せることができます。

5、定期的なコミュニケーションとフォローアップ

権限委譲後は、部下が仕事を順調に進められるように、適宜アドバイスやサポートを行い、部下が直面する問題を迅速に解決することを支援して、業務の円滑な進行を促します。

6、成果の評価とフィードバック

部下の成長を促すためには、成果に加えてプロセスの評価も重要です。業務の過程や結果に具体的なフィードバックを行い、改善点や成功点を共有します。これにより、部下のモチベーション維持と継続的な成長を支援します。

権限委譲のメリット

権限の委譲は、組織全体のパフォーマンス向上と成長を支える重要な手段です。部下に仕事を任せるべきか迷っている際は、権限委譲を行うべきかを検討するために、そのメリットを確認しましょう。メリットを理解することで、適切な人材を見極めやすくなります。

部下の成長が促進

権限の委譲では、部下は上司からのサポートを受けつつも、自身で意思決定を行い、業務を遂行します。これにより責任感や主体的な行動が促進されるのです。自分で目標を設定し、関係者を巻き込んで達成に向かって動くことは、責任感の醸成に大きく役立ちます。また、自己裁量で仕事ができるとやりがいや達成感を得やすくなり、モチベーションアップにも効果的です。

権限の委譲で重要なポイントは、業務に問題が発生したり結果が期待どおりではなかったりしても、その責任は上司が負うということです。部下は「会社に損失を与えた場合、責任をとらされるのではないか?」という不安を感じることなく、失敗を恐れずに挑戦できるのです。

なお、どのような結果であったとしても、何が上手くいって何が上手くいかなかったのかを振り返ること自体が部下自身の成長に繋がります。

次世代のリーダーを育成

部下は上司が担う役割を経験することで、マネジメントスキルを習得します。リーダーには「協力をあおいでチームを編成し、メンバーをまとめる」「目標達成に向けて先導する」などの役割行動が求められます。リーダーの視点が持てるようになると、単に上司の指示を待つだけではなく、自ら考えて意思決定する力が養われます。結果として、リーダーシップが育まれ、次世代のリーダーが育成できるのです。

また、上司側のメリットとして、権限の委譲を行うことで、その部下の潜在的なマネジメント適性がわかります。部下のスキルや知識、経験、業務の進め方、成果、直面する課題などの観察を行い、そこから、部下の強みや弱み、次世代のリーダーとして必要となる必要な支援、調整などを分析して、部下の成長を促すための支援や調整を見極めることができます。

迅速な意思決定による顧客満足度の向上

業務に報連相(報告・連絡・相談)は必須ではあるものの、上司の判断を重視しすぎると重要な意思決定が遅れることがあります。

例えば、接客業で今目の前にいるお客さまに柔軟な対応を行うためには、権限の委譲で部下の裁量が大きいほど意思決定のスピードがあがります。判断に承認が必要だからといって顧客を待たせてしまうと、クレームや機会損失に繋がる可能性があります。そのため、業績や顧客満足度の向上を図るためには権限の委譲が有効です。

また、技術の進化や消費者のニーズの変化が激しい業種では、意思決定の遅れが致命傷になることがあります。部下が選定した新しいツールを導入して業務が効率化できれば、組織全体の効率が向上し、組織全体の競争力が高くなるかもしれません。権限委譲を進めることで、迅速な対応が可能となり、顧客満足度の向上が期待できます。

モチベーションの向上による離職率の低下

権限委譲を行うと、「やらされている仕事」が「自らが行う仕事」に変わります。能力を引き出して自信を与えることはエンパワーメントの概念そのものであり、部下は自分で計画を立てて行動することで仕事へのモチベーションが高まります。

「上司から信頼されて権限を与えられた」という事実があると、部下は自尊心が高まり働きがいを感じます。自分の役割が組織にとって重要であると実感できるため、仕事に対する責任感も強まります。自らが工夫して仕事に取り組んだ結果、新たな能力が開発されることもあるでしょう。

ある業務を任されることで、部下は自己の成長を実感し、達成感を得やすくなります。モチベーションを高く保つことで仕事の満足度や組織に対するエンゲージメントが高まり、結果として離職率の低下や組織の安定化に繋がるのです。

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経営層や管理職がマネジメントに集中できる

権限委譲により、上司は本来の業務に集中しやすくなります。上司には、組織の方向性を決定したうえで戦略立案やチームのマネジメント、業務の進捗管理などを行う役割があります。部下に業務を任せれば細かな業務に意思決定を行う必要がなくなります。その結果、チームづくりや業務の進捗管理など経営や組織運営に専念できるようになるのです。

ただし、部下の育成も上司の重要な業務です。「言わなくとも分かるだろう」「任せると言っておけば、リーダーが代わりに指導してくれるだろう」と部下の育成を他人任せにするのは厳禁です。また「自分と同じようにアウトプットをしてほしい」と、部下に自分のやり方を押し付けるのも避けましょう。

上司は、部下が自ら考えたやり方で業務に取り組むことを見守り、適切なフィードバックを行うことが求められます。

権限委譲のデメリット

権限の委譲は適切に行うことでさまざまなメリットが得られますが、やみくもに権限を委譲すると人材育成や組織、顧客に対して想定外の問題を引き起こすかもしれません。ここでは、人材を育てて企業の事業継続性を高めるために、権限委譲のデメリットも押さえておきましょう。

一時的な業務スピードの低下

部下が新たに権限を委譲された場合、部下は経験が不足しているため新しい責任や業務に慣れるまでに時間がかかります。また、業務プロセスの細部や組織の内外の関係者との連携方法を理解するのにも時間がかかります。

権限の委譲において、部下の経験量と業務効率には指数曲線的な関係があります。最初は新しい業務に慣れるまで時間がかかり効率が低いですが、練習や経験を積むことで徐々に業務遂行が速くなり効率が向上するのです。このプロセスを通じて、部下は自信を持ち、スキルを磨いていきます。

そのため、上司は一時的に業務効率や生産性が下がることを考慮して、スケジュールをいつもより長めに予定しておくなどのサポートが重要です。

失敗するリスクを抱える

権限を委譲した業務に対して部下の能力が不足していると、意思決定の判断を誤り失敗することがあります。判断が部分的に最適化されただけでは課題の解決になりません。

部下が失敗を恐れて安全な選択をすると生産性や業務効率が下がり、組織全体のイノベーションや成長を阻害する要因になってしまいます。

そのため、上司は適切なサポートやトレーニングを行い、部下が各業務を判断するために必要となる材料や基準をあらかじめ十分に伝える必要があります。

また、上司と部下で権限を委譲する目的ややり方が一致しない場合、人材育成のために任せているにもかかわらず、部下は「押し付けられた」と認識して組織に不満を抱えてしまうかもしれません。

権限委譲を効果的に導入するポイント

権限委譲を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 権限委譲の目的や意図を部下と共有する
  • 部下の能力や経験に合わせて権限委譲の範囲を調整
  • 関係者とコミュニケーションを取りながら適切なサポートを行う
  • 経験豊富な外部人材を活用する

権限委譲の目的や意図を部下と共有する

権限委譲の主な目的は、自律的な行動を促して部下の成長を後押しするとともに、組織全体の生産性を高めることです。事前に目的を説明して理解してもらうことで「仕事を丸投げされた」「責任を押し付けられた」という誤解を避け、部下のモチベーション低下が防げます。

権限委譲の際には、企業のミッションや意思決定の基準、部署の目標を共有し、統一させることが大切です。「何かあったときの責任は上司にあるから思い切りやってほしい」と伝えることで、部下は安心して業務に取り組むことができます。また、権限の範囲を越えた意思決定が必要な場合には、必ず上司に相談するよう徹底します。

さらに、権限委譲は上司と部下だけでなく、組織全体で共有されるべきです。指揮命令系統のルールを周知し、変更があれば随時共有することが重要です。これにより、関係各所との協働や連携が円滑に進み、権限委譲の効果を最大限に引き出すことができます。

部下の能力や経験に合わせて権限委譲の範囲を調整

経験や能力が不足している部下に過度な権限を委譲すると、誤った意思決定や業務の失敗のリスクが高まります。一方で、部下の能力や経験を尊重し、それに見合った権限を委譲することで、上司と部下の信頼関係が強化されます。部下は自分の能力が認められていると感じ、上司に対する信頼が深まります。

そのため、権限の委譲を行う際は、社員の能力に合ったスモールステップで目標を設定します。これにより向かうべき方向性が明確になり、課題や解決策も見えやすくなります。また、権限を委譲する範囲を明確にすることも大切です。部下が自分に与えられた権限や判断の基準を理解することで、仕事に取り組みやすくなります。

「すべて自由にやってよい」と業務を丸投げするのは禁物です。権限を委譲した最初のうちは問題が発生するリスクがあります。失敗の損失が大きく会社にダメージを与えることもあります。社員の能力や状況を考慮し、権限を委譲した仕事の位置づけを部下に説明し、会社のビジョンや目的を共有することが重要です。

関係者とコミュニケーションを取りながら適切なサポートを行う

権限委譲は、業務の丸投げではありません。上司も部下もそれぞれの信頼関係のなかで、お互いに「任せた」「任された」という納得感が重要です。もし部下の行動に干渉しすぎれば「結局は信用されていなかった」と部下の不満が溜まります。

そのため、部下とは適度なコミュニケーションが重要です。上司は部下に報連相を求めるだけでなく、話しやすい雰囲気づくりに努めるほか、業務に必要な経営資源のサポートや直面する課題の解決方法の提示、部下の良いところを積極的に認めることなど、地道なコミュニケーションをとおして信頼関係を強化することが大切です。

最初からすべての業務が上手くいくケースはあまり多くはありません。多少部下の要領が悪くても見守る気持ちが大切です。また、ミスが起きた場合でも、叱責ではなく具体的な改善案や考え方を提案するなど、建設的で前向きなアドバイスをすることで部下の成長を促すことができます。

また、部下が仕事を進めやすいように、関係者に事情を伝え、必要であればサポートを依頼する根回しが必要なこともあります。

経験豊富な外部人材を活用する

権限の委譲をとおして組織全体の生産性の向上を図り、持続的な成長につなげるためには、外部人材の活用がおすすめです。

経験豊富な外部人材の支援を受けた場合、権限の委譲を試行錯誤ではなく的確なアドバイスやフィードバックをもとに進めることができます。また、外部の人材は組織内における人間関係や事業の進め方に関する先入観がないため、既存のリソースを最大限に活かした権限委譲の体制が確立でき、業務が失敗するリスクの軽減が図れます。

特に、人材育成を担う社内リソースが不足している場合や、権限委譲のプロセスを初めて導入する際には、外部顧問の支援がおすすめです。専門家の知識や経験を活用することで、組織全体のパフォーマンス向上に直接寄与する権限委譲が目指せます。また、最新の業界動向やベストプラクティスが入手できるため、自社に新しい視点や知識をもたらすことも可能です。迅速かつ効果的に目標を達成したい場合は外部人材の活用を検討するのも一案です。

権限委譲を効果的に導入できれば、組織の活性化に繋がります

部下に権限の委譲を行う目的は、部下の成長促進や組織の活性化、上司の負担軽減などさまざまです。次世代のリーダーとしての人材育成が行えるだけではなく、意思決定が素早くなることで顧客満足度が高まったり、社員のエンゲージメントを高めて離職率低下を図ったりする効果が期待できます。

しかし、実際に権限の委譲を行う場合には、部下との目標の共有や個人の能力や経験にあわせたスモールステップの設定、進捗確認など適切なサポートが欠かせません。また、権限を委譲することで失敗のリスクや一時的な業務スピードの低下を考慮しなければなりません。

人材育成や業務効率化など組織の課題を効果的に解決したい場合には、経験豊富なプロ人材が多数在籍している、「JOB HUB顧問コンサルティング」の活用がおすすめです。業界や組織、企業の規模を問わず、最短2週間でご希望に応じた支援内容、頻度、役割で支援が開始できます。

権限の委譲で組織の活性化を図りたい場合には、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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